第四十三話 クロースとクリスの冒険者登録
首都フイエウに到着したラウールたちは、街に入るために門の前の列に並んでいた。
少しずつ先に進みようやく僕達に声がかかった。「次の人」と目の前にはいかついマッチョが僕達に声をかけ、手続きをし始める。
だがしかし、僕が先手をとった。
「こんにちは。門番さんのお名前をお聞きしたいのですが。」
目の前の門番さんは少し驚いていた。
「いきなり名前を聞かれることがないから、ビックリした。俺はボブルン。門番だ。」
目の前の百八十センチはありそうなマッチョが答えてくれた。ボブルンはそんなマッチョな姿をしているが、つぶらな目を向けてきた。
「(マッチョ率、目がつぶらな人が多い・・・)初めまして。僕はラウールと言います。しばらくお世話になるので、門番情報があったら、教えてくださいね。」
そういうと更に驚いたようだ。
「どこでその話を・・・。俺たちの情報を信用してくれる奴なんて珍しい・・。おう!わかった。これからよろしくな。」
そういって手続きをしてくれた。そして門を通り抜けようとする僕に少しだけ情報をくれた。
「この辺はオークが多くいるから気を付けるんだな!」
と右手の親指を立てて、ウインクした。
「おっと、ここでもお茶目な門番ジョークが・・・。ありがとう。」
そういって街に入っていった。
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町に入り宿屋を探す。
しばらく街並みを見ながら僕達は進んでいた。
街中では、王国以上にいろんな見た目の人がいた。獣人族やエルフ、ドワーフ、そして小人族。
その生き生きした顔から、種族差別はないように思えた。
そのまま街を進んで行くと、一軒の宿屋の看板が目に入った。
【宿屋 わかば 首都フイエウ店】
「ここにしようよクロースさん達。わかばには一回泊ったことがあるけど、いいところだったよ。」
そう僕が言うと皆は賛成してくれ、宿屋わかばに入った。
宿屋わかばに入ると「いらっしゃいませ!」と恰幅のよい女の人が迎えてくれた。
「お食事ですか?お泊りいですか?どちらも受け付けておりますよ。」
そう言って笑顔を向けてくれた。
「泊りでお願いします。それぞれ個室で。まずは七日間の滞在はできますか?」
僕は取り敢えずそう聞いてみた。
他の町に寄った時も、僕が交渉役を担っていたから。
「三部屋で個室ですね。」そう言って手元の台帳を確認している。
「はい、大丈夫ですね。それでは七日間の宿泊で手続きしますね。」
そう言った後に宿の説明をしてくれた。
ここでも朝夕の食事と、風呂の提供があった。ありがたいことだ。
部屋の鍵を受け取った僕達は各々の部屋に荷物を置き、受付の前に集合することとなった。
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「待たせたなラウール。それでは行こうか。」
そうクロースが言い、冒険者ギルドに向かうことにした。
「おかみさん。冒険者ギルドはどこにありますか?」
そう僕が訪ねると丁寧冒険者ギルドの場所を教えてくれた。
そして僕達はおかみに聞いた冒険者ギルドに向かい歩いている。歩きながら冒険者登録について簡単に説明した。
雑談もしながら歩いていると、剣と盾の紋章が見えてきた。その地域により紋章を掲げる方法は違うが、ここでは看板になっているようだ。流石に世界的組織の冒険者ギルドの紋章はどこでも一緒だ。
僕は緊張しながら冒険者ギルドの前に立った。おそらく、この中で一番緊張している。
なぜなら・・・、初めて入る冒険者ギルドではいつも問題が発生しているからだ。
だがしかし・・・、いつまでのここで立っていても時間の無駄なので、思い切ってドアを開けた。
そこにはどこでも一緒で、典型的な冒険者ギルドの風景だった。
依頼票の前で悩んでいる者、受付の前に並んでいる者、食事をするか酒を飲んで騒いでいる者。うん、うるさい。
その喧騒を無視し受付の列に並び待っていると、ようやく僕達の順番が来た。
「しばらく拠点をこの街に移したいと思いますのでよろしくお願いします。ラウールです。」
そういいながら冒険者プレートを提示した。
僕の冒険者プレートを受け取った受付は「少々お待ちください」と言い、手続きを行っていた。
「はい、ありがとうございます。貴方のような冒険者は大歓迎です。私はハールと申します。これからよろしくお願いします。」
そういって冒険者プレートを返してくれた。
そして僕はお願いもした。
「この二人の冒険者登録をお願いします。実力は僕が保証します。こちらのクリスと言い、強さだけならSランクに匹敵するかもしれません。そしてこちらのクロースは強さだけならDランク位ですが、知識があります。そして僕は剣と魔法を使います。一緒に依頼を受けますので、パーティーバランスはいいと思いますよ。」
そう言って、クロース、クリスを紹介した。
「おいラウール!一緒に依頼を受けてくれるって本当か?いきなりで驚いたぞ。・・・ありがとう。」
「どれくらい一緒にいるかはわからないけど、しばらくはよろしくね。」
そうラウールは返事をした。そしてまた口を開こうとしたがハールさんに遮られた。
「話したいことがあるのはわかりますが、まずは登録をしてください。後ろで待っている人もいますので」
僕たちはハッとして、ハールさんと後ろに並んでいた冒険者に頭を下げて謝った。
後ろの冒険者たちは怒るのかと思った。だが冒険者は微笑ましい場面を見たというように、ニヤッとした表情をすると、前を指さし待ってるから登録してしまえと声をかけてくれた。
「ありがとうございます。早速登録しよう。準備はいい? クロースさん、クリスさん?」
こうしてクロース、クリスの冒険者登録が終了した。本人たちが十五歳を超えていることと、Bランクの僕が実力を保証したことで、八歳で登録した僕とは違うことがあった。
それは、冒険者ランクがDから始まるのであった。
「(ちょっとずるい)・・・、おめでとう。僕はGランクから上げたのに・・・。」
「イヤイヤイヤ~! 初めのランクはそうだろうけど、十四歳でBランクまで来ているラウールは凄いからな!」
そうクロースは叫んだ。
やばい!周りの冒険者に聞かれた!
また何かイベントが・・・・。
そう思い、意を決して振り返ると・・・
「「すごいじゃないか!!」」
「十四歳でBランクか! 将来はSランクか!」
「機会があれば手合わせしないか?」
「臨時のパーティーでいいから、後で組んでみないか?」
そう言って、僕を馬鹿にする事も怖がる事も、侮る事もない状況だった。
ありがたい・・・。これこそ僕が求めていた冒険者ギルドだ。




