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第六十三話 黒猫な十五歳

ラウールとサクラはダンジョンの前に立っていた。そこは、討伐依頼を受けることが出来る冒険者となり、初心者ダンジョンをクリアした者が挑むダンジョン。


その名も【ゴブリンの森】。ダンジョン内は森で構成されており、罠がない。そして出現する魔物は、ゴブリンのみである。しかしランクの低い冒険者は、ゴブリンにも苦戦するものだ。ラウールが異常に強いだけで、一般人では倒せないのが魔物である。



「サクラ、ここは広さこそ初心者のダンジョンと同じ広さみたいだけど、出現する魔物がゴブリン系統みたいだ。ゴブリンは僕達にとって敵ではないと思うけど、油断せずに行こう。」



「そうね。どの程度の強さかわからないけど、痛いのは嫌よ。」



油断しないよう話し合い、ダンジョンに入った。



~~~~~



【ゴブリンの森】





を攻略した……。


ボスがホブゴブリンだった……。


いくらランクの低いダンジョンでも簡単すぎはしないか…………。



だが攻略してしまったものはしょうがないので、今回のダンジョンも終了だ。



~~~~~



その後はクライスの街にあるダンジョンを、攻略難易度が低い順に攻略した。


そしてある程度月日が流れた頃、ラウールは十五歳になった。



名前:ラウール 


職業:冒険者


LV:72


HP:890


MP:2320


体:777


心:2145


運:91


ユニークスキル:すくすく育つ・看る


スキル:解析・学習・アイテムボックスX・忍びの技・魔法(全)・戦闘(全)・解体・自然回復(全)・状態回復(全)・座標把握・マーキング・イメージ定着


加護:才能の神の加護


称号:地球人・心は中年・才能の神が見てる人・両親への信頼・両親からの信愛・ジェノサイド・乗り越えた者・逃亡者・ダンジョンに挑むもの・漆黒の翼



*運以外は100が25歳の平均値




ラウールは十五歳になった。転移魔法も少し努力し、行った事がある場所には移動できるようになっていた。転移を覚えてから行った事がある場所に限るが。


そして、サクラも、マーキングしたところに飛べる転移を覚えることが出来た。どんどんチートな能力になってきた二人だが、出来る限りは目立つ行動は控えていた。



次はパーティー名を決める為、二人で話し合うのだった。



~~~~~



「そろそろラウールさん、サクラさんって言いうのがめんどくさいって受付さんに言われてるんだけど、どうするラウール?」



「めんどくさいって……。他の冒険者よりは気安くていいけど。どうしよう、パーティー名って何か言い案がある?漆黒で始まる言葉ではない名前で!」



・・・・・



「私たちに共通する物とか、前世のものとか?これからメンバーが増えた時のことを考える……?」



「それなんだよね、これといって何を目指すか決めてないし、どうしたらいいかな?」




・・・・




サクラは少し考える。そして、時間がかかったが話し出した。



「ラウールは旅をするんだよね?私たちはチートよね?そして最強でないよね?そこから何か浮かばないかな……。」



「ん~、最強ではない……普通。チート……ずるい? 旅……自由。日本……ジャパン。サチタジ?」



「サチタジって何?」



「頭文字をとっただけ『却下!』」



「やっぱりか~。なかなか出てこないよ。」



二人は必死に考えた。考えても考えても何とかの何っていう名前は、すさまじい名前しか出てこない。なにか無難なものを……。



時間が流れ、なぜ名前を決めないといけないのかイライラしてきている。二人はめんどくさがりやだった。



・・・・・・



「……『の』はなくていいんだよね?パーティーってわかればいいんだよね……。『の』を間に入れなけれが何かない……。ラウールは漆黒の翼……、これはからかってるんでなく、ラウールの二つ名……イメージね。だったら私たちのイメージは何?あ~あの人達ねって言われるイメージは?」



「ん~黒い髪?」



「そうね、黒が出て来るね。あとは?」



「若い?」



「けど年も取るし……。」



「ん~と好きな動物は……前世で……?」



「猫!!」



「僕も猫なんだ。」



「「黒猫!!」」



「もしかして、もしかしてだけど……、そのままでいいんじゃない?黒猫。」



パーティー名が【黒猫】に決まった瞬間だった。



さっそく冒険者ギルドに登録した。


受付さんはおそらく他に、【黒猫】と言う冒険者パーティーはいないと思うと返事をした。


この世界で猫はペットではない。ただ、猫は動物と認知はされている。特に猫耳っていうくらいだから、猫はいる。あえて【猫】と名乗る者がいないんだろう。



僕達はパーティー名の【黒猫】のように、気ままに過ごして行こう。


僕の人生は僕だけのものだから。


~~~~~


パーティー名も【黒猫】に決まったラウール達だった。

それで、何か記念に記憶に残ることをしようと、ダンジョン内で魔物の素材を手に入れる依頼を受けた。

そして、それだけでは普段と変わらないと、ある行動に出た。



後に2人は後悔するのだが……。



【コボルトの森】


名前の通り、コボルト系の魔物と、植物型や虫型の魔物が出るダンジョン。三十階層であり、一度は攻略はされている。



そこにラウール達は挑戦することにし、すでに二十四階層まで来ている。



「あの時のノリが恥ずかしい……。」



「そうねラウール……。どうしてこんな格好で来ちゃったのかしら……。」



「それでもここまで来たら、着替えるのもどうかと……。」



「やり切りましょうね……。」



二人は途中までは、時々会う冒険者に手を振る余裕があった。


しかし、この階層までくると、なかなか強い冒険者もおり、白い目を向けられるようになった。


確かに馬鹿げた格好であった。だがラウール達の実力ではそれでも簡単に進めており、二十四階層に来るまでは二人ともノリノリで、「「にゃ~!」」と叫びながら魔物を殲滅していた。



