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第三十四話 物騒な散歩の終了

盗賊の拠点を壊滅後、盗賊のリーダーだけを生かし、街へ引き返すことになった。


カシマスは、ロドリゲスとローリーの死体をどうしたいか聞いてきたが、無言で首を振り答えた。


僕は産まれてやっと意識がハッキリした時にだけ見た人を、親とは思えないと思っていた。しかし今目にすると、いろんな感情が渦巻いた。そしてそれは、僕の動きも頭も鈍らせ、盗賊である者を討つことが出来なかった。



そして、自分自身の感情が揺さぶられたことにも困惑している。やはり、産んだだけの人でも、親は親で、特別な感情が残るのか?幸せにしてくれた父様、母様に悪いことをしているようで、気分が晴れない。



そんな状態でも、盗賊の拠点をそのままにして置くことは出来ず、カシマスの言葉で盗賊の拠点は焼き払うことになった。


盗賊の拠点にはどこからか奪ってきたのか価値のある物も大量にあった。それをそのままにしていくわけにはいかず、僕は特別な道具を持っていると説明して、全ての物を順番にアイテムボックスXに入れていった。もちろん偽造の袋に入れていくのだが・・・。



盗品を全て回収し、討伐した証拠となるように盗賊のリーダーを縛り連れてきた。そして「燃えろ」と言う言葉の直後に、空から大量の火の雨を降らせた。拠点を囲んだ壁はそのままにしているので、森が燃えることはないだろう。ある程度盗賊の拠点が燃えたことを確認し、帰路についた。



~~~~~



盗賊を連れているため、移動の速度はゆっくりだ。しかし、日が暮れる前に街につくように速度は調整していた。しばらく無言で進んでいたのだが、カシマスが突然口を開いた。



「私が言う事ではないと思うけど・・・。私はクラン【希望の家】のリーダーをしている。そこには色々な事情を抱えた人が一緒に暮らしている。家族を持っているメンバーは自宅を持っているが、一人で生活してきた者は大体はクランの拠点で一緒に生活をしている。私は、クランのメンバーは家族だと思っている。メンバーの中には親に捨てられた者や売られた者、裏切られた者など様々な人がいる。しかし、私はそんなメンバーが大切だ。そして善良な街の人々が大切だ・・・。大切なものが傷つくことが無いようにすることが、私の一番大切なことだ。」



カシマスは一息つきもう一度話し始めた。



「ラウール君にとって、育ててくれた親は大切な人、それで良いだろう。そして産んでくれた両親、この人がいなければ君はこの世にはいなかった。だから恨んでも・・・、恨んでもいいから一つだけ・・・、この世に産まれさせてくれたことだけは感謝しよう。産まれていなければ、君の大切な人にも出会えなかったんだから。だから君の手で産んでくれた親を殺さなくて良かったんだ。子が親を殺すことは、自分をも否定する行為だから・・・。だから君の両親の死の責任は年長者である私、そして悪者の盗賊に押し付けるんだ。」



そうカシマスは言い、また言葉を発せずに歩き出した。



僕はカシマスさんの言葉を聞いて考えていた。確かに僕を売った最低の親。しかし、この世に誕生させてくれた親。大切な親は育ててくれたミック、ララ。産んだだけの親がロドリゲスとローリー。どんな最低な親でも・・・。



ああそうか・・・。僕がこだわっていたんだ。育ての親と僕が勝手に決めていたんだ。


どちらも結局は、親は親。


ただ大切な人は誰かだけ考えていたら良かったんだ・・・。



~~~~~



スタスデの街の門までたどり着くことが出来た。


「カシマスさん!! 色々ありがとうございます!! おかげで吹っ切れました!! 」


 


