第五十三話 各々の道へ
勢いで言ってしまった……。
僕はは一人、頭の中で考えていた。
サクラと一緒に旅をすることは良いが、サクラは身の危険を感じて、僕の言葉に流されてしまったのではないかと。
そしてクロースとクリスに相談なく旅立とうとしていることに罪悪感を感じた。二人との関係も悪くなりたくないから。
あれから宿に戻り、お互いに考えをまとめて、夕食のときに話し合おうという事になった。
僕は既に考えをまとめ、サクラとこの街を出ると考えている。あとはサクラが勢いで返事をした訳ではなく、本気で一緒に行く気持ちなのかどうか。
クロースとクリスも一緒に行くか、分かれるか?どちらかだ。
どちらにしても皆が二択だね……。
時間になり僕は宿の一階にある食堂へ向かった。
皆がお互いを気にしながらも、無言で夕食を食べ終わり、話し合いを開始した。
「あれからラウールが無言だったから、心配した。考え事をしていたんだろけど、特にサクラは不安に思っていたぞ。」
そうクロースが話し始めた。
「ごめん。色々考えていて、声も聞こえていなかったかも。不安にさせてごめんね。」
少し間を置きクリスが口を開いた。
「じゃあラウールがどうするかから聞きたいけどいい?」
僕はずっと考えていたことをまとめて伝えた。
「まずはサクラ。僕と一緒に行くことは決定でいい?」
不安な顔をしていたサクラは顔を上げた。そして目に涙を浮かべた。
「お願いしたい……。私は勢いだけでなく、冒険者ギルドで話しかけてくれて嬉しかった。ここ何日かは面倒も見てくれて……。私は今一人で頼る人もいなかったの。この前みたいに狙われることもある……。だから一人では不安もある。だからこそ……それでも一番はラウールと世界を旅してみたい。危険に巻き込むかもしれないけど……。」
そこにクロースが口を挟んだ。
「俺も一緒に行くのは賛成だ。だけど、行先によっては、俺たちは分かれることになるかもしれんよラウール。」
「そうか……。僕たちは、目的が違えば、もともと別れる予定だったしね。」
「だから行先しだいだ。俺たちはこれ以上の距離をサーシン王国から離れると、戻るのに時間がかかる。共和国のことを学んで父に伝えることが、俺の今回の使命だった。約束を違えてもいいんだが、一度はそろそろ報告に戻りたい。戻るとすれば、時間も膨大にかかるからな。」
そう言ってクロースは再度サクラを見た。
「それでサクラはどう思う?僕たち四人で行動することを優先するか?それとも二人でもいいならラウールと先に逃げたらいいよ。一生会えないわけではないからね。」
……サクラは考えているようだ。
「……私はラウールが決めたことに今回は従います。一番初めに心配してくれた人だから……。」
そう言ってラウールを見つめた。
ラウールは考えた。
ラウールは世界を巡る旅が目的だった。
予定通りであれば次はテザン皇国に向かう事になる。
しかしテザン皇国に行くとなると、サクラと二人旅になり、クロースとクリスはサーシン王国に戻る。
僕たちも一度サーシン王国に戻る選択肢もあるが、クロースとクリスの更に次の行動計画がどうなるかはわからない。伯爵であるカーシンがどう判断するかにもよるから。そうであれば今回は……。
「僕はテザン皇国に向かう。クロースは父の意向によってどうなるかわからないだろ?」
「そうだな。もし父が次はこうしろと言ったら従うと思う。」
「だったらやはりここでいったん別れよう。二度と会えないわけではないから……。そして友達だから……。」
ちょっと最後は小さい声になったが、僕は皆にしっかりと伝えておかなければいけないと思い話した。
「僕達4四人は友達だ! 困ったことがあればお互いに助け合う。また出会う!」
4人は固く握手を交わした。
「じゃあ私はラウールについてテザン皇国に行く!」
「私はクロースと一緒にサーシン王国にもどる。」
「俺は父に報告だ!」
「僕はサクラと旅をする!」
そう宣言して。
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出発日にゆっくりと話し合えないから、お互いに用事がある時は冒険者ギルドに伝える事と決めた。
ラウールはBランクであるため、Bランクの冒険者が伝言を残すことと、Bランク以上の冒険者には伝言を伝えることができる。
伝言を伝えた場所の冒険者ギルドに限るが……。それでも何もしないよりは早く連絡がつく可能性がある。
「サクラ、本当にいいの?僕と、男とに人旅になるけど。」
「いいよ。私を襲わないでしょ、そしてそんな気もないでしょまだ。仲良くならなきゃ何もしないでしょラウールは。」
「喜んでいいのか奥手と思われているのか……。ま~、信用してもらってうれしいよ。」
「……何かラウールは、私の故郷の人たちに雰囲気が似てるのよね?」
ギクッ!
