第二十八話 Bランク依頼の達成?
初日に装備を整え、その日の午後は不足している道具を買った。
そのあと宿に戻り、ゆっくりとした時間を過ごしていた。
次の日僕は、冒険者ギルドにいた。
「おいおい、こんなガキが何しに来た! ここはお前みたいなガキが来るとこじゃない!! 男が あっ、大人が命を削る場所だ!! 冷やかしなら来るんじゃねえ!!」
絡まれた・・・そして、周りの女の人ににらまれたから言い直した・・・。
「おい!聞いてるのか!!」
そうい言いながら男は僕の前に来て凄んでいる。その男は僕を見上げて凄んでいる・・。
目の前の男の子は誰?僕に凄めるくらいすごい冒険者なのか?
王都サーシンでは僕に絡んでくる冒険者がいなくなっていたから新鮮だ。
今僕は百六十五センチ、良くいえば細マッチョ。前世の黒髪ホストみたいな髪型をした地味顔の男の子だ。
そして目の前にいる男の子は、スキンヘット?坊主頭で、光輝いているから、金髪か?
周りの冒険者も苦笑いしていて、そんなキャラなのか?
「どうも。僕はラウールと言います。何か御用ですか?」
と首をかしげて聞き返してみる。
「あ”~名前なんて聞いてねーんだよ!! 早く出て行けって言ってるんだ!!」
僕を見上げながら目の前の男は、ガンをつけて来る。不思議と怖くない。
「出て行けって言うけどここは貴方の家ですか? あっもしかしてギルマスですか! でもギルドマスターの権限でも冒険者ギルドの決まりを破っていない場合は制限出来ないと思いましたけどって、そんな事を知らない貴方はギルマスではない。じゃあ何の権限があってそんな事を言うのでしょう?」
と返してみた。
「「「「ぷっ・・・、バァー~~!!!」」」」
『返されてやがる・・!!ぷっぷっ~!!!』
目の前の男のほっぺが赤くなってきた。んっ!ちょっと涙目になってきた。
「そういうことで!!」
と僕はその隙に受付の空いているところに滑り込んだ。
「今日のご用件は?」
目の前の受付さんは、一瞬止まり、声を絞り出した。目の前の受付さんは僕よりお姉さんだ。
今のやり取りも見ていたようだ。ちょっと笑いそうな顔をしている。
「この街に少し留まると思っているんですけど、何かちょうどいい依頼はないですか?」
これはアリサさんに聞いたんだけど、Bランクまで行くと、冒険者ギルドでいい依頼を紹介してくれるみたいだ。
高ランクになると、依頼票を貼っていても見ていないものが出てきたり、高ランク者でないと出来ない依頼を貼り出さずに指名依頼として抱えることがあるみたいだ。
指名依頼とは、ギルドが高ランクで、適性がある者に依頼するものだ。
指名依頼でも、名指しで依頼された場合はその人物に依頼を斡旋するものとなる。
だからこそ、色々な依頼をして世界を見てみたい僕は、珍しい依頼が欲しいんだ。
「え~と、依頼でしたら、依頼票を見てきて選んでください。さすがに、全員に適した依頼を私たちが選ぶことはできませんから。」
そこで僕は冒険者プレートを見せていないこと気づき、受付さんに冒険者プレートを差し出した。
差し出された冒険者プレートを受付さんが謎ボックスに差し込んだ。
「っ!! 失礼しましたラウール様。・・・この討伐数、達成度・・。失礼ですが、仲間の方たちはどちらに?」
僕の傷口が開いた・・・。仲間なんていない・・。友達は、かろうじてカイン達?
