第四十四話 買い物と依頼と
冒険者登録を済ませた二人と共に、冒険者ギルドで食事をしていた。
僕達はしばらく一緒に依頼を受けることにした。そして目標の一つは冒険者ランクを幾つか上げる事にした。
初めはクロースとクリスの冒険者ランクを上げることにして、珍しい依頼があった時にはそれを優先すること。一度は盗賊など犯罪者を討伐しておくこと。長期に首都フイエウから離れる依頼は、もうしばらくしないことにした。
そこまで決めた僕たちは、依頼を受けるより先に武器と防具を新しくしようと考えた。
僕は身長が百七十センチと少し伸びているので、丈夫な服を買いたい。
クロースは剣を新調したい。
クリスは今は皮鎧だけど、僕の動きを見て、自分も丈夫な服にしたいと話してきた。
そこで僕たちは、何でも相談の受付で、魔物と戦うときにも着ることが出来る服を売っている店と、良い武器屋はないか聞いた。
すると【ククリの店】と言う店を紹介された。そこには冒険に必要な物全般が売っているそうだ。そこでみんなで行ってみることにした。
何でも相談受付で聞いた通り道を歩いて行くと、店が見えてきた。そこは個人商店が普通の店の大きさとすると、三倍はありそうな店構えだった。
【ククリの店】に入ると冒険者が品物を吟味している。そして、店員らしき人はいるが、特に自分から傍に行くこともなく、聞かれたことだけに答えている。うん、煩わしさがなくて僕好みの店だ。
「クロースさんの剣から見ていく?その剣よりいい物を買いたいんだよね?」
クロースが持っている剣を指さし、聞いてみた。
「そうだな~、じゃあ先にいいか? けど、詳しくないぜ、剣の事・・。」
ちょっと伏し目がちにクロースが答えた。
「大丈夫でしょう。店員さんに聞いてみたらいいんだから。すいませーん。ちょっといいですか?」
僕は店員さんを呼び、クロースや店員さんと話をして武器を選ぶ。
クロースさんは自分の剣を見せて、同じくらいの長さの剣が欲しいと言っている。すると店員さんは一本の剣を持って来た。
「(うん、良い目利きだね。今持っている剣より、少し品質が良く、扱いやすそうだ。)」
次は丈夫な服を買いたいと同じ店員さんに話し、今着ている服を見せる。すると店員さんが何処からか丈夫な服を持ってきた。
【ブラックオーガの服:黒色:各属性に小耐性あり】という、上下ともに黒い服だった。まるでバイク乗りが着ているライダーズジャケットのような。
その後はクリスも服を選んでいが、クリスは僕の服が気に入ったのか、レットオーガの服を購入していた。そしてそれを見たクロースも、ブルーオーガの服を購入した。
どこの戦隊もの・・・。
しかし満足した僕たちは、今日は宿で夕食を摂りながら話し合いをすることにして【ククリの店】を出た。
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皆の荷物だが、僕はアイテムバックがあることにして、ダミーを持ち歩いている。そしてクロースは本物のアイテムバックを父親からもらっていた。
さすがに長い旅だと誤魔化せないので、荷物はたくさん持てることを話しておいている。
宿についたてからは少し休憩し、受付の前で落ち合った。
そして夕食を摂りながら、明日の計画を立てていた。
「ねえ、いきなりだけど、ここまで来たから呼び捨てにするね。」
そうラウールは宣言した。
「初めからそうして欲しいと言っていたから問題ない。そのほうが俺も嬉しい!」
クロースは笑顔だ。
「私もそのほうがいい。できたら、口調ももっと砕けてもいいくらいだ。」
クリスも分かりにくいが嬉しそうだ。
「ありがとう。段々めんどくさくなってね。やっぱり長く一緒にいる人と話すのに、さん何てつけてたら話しにくくてね。今後もよろしく。」
「「よろしく!」」
2人は声をそろえて答えてくれた。
ラウールは今まで両親以外でここまで長く一緒に過ごしたことがなかったから、距離の取り方をどうするか考えていた。
しかし二人とは相性も悪くなく、素を出して行こうと考えた。
そして、もうしばらくは一緒に旅をしようと思うことができた。
僕達の距離が近くなり街の中の依頼から、魔物討伐、薬草採取などいろいろな依頼を受けていた。
そして生活は今までの貯蓄や準備金ではなく、首都フイエウでの依頼報酬だけで生活できるようにやりくりしていた。
そして、そのお金だけで貯蓄する余裕が出てきたら、街を離れる依頼も受けようと皆で話し合っていた。