「そうなんだ……。喜んでいいのかな?とりあえずこれからよろしくね。初めてのパーティーメンバーとして、三番目の友達として。」
「こちらこそよろしく!私は一番目に友達になった人として。」
お互いに挨拶をして、次の日の午前には旅の準備をし、夕方には旅立つ予定だ。
追手があるかもしれないから、できるだけ目立たず急いで。
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こういう時ほど時間の流れが早く感じ、とうとう別れの日が来た。
ラウール達は宿を出て一緒に買い物に向かう。四人で行動する時間を惜しみながら。
ラウールは調味料と主食となるパンを多く購入した。肉はアイテムボックスXに入っている物や、途中で狩りをしながら進む予定だ。魔法もあるが、不意を突かれた時のことを考え、回復アイテムも購入した。
冒険者ギルドではサクラとパーティーを組むことにしたが、今回は一旦パーティー登録を解除し、それぞれソロとなった。そしてラウールはBランクという事もあり、旅に出ることも伝えた。
冒険者ギルドを出た後は四人で昼食を摂った。今回の旅で最後の四人での食事で、みんなが思い出を語る。
特にクロースは涙を浮かべていた。そして何か困った時はサーシン王国に直ぐにでも帰って来て、自分を頼ってほしいと。行き違いになった場合はカーシンを頼ってほしいと。帰ったらすぐに父にお願いすると勢いよくクロースが話した。
食事を終えた四人は移動馬車に乗車するため、門の傍にいた。移動馬車はちょうど空いているというので、すぐに出発する事になった。
「とうとう一旦の別れだねクロース。本当は護衛依頼をすませたら、自分だけで旅をする予定だったんだ。だから思っていたより長い付き合いになったね。お陰で凄く楽しかったよ。」
「俺は初めから付き合わせようとしてたから予定通りだったけどな。悪いな付き合わせて。」
そう言って笑顔を向けてきた。
「付き合わされて良かったよ。友達にもなれたし。」
「そうだな。途中はどうでも、俺たち四人は友になった。これからもずっと……。」
クロースはまた涙を受けべてしまった。その涙を拭きながら別れを告げる。
クリスも涙を流しみんなで最後のお別れをした。
そしてとうとう出発の時間となり二人は馬車に乗り込んだ。
「じゃあなラウール。また一緒に旅に出よう。俺が自由な立場のままなら今度はずっと……。」
最後はニヤッとして手を振った。
「私はずっとクロースの護衛として生きていると思います。だから、クロースが旅に出る時は……私も一緒です!」
そう元気に声を張り上げていた。
「「「「じゃあまた!」」」」
門の前で別れを告げた。
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門の前に残された二人、僕とサクラは予定通り徒歩で出発した。
逃亡という事も頭にあった。効果が薄くとも布石を打つことにして、移動馬車と徒歩に別れて出発した。
僕達は徒歩でブレットンとの間にある町に移動し、移動馬車に乗り込む予定にしている。
そしてテザン皇国に渡るためには、ブレットンの街の南の国境に行く必要がある。
ブレットンの街からは徒歩で少し迂回をして行く予定にし、街の中には入らないつもりだ。
移動も逃げる者は急ぎがちと思ってくれたらありがたい程度に、僕たちは逆に時間をかけて移動しようと考えている。そしてもし襲われた時には……殲滅していくつもりだ。
ただ……黒いローブの人物には警戒して。僕と戦った場合の勝敗は予想できないから。
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「さあ行こうかサクラ。しばらくは本当に二人だから。お互い慣れないこともあるだろうけどよろしくね。」
「こちらこそラウール。途中でもっとラウールの事を教えてね。」
「そうだね。お互いに過去の事はわからないだろうから。警戒しながら進むけど、楽しく行こうね。せっかくの旅なんだから。」
そう言った会話をしたが出発した。お互いがどこまで話すべきか迷っていた……。




