第四十二話 ラウールは旅をしながら十四歳になる
フイエウ共和国に入国した僕たちは、クロースの馬車に乗り三人でハンブートを目指していた。
クリスが「馬の扱いは任せて。」と話すため、馬車の操作はお任せであった。
途中野営や町の宿に泊まりながら、大きな問題がなく先へ進めている。
弱い魔物ばかり出てきているので、ほとんどは僕が魔法で倒していた。時々自分の実力も付けたいと、クロースやクリスも戦っていた。危険な時は僕も参戦しようと思っていた。しかしそんな場面はなく、クリスは十分に戦闘能力があった。
そして旅をしながらフイエウ共和国の事も聞いた。
僕が何となく情報をまとめてみた。
【フイエウ共和国】
共和国であり国王はいない。
だから集団をまとめる人を選挙で決めている。
国に認められている村や町はに関しては、成人した住民が一番多く投票数の人が代表になる。代表になりたい人は立候補する必要がある。
これが村長や町長位の役職になる。
次が知事についてだが、知事は住民が全て投票するまでには技術が発展していない。
だから村長や町長が立候補した人に投票し、一番投票数が多いものがその地位に就く。
最後に国の代表は、全国の人から投票を受けて一番投票の多かったものがなる。
代表としての任期は五年。
国の代表を決める選挙は大陸の大きさもあり、一年かけて行われる。その為国の代表の任期は六年で、最後の一年は選挙期間に重なることになる。
国の代表は首相。
街の代表は知事。
そして、国の役人として働く者は試験を受けて仕事につく。役人の中で専門の知識がある者の中で一番できる人が、その部門の代表となる。
しかし呼称が前世の知識と似ていて良かった。
間違えにくいから。
代表になる者は有名人がほとんどで、知識がある者、武力のある者、国に貢献した者などが今までなっているようだ。現在の首相は知識のある者のようだ。
ただ、どんな者が上に立っても、国に雇われた者=公務員が優秀であるため、国は乱れにくいようだ。
魔物は、魔の森があるからか、大陸の東ほど強くなるようだ。そのうち行ってみたいと思っている。SランやEXランクもいるようで、僕自身のレベルも上がってから挑みたい。
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旅も順調に進み、ハンブートの街が近づいてきた。もう数日と言うところまで来たときにクロースが真剣な顔で話しかけてきた。
「なーラウール。俺は首都フイエウで学びたいと思っている。しかし、そこまで行くには更に長い旅となる。ハンブートの冒険者ギルドで護衛依頼を出すことにしていたが、俺としばらく一緒に居てくれないか?」
いつかは言われると思っていた。この旅は特に不満もない。僕が世界を旅したいと言う目的とも離れていない。このまましばらくは一緒にいてもいいと考えている。しかし、目的が大きく離れた時は離れることが条件と考えている。
「クロースさん。しばらく一緒にいることは構わないです。冒険者としての依頼にさせてもらいますけどね。僕は旅と今まで見たことがないものを見て回ることが目的なので。だからまったく目的が違うことになった時は、もう依頼は受けませんからね?」
クロースは笑顔になった。
「それでいい。ありがとうラウール!」
「私からもお礼を。ラウール君、ありがとう。心強いよ。」
クリスもそう言った後、笑顔を向けてくれた。
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その後の道中も平和なものだった。ただ、しばらくはこのメンバーで旅を続けることになり、以前よりも穏やかな空気が流れているように感じている。
僕もようやく信用する人が増えてきたと思う。
できるならば今後は信頼できる仲間が欲しい。
そしていずれは一人ではなく誰かとパーティーを組みたい。
大人になったら結婚もしたいし自分の子も愛してみたい。
そんなやり取りもありながら、ハンブートまではあれからすぐに到着した。その後街で数日過ごし、旅に必要な物を補充した。
