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第五十一話 サクラと回復魔法

今日の僕たちは治療院に向かっている。


冒険者ギルドで依頼を確認していると、治療院の依頼がいくつか目に留まったからだ。

いらいの内容はこんな感じだ。


【急募 回復魔法のできる方 職員が休めずに困っています。治療院の職員が疲弊して長期に離脱した場合は皆さんの健康を守ることが出来ません。】


【治療院でのお仕事です。建物を清潔にしていただくお手伝いをしてください。建物の清潔さを保つことは、怪我の治りを良くする為に必要な行動です。】


【治療している人の介助ができる方を求めています。力強さの有無は問いません。コツをお教え致します。】


【君の依頼はこれだ! 治療院での雑用 誰でもできます。一緒に頑張ろうぜ!】


色々な種類の依頼が治療院から出されている。独特な勧誘の文章だが、嫌いではないな。



この中から四人で手分けをして依頼を受けることにした。僕は実際に回復魔法での治療を手伝い、可能であればサクラに回復魔法の使える人の介助を手伝えるような依頼が受けられるように、冒険者ギルドで交渉した。


この話を聞いた受付のハールさんは、疲弊しているだろう治療院にせかされていたのか、僕達の言った無理を聞いてくれた。


治療院は冒険者が行きつけの場所になる。治療されるところが行きつけって嫌だけど、けがをしやすい商売だから仕方がない。


だからこそ冒険者ギルドも治療院からの依頼が達成されるように頑張るのだろう。


~~~~~



治療院に着き、僕たちはそれぞれの依頼内容により分けて配置された。


僕の場合はどの程度の回復効果がある魔法を使うことが出来るか見せてほしいと、一人の怪我人の前に連れて行かれた。


治療院の院長と言う小柄な男性。

白髪頭のクラードと言う人物だ。


僕の実力はこの人をどれだけ回復させることが出来るか見て、任せる範囲をクラードさんが決めるそうだ。


僕は目の前の人を看てみた。


火傷が体の広範囲にある。首元は下手に治すと治療後に引っ張られる感じになる。やけど自体は治っても、生活にやや不便さを感じることになるだろう。


だから僕は皮が引っ張られないように治るイメージをし、普段は詠唱や魔法名を言わなくとも出来る回復魔法の名前を口にした。


「回復」


すると目の前の人の火傷は巻き戻し再生を見ているように、まるで元々火傷などしていなかったかのように綺麗な状態に回復していた。



・・・・・・



クラードはその光景を見て声が出ていない。


何かを言おうとしているようだが、口をパクパクさせて何も聞こえない。



・・・・・


・・・・



「素晴らしい! 魔力はまだ残っているか? もし余裕があるのなら、我々が下手に回復魔法をかけないで様子を見ていた人たちがいるのだが。その人達も治してもらえないだろうか?」


そうクラードは僕に聞いてきた。



「魔力はほとんど減っていないですよ。魔法を唱える効率がいいのか、今まで魔力が枯渇したことがないので。」



するとクラードは息をのんだ。


「出来たら我々が治すことが出来なかったみんなの治療をお願いしたい・・・。」


そういって深く頭を下げてきた。



「頭を上げてください・・・。僕に出来る事なら協力しますから。ただ・・・、できたらこれからのことは内密にお願いしたいのですが・・・。あまり僕の魔法を知られたくないので・・・。」


そう僕は真剣にクラードにお願いをした。



・・・・・・・



クラードさんが出来る範囲で内緒にする事を条件に、手が出せなかったと言われる人達を治療してみることにした。流石に出来ないこともあるから、治らなかった場合も僕を恨まないで欲しいと伝えて。



話をした後は移動し、今僕達がいるフロアは治自分達では綺麗に治せないと思う人や、重症で手を出せなかった者達が泊る設備がある場所だった。僕はサクラを助手として連れて治療に回った。



そこには前世でも重症と思える人たちがたくさんいた。しかし今世の僕は、自分で治すことが出来る力を得た。それは前世では治療不可能な人達をも完璧に治す回復魔法があるからだ。


僕は今出せる力で精一杯治療した。どうかこの後も幸せに生きてほしいと・・・。生き辛いと思わないようになって欲しいと・・・。



昼食は一応摂り、その後も大勢の人たちに回復魔法をかけ続けた。そして夕方にはほとんどの重症者は回復した。


あるものは驚き、ある者は泣き、ある者は言葉もなく手を合わせてきた。


僕は出来るだけの事をした。



しかし僕が救える者は、手の届く範囲にいる場合だけだ・・・。


考えてしまう・・・。みんなが病や怪我を抱えながらでも幸せに生きることはできないのかと。出来るなら病も怪我も抱えることが無いように出来ないかと・・・。それは無理なこと理解していても思う・・・。



~~~~~



クラードは感動し、何度も頭を下げてきた。そして治療された人達にも内緒にするように説得すると言ってくれた。



サクラは目の前で起きた出来事に、言葉を失っていた。


軽い怪我の治療を任せてみたが、サクラは攻撃魔法ほどうまくできなかった。


僕は前世で人体を学んでいた。サクラは何が得意なのかはわからないが、治療は僕ほど上手く出来ないようだ。



しかし、効果は少なくても治療魔法をサクラは成功している。


これで1つ、死を回避する方法を手に入れたはずだ。


次は近距離に敵が来た時に反撃できる方法を考えようとラウールは考え始め、頭を切り替えていった。



ただ、これからも目の前で困っている人だけでも救おうと心に決めて・・・。



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