第五十二話 サクラを追うもの
どこかで誰かが話している。
「あの村でマヨネーズを作った者の行方は分かったのか?」
「はい、首都フイエウの冒険者ギルドに現れたようです。」
「私たちが行方を追っているのを知ってもか?」
「そのようです。冒険者ギルドではテンプレテンプレ言っていたようです。」
「……。追われている自覚はあるのか?」
「どうでしょう……。」
「よし、それでは捕獲するか?」
「ちょっと問題が…。」
「なんだ?」
「Bランクの冒険者と一緒にいるようです。」
「Bランク程度なら問題ないだろう?」
「それが……。強さだけならもっと上みたいです。」
「だれの情報だ?」
「それは……我々の……敵のあいつの攻撃をかわすことができるほどと報告があります。」
「あいつとはあの黒いローブを着たあいつか?」
「そうです。我々でもあの黒ローブは単独では難しいな……。」
「どうします?」
「それでも我々の繁栄のためには捕まえなければ。」
「それでは私が行きます。雑魚を出しても難しそうなので……。」
「そうだな……。気をつけろよ。お前はまだいなくなるのは惜しい。」
「はい、生きて帰ります……。では!」
……我が陣営に来てほしいが……。
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そんな会話の事など知らないラウール達は、魔物討伐の依頼を受けていた。
ゴブリンを探し倒す。
慣れてきたところで、さすがにオークが多くいるところ……オーク討伐に精を出していた。オーク討伐の依頼をサクラは受けることが出来ない……。しかし、今回は四人でパーティーの登録をしている。ラウールにとっても初めての四人パーティー登録だ。
そしてオークを狩ること数日……。
その日は朝から良い事がなかった。運が九十もあるラウールの革靴の紐が切れるほどに……。
「サクラ。今日はオークを一人で倒してみるか?」
そうサクラに聞いてみた。
「そろそろ一人で向かってみる! 接近戦も大分上手くなったでしょ?」
サクラの元気の良い返事を聞くと、僕も笑顔になる。
「そうだね。多分だけど、オーク十匹程度なら遠距離でも殲滅出来るよ。近距離戦に持ち込んでも、時間はかかるだろうけどその剣でなら十匹なら倒せるよ。かすり傷程度ですむんじゃあないかな、チートでしょ。」
サクラも笑顔になる。
「そうよ、私はチートだから! それくらい余裕~。」
そう言って僕達は森の奥へ進んで行行った。
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しばらくすると、魔物のものではない気配を僕は感知した。
小声で仲間三人にも伝える。
「何か魔物以外がこの先にいる。意識しすぎず警戒して……。」
難しい注文をしてみた。
「「「了解……」」」
小声で帰ってきた。
頼もしい仲間だ。
先に進んで行くと人間がいた。
「こんにちは。何も言わずその娘を置いていくのだ……。」
目の前に小柄な男が立っていた、まるで忍者のような……。
「娘って誰?」
そう僕は聞いてみた。
「そこにいる黒髪の者だよ……。その者を置いていくのなら、他の者には危害は加えない。」
そう言い放った。
「僕の事?黒髪って?」
「お前は男だろう……?そっちの目立つ娘だ。」
やはりか……。サクラは狙われている。
何か繁栄をもたらす者と思われる行動をしたな。
それではないとすると何か罪を犯した?
そう考えているとサクラが話し出した。
「ラウール。私をここで置いて行って……。これ以上迷惑をかけられないから。私を連れて行きたいのよ……この男は……。」
サクラは悲しそうな顔をした。
「ねえサクラ、サクラは何かしたの?」
「私は何もしていない。何もって言うのは変だけど、マヨネーズを作った。」
「マヨネーズ?あの白いもの。街で人気だね。」
「そうなの?知らなかった。そしてポンプを見て、構造の説明をした。」
「物知りだね。僕は構造まではわからないよ。」
「そうなんでしょ?けど私はわかった。……そうやって色々と見た物の説明をしていると……、村長が、繁栄をなんちゃらて言いだした……。」
「繁栄をもたらす者?」
「そう、何故か私をどこかに連れて行こうとしたから……私は逃げた……。自由が欲しいから。私は今回は自由に生きたいの!! 縛られたくないの!!」
・・・・・・・
・・・・・
そう僕達が会話していると、男が会話に割って入ってきた。
「俺を無視するのではない……。お前は連れて行く。他のやつ……『うるさい!!』」
男が話しだしたのを遮り僕は言った。
「僕と一緒に旅をする? 楽しいことだけでないと思うけど?(転生者に決定だな。同じところで生まれた人は、見捨てたくない)」
・・・・・・
・・・・・
サクラは目に涙を浮かべているが笑顔になった。
「うん!! 一緒に行きたい。自分が感じるように生きていきたい!!」
そうサクラは叫んだ。
「じゃあ一緒に行こう!」
そう言うとラウールは忍者のような男に向かい魔法を唱えた。
魔法を唱え終わると、忍者のような男は既に穴の中に落ちていた。
急に空いた穴に男は反応できなかった。
そして僕は蓋をした・・・。
出来る限りの魔力を込めて・・・・。
二度と出てこれないような地面の棺となった。
男には残酷だが、二度と出ては来れない。
「じゃあ解決ってことで、この街を出る予定を立てよう。クロースとクリスもどうするか考えておいて。」
そうあっさりと僕が皆に話をすると、反対する人もいなかった。
僕達は街に向かい歩き出した。