そして今後の方向性を話し合い、ここまで乗ってきた馬車は売り払うことにした。移動は乗合馬車で十分と感じたからだ。
乗合馬車では、その国の人々を知ることが出来る。そして、冒険者ギルドなどでは得られない情報も時々拾えると思う。
ハンブートの街の次は南東にある街でブレットンに寄った。ブレットンの街でも短期間の滞在として、首都に向かうことにした。首都についてからが本番で、集めた情報を基に、この街を色々と周ることと、依頼を受けて動いてみたいとクロースとクリスに伝えた。
ここまで来てクロースとクリスが冒険者登録をしたいと言い出した。冒険者登録をして、自分たちがついていける依頼を僕と一緒にしたいと訴えた。クロースの目的はこの国のいいところを学ぶこと。その情報を父であるカーシンに伝えることにある。
この国ではクロースは隣の国の貴族の三男で、何の権力もない状態にある。実際にはこの国の一般人がクロースに悪意を持って害すると、国同士の問題になるのだが・・・。
一般人に特権を振りかざせない程度には、権力がない。
僕は冒険者になりたいと言う訴えは本人達に任せる事にした。
ただ一緒に冒険をするかどうかについての返事は、首都に到着するまで保留とした。
だけど最近はこの護衛依頼だけでほとんど冒険者活動をしていない。そろそろランクアップを考えて依頼を受けたほうがいいのかと考えていた。
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「もう少ししたら首都フイエウにつくが、ラウールは一番初めにどこに行く?」
隣に座ったクロースが声をかけてきた。
僕は読んでいた【転移の書】から目を離した。
「まず宿を探しましょう。そして一日ゆっくり休んだら、冒険者ギルドに行きます。その時クロースさんとクリスさんも一緒に行きますか?冒険者登録をしたいんでしょ?」
「そうだな、一緒に行きたいな。ラウールは冒険者ギルドに慣れているんだろうけど、俺は依頼を出す以外はあまり行くことがなかったからな。」
僕はヒヤッとした。
「僕は慣れていませんよ・・・、大体は初めての冒険者ギルドでは何かが起こりますから。冒険者ギルドに良い思い出はないです。まずは恐れられるから・・。」
「強いからか?強いのも大変だな。」
「いえ・・・。大体が絡まれて・・。この年でランクも高いなんて誰も初めは信じないから、好きなことを言い出すんで・・・。そしてつい威圧感が出てくるみたいで。」
眉間をもみながらクリス苦笑いしていた。
「ラウール君は魔法も得意ですものね。そんな人が威圧すると、魔力の力もあって、相手はたまったもんじゃありませんね・・・」
その言葉にクロースも同調した。
「ラウールは怒らせないようにしないとな・・・。お前が怒る基準は何だ、一応覚えておきたい。」
少し考えて僕は答えた。
「大切な人に害を及ぼす人は許さない。理不尽な要求をしてくる人が嫌い。弱いものを虐げる人も嫌い。僕を集団で笑いものにする人が嫌い。陰口をたたいて直接文句を言わない人は苦手。ここには僕の二つ名はさすがに届いていないと思うけど・・・、それに触れて来る人からは逃げたい・・・。」
「結構あるな。俺も気を付けるぜ! ラウールには戦いで絶対にかなわないからな。そして頭も良かったし、なんだよ計算も早いって・・。」
穏やかな話題に次第に変わり、和やかな雰囲気になった頃、ようやく首都フイエウに到着した。
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クロースと一緒に首都を目指し一年と少し。
一年前とは国も違って、今は首都フイエウにいる。
そして僕は十四歳となった。
名前:ラウール
職業:冒険者
LV:59
HP:540
MP:1200
体:456
心:1020
運:90
ユニークスキル:すくすく育つ・看る
スキル:解析・学習・アイテムボックスX・忍びの技・魔法(全)・戦闘(全)・解体・自然回復(全)・状態回復(全)
加護:才能の神の加護
称号:地球人・心は中年・才能の神が見てる人・両親への信頼・両親からの信愛・ジェノサイド・乗り越えた者
*運以外は100が25歳の平均値




