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第三十七話 買い戻しでの一悶着

買戻し期間はこの街にいなければいけないと言われ、僕は【希望の家】の拠点にお世話になっていた。


ただでお世話になるのが気になっていたので、冒険者ギルドで依頼を受けながら希望の家の拠点に常にいる状態を避けながら過ごしていた。


ほとんどは貴重な薬草の採取の依頼を受けていた。森に行くことで、動物や、食べることが出来る魔物を狩ることもできるからだ。


狩った肉を宿の代金代わりにしていた。もちろんカシマスさんはお金はいらないと言い、肉もなかなか受け取ってくれなかったから、押し付けた。



~~~~~



その日も薬草採取と適度に肉を手に入れて冒険者ギルドに戻ってきた。



依頼達成の報告をて報酬を受け取り「さ~帰るか・・。」と1人でつぶやいたところで声がかかった。



「おい!そこの黒髪!ちょっと待て。」



後ろから僕を呼び止めたであろう声が聞こえてきた。



「僕の事ですか?」


そう言いながら振り向いた。振り向いた先には全く会ったことがない人物が立っていた。


身なりから貴族か貴族の家の子と思われる、僕と同じくらいの身長で、年も変わらないくらいの子が立っていた。隣には護衛と思われる、動きやすそうな格好をした者と、金属鎧を着た、騎士のいでたちの者が立っていた。



「お前が盗賊の宝を持ってきたやつだろ。俺にふさわしい剣を見繕って献上するんだ! 光栄だろ庶民が貴族の子である、ブリリット・コウーン様に献上できるんだからな。一番高価なものを献上するのだ!!」



・・・・・・



とうとう貴族にエンカウントしてしまった。今までの生活は幸運だったのか・・・。エンカウント率が低くて、助かったのか・・・。



僕が聞いたこの国の貴族は、


【貴族階級】


1:国王 言わずと知れた国の主。


2:公爵:王家の分家。「この紋所が目に入らぬか」くらいの偉さ。


3:侯爵:国王に従っている。有力者。総領主などがここにあたる。複数の街等をまとめる役割。


4:伯爵:国王の側近など。納めている土地は侯爵より小さいか、国王や公爵の傍に仕えている。領主等がこの位に就く(街とその外縁程度)。


5:子爵:伯爵の側近など。もしくは、有力貴族の跡取りなど。土地を治めているなどではなく、役人などになる。


6:男爵:貴族の中では一番くらいが低い。役人など。功績があった場合は、1代限りの男爵位もある。


7:準男爵:準貴族位。名誉貴族。


8:士爵:準貴族。準名誉貴族



と記憶しているけど、貴族の名前なんて知らないから、こいつはどれくらい偉いんだ?



・・・・・・・・



色々と思い浮かべていると、イライラした口調でブリリット・コウーンが話し出した。


「聞いてるのか!! 返事は! はいっ、ブリリット・コウーン様だろ!!」



また怒鳴られた・・・。貴族とかと関係を持ちたくなかったから冒険者ギルドに頼んだのに・・。


台無しだよ・・・。



「冒険者ギルドのギルマスと話をしてください。どこからか情報を得たのだと思います。けれども私など庶民で、貴族様に対する対応は心得ておりません。私は盗賊を討伐しただけで、宝と言われるものは冒険者ギルドに売却を依頼しているだけですので・・。」



「だから、その中からよこせと言っている!! お前の持ち物だろ!」



延々と「冒険者ギルドに」と「だからよこせ」の応酬になってきたころ、グレーの髪の40歳くらいの男が近づいてきた。そして僕たちを見比べると話し出した。


「おいおい、貴族が集りをしているのか?貴族の風上にも置けねーな。俺はフエフートと言うものだが、コウーン家の子が貴族という立場を悪用していると思っていいのか?」



「あ”~お前は誰だ!! 俺を誰だと思ってる!!」


今度はグレーの髪の男に怒鳴りだした。



「(典型的な貴族のイメージ通り。ここは更に偉い貴族様に任せよう)」


ラウールはグレーの髪の男が貴族であると確信していた。絡んできた小物とは違い、風格を感じたからだ。



「俺はカーシン・フエフート。ま~伯爵だ。ここのギルマスに用事がありここまで来たが、面白い見世物だったぞ。」


グレーの髪の男に追いついた付き人のような男が耳打ちしていた。



「おまえ、男爵の子程度で、高価なものを庶民に献上しろと? 我々貴族は偉い。偉いと言われるほどの度量を見せなければいけないのが貴族だ。お前のその態度は果たして貴族の態度か? 男爵の子は貴族か?」



その言葉を聞いた小物は震えていた。震えながらも伯爵に頭を下げ、速足で立ち去って行った。