やはりここでは、門番のボブルンが言った通り、オークが多くいた・・・。
そのオークだが、常設の討伐依頼だけでなく、肉も動物の肉より高く売ることが出来る。味もおいしいのだ。
この世界でも動物は普通に食べるが、魔物も食べることが出来る。特にランクの高い魔物は、その肉の味も良いらしい。
僕は自分が狩った物を食べることが多かったので、高級な魔物肉は食べたことがない。だからフォレストホーンが一番美味しいと思う。
それよりおいしい肉もあるなら食べてみたい。
肉はさておき、今までで一番魔の森に近いこともあり、強い魔物が時々現れるそうだ。僕たちはま出会っていないからわからないが、ワイバーン並みの魔物が集団で襲ってくることもあるそうだ。
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宿屋を何度か七日ずつ更新し、今日も僕達は冒険者ギルドに来ている。
「よーラウール。今日は何の依頼を受けるんだ。まだ依頼を失敗したことないだろ。もっと高いランクの依頼を受けてもいいんじゃないか? お前のランクが高いから、お仲間も一緒に受けることが出来るだろ。お仲間も強いようだから。」
そう普段声をかけてくれる冒険者が言った。
「モエデイさん、僕は自分の身の丈に合った依頼しか受けませんよ。まずはこの二人のランクアップを目指していますから。それに、まだ盗賊とかの犯罪者に出会っていませんから。」
もう冒険者ギルドでのやり取りも慣れたものだ。
「だったら、盗賊退治の依頼票があったぞ。受けてみたらどうだ?」
そう言って、指をクイッと依頼票に向けた。
「そうなんですね。ありがとうございます。」
会話後に依頼票を確認してみると、数人の盗賊が、街道沿いの馬車を襲撃することが続いていると記載されていた。出来るだけ早く盗賊を討伐してほしいと言う依頼だった。
「どうするクロース、クリス。討伐依頼で盗賊を一人でも倒すことが出来たら、多分Cランクにランクアップするけど?」
「「やる!」」
二人はやる気で返事の声がそろった。
「じゃあ、この依頼を受けて来て。僕は先に門のところに行って、ボブルンさんに門番情報を確認するからよろしく。」
そういって二手に分かれた。
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門まで移動しラウールは今日の門番は誰か確認した。すると丁度良いことにいつもの顔を発見した。
「ちょうどよかった、ボブルンさん!! おはようございます。」
そう言いながら駆け寄った。
ボブルンさんは今日は手続き役ではなく見張り役のようで、前方をじっと睨んでいた。
「ようラウール! 今日も依頼か?」
とにこっと微笑んで聞いてきた。
「そうなんだけど、門番情報をちょうだい! 今日から依頼票が貼られたものだけど、盗賊討伐があったから受けるんだ。」
「おうそうか。盗賊の情報ならあるな。前々から俺たちも言っていたんだがな・・・。」
そういってボブルンは盗賊が潜んでいそうな所を教えてくれた。ここから少し西に行き、山の手前に森がある。おそらくそこに盗賊の拠点がある。
拠点と言っても小さな家に数人の規模だと予想され、クロースとクリスでも受けることが出来るくらいだ。
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クロースとクリスも門の所まで到着し、僕達は盗賊の拠点に向かうことにした。門番情報を信じるなら、盗賊討伐に時間がかからない限りは、夕方までに戻ってこれると予想したからだ。
「クリスは人を殺したことがあるよね?騎士だし。クロースは人を殺せる?僕は初めて人を殺した時は、悪い人でももの凄く動揺したけど・・・。」
先にクリスが口を開いた。
「いえいえ、騎士とは言え、人を殺す機会はそこまでありませんよ。戦争でもあるなら別ですけど、そこまで乱れた出来事も無かったので。」
そうクリスが答えた後にクロースも答えた。
「そうだぜ、いくら貴族と騎士でもそんな機会はなかなかないものだ。」
それを聞いたラウールは、勝手に決めつけてしまったことを恥ずかしく思った。
「ごめん2人とも。僕が勝手に思い込んで。」
ここは謝るべきだよね。
「いいよラウール。貴族の世界は、なかなかわかりにくいものだ。」
そんな会話をして、盗賊討伐に向かうのであった。その先のことは門番情報でも計れずに。




