第三十六話 盗賊のお宝
僕は今日も冒険者ギルドに来ている。そして今隣には、カシマスさんもいる。
今回もギルマスの部屋に招かれ、向かいに座ったギルマスからが話し始めた。
「この前少しだけ伝えたが、盗賊討伐で手に入れたものを、買い戻したい人や、割り増しで買ってくれる人がいる。特に今回の盗賊は拠点が大きかっただけあって、貴重なものもあるようだ。そこでリストを作成し、出来る事なら、実際に物も並べて希望者に見せてやりたい。」
「ラウールはどう思う?私は大切なものを盗まれた人がいるなら、協力してあげたいけど・・。」
カシマスさんは僕に聞いてきた。
「ん~・・。」と僕は少し考えた。早く出発したい気持ちもある。でも、僕のアイテムボックスXと解析で、ピンポイントな人にとってはよは大切だと思うものもあった。もしその人の手に戻るのであれば、滞在を少し伸ばしてもいいのではないかと考えてしまう。
「わかりました。協力します。特に、高価そうなものだけでなく、街の人が持っているような装飾品を中心に並べるので良ければ。」
ギルマスは手を1回叩き「ありがたい!それでもいいから頼む!」そう言って頭も下げた。
その後は僕とカシマスさん、ギルマスで話し合いを持った。
物品のリスト整理に2日間。リストと実際の品物を並べておくのが5日間。そしてもう5日間の間に交渉をして、納得がいくものだけをその相手に売る。納得がいかないものは、鑑定した金額で良いので、カシマスさんと半分に分ける。自分たちが欲しいものは出さなくて良い。そして、ラウールが買い戻し交渉に出て行かなくても良いようにすることが三人の合意内容となった。
そして本来であれば商品の売買を直接行うことになり、商人ギルドも挟まなければいけない状況だが、面倒なことは全て冒険者ギルドが対応してくれるそうだ。
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話し合いの後で僕とカシマスさんは【希望の家】の拠点に移動した。
カシマスさんだけ一緒にいることを条件とし、リストを作成する。
出品する物はアイテムボックスXから出しておくことにした。
宿は料金も支払っていたが、【希望の家】に寝泊まりすることにして引き払った。
おかみやダン、特にエミリは寂しがったが、僕の能力をあまり知られたくない。
それでも長く過ごした宿から出るのは僕も寂しい気持ちになった。
【希望の家】の一室で僕達は必死に物を見ては紙に書き込み、出しておくものは荷台に詰め込む作業を繰り返した。さすがに物が多すぎて、外に出る時間が全くなかった。
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二日後になり、荷台を引く役割をを【希望の家】青年たちの手伝いに任せ、僕達は冒険者ギルドについた。
冒険者ギルドではすでに明日から行われる、買戻しのため、少しでも情報を得て、自分たちのもうけになる物はないか様々な人が探り合いを開始していた。
特に冒険者ギルドにいると違和感しかない商人の格好をした人が多かった。
僕達は荷台を冒険者ギルドの職員に預け、受付に声をかけてからギルマスの部屋に向かった。
「ギルマス。これがリストです。僕とカシマスさん二人で作ったので、特徴通りのものではないかもしれませんが、これで買戻しを始めてください。」
ギルマスは受け取ったリストを手に取り驚いていた。
「こんなにあるなんてな・・・。わかった、出来るだけ高く売ろう。」
そう返事をしてくれたギルマスに、僕とカシマスさんで話し合っていたことを伝えた。
「僕たちは高く売ることだけを考えていません。仮に、誰かの大切な人の形見の品とかであれば、タダとは言いませんが、その人に無理のない値段で売っても構わないです。逆に高圧的に言ってくる人には高くても売らなくていいです。判断は冒険者ギルドにお任せするので、よろしくお願いします。」
そう言って頭を下げた。
「何か考えがあってのことだな。よし、俺に任せておけ。俺の責任でその言葉の通りにしてやる! 商人ギルドには俺が対応する。協力してくれてありがとな。」
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それからはしばらく【希望の家】の拠点でお世話になることになった僕ははカシマスさんと帰路についていた。
「カシマスさん。あの気になった装飾品の持ち主がまだこの街にいたらいいね?」
「そうだねラウール・・・。君が鑑定系のスキルがあることにもびっくりしたけど・・・。形見の品を見分けることが出来るなんてね。私も願うよ・・・。大切な人の元に戻ることを・・・。」
ラウールはカシマスさんには話していた。物を見分けているときに、○○の形見。持ち主△△。そう見える情報を無視できなかった。