「それはよかった。何かあれば年長者を頼ってね。」



「はい!ありがとうございます! それでは盗賊に会ってしまって、盗賊のリーダーを連れてきたことの報告をお願いしますー!!」


そういってラウールは門番に冒険者プレートを見せ、宿に向かい走って行った。



「(しまった! ラウール君が行ってしまった・・。僕一人でギルドマスターに説明するのか・・・)』



走りながらラウールは、カシマスさんに謝るのであった。



~~~~~




そして僕は今・・・冒険者ギルドにいた。



昨日は宿に帰って来て、眠った。熟睡したのか目覚めが爽やかだった。今までの心のつっかえは何だったかのように。もしかしてこれもすくすく育つというスキルのおかげなのかな?


前世より悩んでいる時間が少なくなっている気がする。



そう思い朝食を摂っていると・・・、ギルマスが現れた!!


どうする?


たたかう


じゅもん


にげる


どうぐ



ジャジャジャ!


ラウールは逃げようとした・・・.しかし回り込まれた。



という事で、連行された。



~~~~~



「事情は聞いた。森を散歩中、クマに出会わず盗賊に出会ったんだって? そして薬草の生えている森の中をさまよっていると、廃墟にたどり着いたんだって? さらにその廃墟ではお逃げになればいいのに、盗賊がいたんだって?すたこらさっさっさっの~さ~と逃げれなくて、盗賊のリーダー以外は殺したんだって?」


そう言いながら、パッチリした目で僕を覗き込んできた。まるで、下からメンチを切る不良のようだ・・・。目がパッチリしていて怖くないけど。



「そうなんですよー、さんぽしてただけなのにー、おそわれてー。カシマスさんにー、助けられましたー。さすがー、Sランクー。」


ちょっとわざとらしすぎるか?



「今確認に行かせている。もうすぐ調査に行った者が戻るはずだ。その報告を聞いてから決めるが、廃墟から持ってきた物だけ確認していいか? 通常であれば、回収したラウールとカシマスの物になる。しかし騎士たちとの交渉で有利になる物があれば、今回の件を誤魔化せるかもしれない。」



「たしかに、いいこと言いますねギルマス!さすが! よっギルマス!!」


ちょっとテンションがおかしい。戻さないければ。



「ここに出していいですか?それとも広いところに出しますか?それとも、ピンポイントで怪しいものを出しますか?」



眉をひそめたギルマス。



「怪しいもの?何かあるのか?」



僕は朝目覚めた時から、少しずつ荷物の中を解析さんで確認していた。その中で怪しいタイトルが、【領主と盗賊の怪しい関係関連】フォルダがあった。



「まずは、この手紙・・・。そして、これでしょ、これでしょ、まだまだこれでしょ。」


とフォルダにある物をだしていった。



その中からギルマスはわかりやすいものから確認していく。



・・・・・・



・・・・・・



・・・・・



「これだけあれば十分だ。お前が持っていたから言うが、これは盗賊と領主がつながっていた証拠だ。初めから領主は盗賊を倒す気がないのに討伐隊を組むことを許可していたようだ。そして事前に逃がす手段も考えていた。だからこそ、お前たちが散歩に行ったときはまだ逃げる準備が整っていなかったようだ。二百人以上の討伐隊が廃墟に到着するまで三日程度を考えていたから、予定より四日は早く来られて逃げられなかったのではないかな。」



「たしかに。一日早く出発して、その日のうちについたからね。」



「そして、領主は情報を流す見返りに、貴重なものを受け取っていたようだ。結局は貴族の力争いでなく、ただ欲深かっただけだな。自業自得だ。」



「そうなんですね、その辺は僕には関係ないので・・・。けどこれで【希望の家】にも何も起こりませんか?」


そこを僕は心配していた。



「これから騎士の詰め所に行って、隊長と話してくる。よっぽどのことが無い限りはお前たちに被害はいかん。だから・・・。ギルドでなくてもいから、連絡のつく所にいろ! じゃあ行ってくる。」



そういってギルマスは出かけて行った。



部屋から僕も出て、チルミさんに声をかけて出かけた。



行き先はお世話になった【希望の家】のクラン拠点だ。



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