第四十五話 強者との出会い
俺は門番のボブルン。いつも首都フイエウの門の前で仕事をしている。
普段は見張り役と手続き役、伝令役と記録役。そして捕縛役と門番の仕事も幅広い。
もちろん俺は記録役が一番嫌いだ。
なぜ一日机に座って字を書かないといけないんだ。
そんなある日、驚くべき出会いがあった。
その日は手続き役だった。
俺は門の前でキリっと立っている。
「次の人。」
前方十人に聞こえる程度の声で、フイエウに入る人を呼ぶ。
そこに少年が来ていきなり・・・、名前を聞いてきた!
それにはびっくり。長いこと門番をしているが、こちらが聞く前に名前を聞かれるなど。
そして名前を名乗った後は・・・。
【門番情報】
その言葉が出てきた。
我々門番が持っている情報・・・。
さまざまな噂を我々門番が吟味している情報。
憲兵も・・・、ギルドも・・・、我々の代表である議員もなかなか信じてくれない情報・・・。
それをこの子が・・・。
それ以来門番情報が欲しいと、俺の姿を見つけると話を聞きに来る。
この俺ボブルンへ・・・。
自慢じゃないが子供に好かれたことはない。
この俺に??
その少年、ラウールは今日も俺を見つけて【門番情報】が欲しいと言った。
俺は今ある情報をラウールに教えた。
ラウール
情報は全て教えるから
どうか無事で
願わくば・・・・。傷一つない姿で戻ってきてくれ。
オークが多くいる、多くの木に囲まれた街だから・・・。
~~~~~
僕達は盗賊の拠点に向かっている。
ボブルンさんの情報はいつも正確だった。僕はいつも街の外へ向かうときはボブルンさんを探し、ボブルンさんから情報を聞いていた。
それはなぜか?
知らない人に声をかけることが苦手だからだ。
僕はお店などでは店員さんに声をかけるのは大丈夫だが、少し踏み込む間柄になる人は選んでしまう。人見知りだ。
それはさておき、木や草が生い茂る森を進み、気配を察知しながら先に進んで行く。時々オークが出現しては倒し、回収する。そうやって進んだ先に、一軒の家が見えてきた。家と言ったが粗末なもので、ただ、雨風がしのげる程度の作りである。そんなところに数人、二人以上の人が入るのか?そう思えるほどの物であった。
近くに行くと、五人の気配を感じた。
この五人が盗賊か?
他にいないか少しの時間待ってみるが動きはない。そこで僕たちは、依頼を済ませようと更に近くに行ってみた。
するとそこからは、男臭いと表現するのにふさわしい臭い・・・、男臭いんではなく汗臭い!そして、糞尿臭い!
こんな臭いのところには長くはいたくないと、僕たちは小声で話した。
それで僕が軽く風の魔法で家を飛ばし、油断しているうちに盗賊を討つことにした。
作戦通り魔法を唱えたところで、盗賊は何が起きたのか分からないと言った表情をして止まっていた。
そして一瞬でクロースとクリスが駆け寄り、首をはねた。それで終わりだ。
「あっけなかったなラウール。これで俺とクリスもランクアップだな。」
ドヤっとした表情をしてクロースが振り返った。
「そうですよね、これで依頼は終了ですよね?」
そういってクリスも剣の血を飛ばしながら振り返った。
「おつかれ! 依頼は終了だね。これでランクアップの条件も達成したし、そろそろランクアップだと思うよ。臭いけどこの中を見て、お宝があれば持って帰ろう。一応依頼が出るような盗賊だから、何かいい物があると思うよ。狭いし、臭いけど。」
そういって僕たちは、臭くて狭いところを探してみた。狭いと言っても魔法である程度吹っ飛ばしているので、見晴らしはいいのだが。
そして狭い範囲をみんなで見ていると、おそらくマジックボックスと思われるものが置かれていた。
そのマジックボックスからは、誰でも物は取り出せる。しかし、マジックボックスの中にどれほどのものが入っているかわからないので、そのまま持って帰ることにした。
~~~~~
盗賊の拠点から首都フイエウに戻り、冒険者ギルドに依頼達成の報告をした。
その報告をした後に、クロースとクリスがCランクに上がった。
僕と一ランクしか違わない・・・。
ちょっと悔しい。
冒険者ギルドへの登録年齢や、初めて登録したときに色々と優遇はあったが、僕は悔しい・・・。
それはそれとして、一緒に冒険している人がランクを上げているのを嬉しくも思っている。
「おめでとう二人とも。Cランクの次はBランクだね。依頼をまた繰り返して、試験を受けたらBランクだよ。」
「ありがとうラウール。俺はまだ戦闘力はお前たちに敵わないが、どうにか役に立っていると思いたい。まだまだランクを上げるぞ! 今俺はものすごいやりがいを感じている。冒険者・・・。いいね。」
うっとりとした顔をしているクロースとクリス。
「私もすっごく嬉しい!! 騎士ではない充実! ん~!!」
珍しくクリスは興奮していた。
そんな状態の二人を宿屋に連れ戻そうと声をかけた。
「それでは一度宿に向かい、その後ランクアップのお祝いをしましょう。おいしい物を食べて、お酒も飲みたい人は飲みましょう! 宴だ~!!」
テンションを上げすぎて、僕のキャラも崩壊した・・・。
そのノリに二人は乗ってきた。
「よし!帰ってお祝いだ!!」
と両手を上にあげて言うクロースの言葉で、僕たちは冒険者ギルドをあとにするのであった。
~~~~~
帰り道・・・・。
クロースとクリスは今までに見たことのないくらい興奮している。今日あったことをお互いに声高に話していた。
僕は盗賊とはいえ、あまり人を殺したことを周りに聞こえるように言うのは好きでなかった。
「ちょっと静かに戻ろうね~、興奮しているのはわかるけど・・・。」
とちょっと威圧を飛ばした。
すると、2人に向けて飛ばしたつもりの威圧だが、違う所から声がした。
「よく気付いたな・・・・。俺にいつ気づいた・・・。」
そう、目の前で黒いローブを身にまとった人が家の陰から現れて話し出した。
まったく気づかなかった。一応気配を探れるスキルはあるはずなのに・・・。それとも・・・、そのスキルをすり抜けることが出来るスキルがあるのか??
そう考えていた。
「気づかれていてもどうでもいいが、そのマジックボックスを渡すんだ。」
そう目の前の人が言ったと思うと、すでに目の前にいた。
「クッ・・早い!」
僕は一気に後退し、構えた。
「この動きから逃げられるのか・・・。今日はあきらめよう・・・・。しかし、そのマジックボックスの中身を他の奴に見せたり渡したとき・・・、そいつも我々の獲物になる・・・。」
そういうと、黒いローブの人は走り去っていった。僕でも追いつかないくらいの速さで・・・。
「大丈夫かラウール? 怪我はないか?」
心配そうに駆け寄ってきたクロースは、僕の体を見ていた。
「大丈夫。攻撃は受けていないから・・・。けど何が起きているのか・・・。クロース、クリス、宿に戻ってマジックボックスの中身を確かめてみよう・・・。僕たちはもうあいつに気づかれているから、見ても見なくても同じだと思う。」
そう言って三人は宿に戻るのであった。