~~~~~



あの後伯爵とは挨拶を交わした。所詮前世も庶民。礼儀などは日本人の一般程度しかない。それでもかばってくれた恩を感じ、精いっぱい丁寧にお礼を言って別れた。




別れを告げた後に伯爵は「あいつは強いな・・」と呟いた言葉は、ラウールには聞こえていなかった。



~~~~~



カーシンはスタスデの街の冒険者ギルドのギルマス、ランバードに依頼があり訪ねてきた。



カーシン・フエフートは自分の強さにも自信があり、貴族という権力もあり強者の雰囲気を醸し出している男だ。そして実際にも実力があり、Bランク冒険者とは互角に戦える戦闘力を持っている。実力があり人柄もよく、貴族と言うだけで権力を振りかざす貴族は嫌いであった。



スタスデの街につき、真っ先に冒険者ギルドに来ていた。そして、買戻しが行われていることを知り、カーシンも品物やリストを見て周っていた。



「おう、これはミスリルの剣。こっちは美しい腕輪・・。こっちはマジックアイテムか?」


品物やリストを見て、ずいぶん貴重な品物をため込んでいた盗賊もいたものだと感心していた。



そろそろランバードに会いに行こうと考え、受付に行こうとしたとき、後ろのほうが騒がしくなってきた。



「(よこせ? 貴族? 冒険者ギルドに・・? 貴族の子)」


どこかの貴族の子が馬鹿なことでもしているのか?



馬鹿な貴族のせいで貴族の風格が落ちていることもあり、イライラした気分で騒ぎのある方向へ進んで行った。



そこには同じくらいの年頃の2人がいた。


1人は典型的な貴族のドラ息子。護衛を連れて粋がっており、カーシンが大っ嫌いな人物像であった。そしてもう一方は権力に戸惑っているものの、いわゆる強者の雰囲気を身にまとっており、凛とした佇まいをしていた。



黒髪の子はおそらく俺より強い。もしこの子と貴族のドラ息子が争った場合、黒髪の子の立場が悪くなる。そして、これほどの年齢で、これくらいの雰囲気を出せる子供がこの国に敵対するのは、我が国にとっての不利益だ。



そう思い、自分の権力も使い仲裁した。



「あいつは強いな・・・」


そう、去っていく後姿を見ていた。



黒髪の子が去ってから、ランバードと久しぶりの再会をした。貴族とギルドマスター。権力を比べるものではないが、一つの街のギルドマスターはかなりの権力を持っている。そして、友人として付き合っている。



今回は本来の目的の息子の護衛依頼を依頼した。



そして、一階?であった騒ぎの事を話題にすると、ランバードは言った。


「あいつはラウール。あいつを怒らせるなと言われている。自分や親しい人に理不尽な敵意を向けられたときのあいつは・・・。あいつはGランクで二つ名がついた。そして十二歳でBランク冒険者だ。この前の二百人にも及ぶ盗賊討伐はあいつと、Sランク冒険者二人でやったんだ。」



その言葉を聞いたカーシンは目を見開いた。


「そのSランクの冒険者が強すぎただけなのでは?」



首を横に振りながらランバードは言った。


「いや、Sランク冒険者はカシマスと言うのだが、カシマスが言うには自分よりもおそらく強いと言った。剣、魔法どちらも威力も高く、おそらく何も考えず殲滅するだけで有れば一瞬で終わっていたと・・・。」



驚いた表情をしながらもカーシンは聞き返した


「それほどの冒険者がなぜBランクでいる? そして名前が広まっていないのはなぜだ?」



「それは俺にもわからない。しかし、あいつがいる街では二つ名がつき、周りに一度は恐れられる。名が広がるのも時間の問題じゃないか?」



・・・・・・



カーシンは


「あいつが今回の護衛依頼を引き受けてくれたらうれしいのだがな・・・・。



そう呟いた。



ラウール。その名を覚えておこう!




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