今も「「にゃにゃにゃ!!」」と言いながら目の前に倒れている人を、攻撃し終わったところだった。



~~~~~



少し前に時間は遡る。


周囲に気配があり気づいていたが、五人の男が近づいてきた。

ただの冒険者との出会いだと思っていたが、いきなり五人が武器を構えだした。



「おいお前たち!!持っている物をすべて出せ!なにも持っていないところを見ると、魔道具で荷物を運んでいるんだろ?そして全ての物を出したら、魔道具もそこに置け!!」


と剣を構えたごつい男。



「そうだぜ……おとなしくしたら……少しは優しくしてくれるかもよ……。こいつも……。」


そう言う小柄でナイフを持った男。



「そうよ~、私はあなたの体でもいいのよ~。」


とマッチョな男が顔を手で覆う。



「………………。」


無言で杖を構えている男。



「その黒いコートも脱いで置いて行け。俺達が貰ってやるよ。……服も脱いで裸になるんだな。せっかくの服が汚れるからな。」


小さな斧を肩に担ぐスキンヘッド。



ダンジョンで人に絡まれてしまった……。



「俺達は強さなら、Cランクくらいはあるんだからな!!おとなしく全て置いて行け!!」



「そうだぜ!俺たちは強い後ろ盾もあるから、外で何を話しても……俺たちが捕まることはないぜ!!」



「「おい!」」



「それは言っちゃダメだろ……。」



「あっ!! すいやせん……。」



急に三下みたいになった……。



「これを聞かれちゃ~、口を封じさせえてもらわなきゃならね~な。死んでくれ!!」



そうスキンヘッドが叫び、男たちが一斉に飛びかかって来た。



「なんか急に話が進んだけど、これまでの調子で行くニャン!ラウール。」



「そうだニャン!やられはせんぞ!!にゃん!」



そう言って二人は指先に魔力を伸ばし、猫の爪のような状態にした。



飛びかかって来た男の剣をラウールが引っ掻く!!


スパン!!  剣が切れた。


サクラも引っ掻いた


スパン!! 斧が切れた。


勢いのまま隣の男の杖も切り裂いた。

そしてナイフ使いには、ナイフでなく手首に魔力の爪を当て、切り落とした。



「ぎゃ~! 俺の手が~!!」



そして、マッチョが自分の肉体を武器にとびかかり、飛び蹴りを放ってきたところで、ラウールが足を引っ掻いた。



「私の足が~~!!」



そしてラウールとサクラが一歩下がり、四つん這いになる。


「「ふーー!! しゃー!!」」と叫び、男たちに跳躍すると………魔力の爪を使い、服を切り裂いていった。



「きゃー!!俺の服がー!!」



男達は叫んだが、お構いなしに攻撃を繰り返す。そしてラウールは最後とばかりに、


「猫にやられる男はこれだニャン!!」


そういって、三人の男の顔に、三本の爪痕を刻んだ。


サクラは、「じゃあ私はこれだニャン!!」


そう叫び、二人の男の胸に頭突きをかました。




……男達は吹っ飛んだ…………。



「「にゃにゃにゃ!!」」



「これに懲りたら、もうこんな事はするんじゃないニャン!!」


そう言ってサクラは、手首が切れた男に回復魔法を使い止血した。


「そうだニャン!!これに懲りたら僕達【黒猫】には向かってくるなニャン!!」


ラウールは足のもげた男に、回復魔法を使い止血した。



裸で満身創痍の男たちを見下ろしながら決め台詞を吐いたところで、先ほどから様子を窺っていた気配が近づいてきた。



「お前ら変な格好してるけど強いな!」


「そうだぜ、全身黒い装備をして、素手で戦っているくせに強い変態だぜ!!」


「私に真似は無理だけど、強いわね。にゃんにゃんって!!」


「女なら少しはわかるけど、男でにゃんなんて…………男だぜ!!」



そう四人の冒険者が声をかけてきた。



今までノリで進んできたラウール達。テンションが上がりすぎて、我を忘れていたラウール達。


【黒猫】だから、黒猫みたいにダンジョンを記念に制覇すれば、この先も印象に残るんではないかと考えていたラウール達。



転移やアイテムボックスを覚えて、寝不足も重なりテンションがおかしくなっていた二人は、いまさら気づいた……。


こんな事をしている冒険者はいないと……



~~~~~



それでも最後まで貫き通した。恥ずかしながらもにゃんと言いながら……。


三十階はビックコボルトだった。大きいのか小さいのかはっきりしてほしい名前だけど、爪攻撃一撃で倒せた……。


宝箱を開けると……【鉄の爪】が入っていた。某RPGで出てくるような……。



ラウール達は思った。一生この日を忘れないと。


一生この日を思い出したくないと。



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