「ソロ・・。」
「えっ!!ソロでこんなに!! あなたの年でソロでBランクなんてありえないでしょ!!」
周りがざわついた
「あの子がBランクだって」
「嘘でしょ?」
「でもプレートは嘘の情報は載らないぜ」
「誰か側にいたんでしょ」
「あ~確かに、とどめだけ刺せばいいからな」
「不正不正??」
「不正でないけど、ずる??」
「え~!自分の力でなくていいの~?」
「貴族や金持ちは、そういうこともするからな~」
「え~あの子供だろ?貴族なの?お金持ちなの?」
「ずるいぜ!! 俺たちは自分の命を削って依頼をこなしてるのに!!」
なんか周りが好き勝手なことを言い出している。そして受付さん・・・。個人の情報を聞こえるよう言ったらだめでしょ・・・。
『静かにしろ!!』
と大きな声を出しながら階段を下りてきたスキンヘットがいる。
なんだこの男は、どこかでみたような・・・。なんか、王都サーシンのギルマスに似ているような・・・。
「何の騒ぎだ!!」
「マスター! この子がBランク表示の冒険者プレートを出してきたのです。実力が伴っているかわからないので、話をしていました。」
っていきなり適当!! そもそもいきなりランクを話してしまったのは受付さんだろ・・。
「え~と、冒険者プレートを出したらいきなりありえないだろと言われて、周りの冒険者のも聞こえる声で・・・。そしたら周りの冒険者も何か言いだして・・。って僕は何も悪いことしてないけど・・・」
そう説明した。
「おい!チルミ! 人の情報を聞こえる声で話したのか?」
・・・
・・・
「はい・・・、つい声に出してしまいました・・・。」
俯いてしまい、小さな声で答えた。
「は~・・・だめだろ冒険者ギルドとして・・。すまん少年! これは俺の冒険者ギルドの過ちだ、すまん!!」
スキンヘットの男は階段を降りたところで、丁寧に頭を下げた。
「い~、いえいえ、そこまで頭を下げなくても・・・。ちょっと受付さんにはイラっとしましたけど、謝罪を受け入れます。」
そう返事をして、スキンヘットをじっと見つめた。
・・・・・・
・・・・・・
「・・もしかして、お前はラウールって名前か?」
急に初対面の人から名前を言われてびっくりした。
「そうです。ラウールと言います。もうみんな聞こえてるから言いますけど、友達もいないソロのBランクです!! 何かソロで問題でも!?」
とちょっと威圧を飛ばしてしまった。
「・・・!いや、問題ない。ただ、兄から連絡を受けていてな。ラウールと言う貴重な男が旅に出たと。そいつの見た目を教えておくから、何かあったらよろしく頼むと。そして、もうこんな状態だから言うが・・・、へたに周りが絡むと、問題が拡大すると・・・『漆黒の翼』と。」
周りの冒険者が騒ぎ出す。
「漆黒の翼!! あの自分に絡むものは容赦なく・・・。睨むものなら目をつぶし、足をかけようとするなら足を折り。土下座をすれば頭を踏みつけ、長い髪をなびかせていたら毛根を全滅させる・・・。あの噂の・・・。」
「俺も聞いたことがある・・・。あいつが怒ってるところいると・・・、何もしていないやつまで被害が来る・・」
「あ~あの噂の・・・。一人がイラつかせることをすると、その場にいた全員に報復が来る・・・。止めないことが連帯責任だと・・・・。逃げていいかな?」
あ~・・・せっかく王都サーシンだと普通に接してもらえたのに・・。なぜここまで来て黒歴史・・・。すべてこの受付さんのせい???
ブア!!
とつい魔力が漏れ出してしまった。
っっっっ!!!
「すまん! お前に依頼したい!! 依頼は俺たちを許すことだ!! 頼む、受けてくれ~!!」
そういうと、ざ・どげざをしたギルマスの姿が・・・。
やってしまった・・・。僕の記念するべき旅が・・・・。後悔しながらも、依頼を受理し、達成報告をするラウールであった。
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その時のギルマスは願った・・・。
兄から珍しく連絡がきた。なんでも、兄のギルドの有望冒険者が旅に出たという。
兄が有望と言うのは珍しいことだ。
兄が言う有望な奴はまだ十二歳!!
Bランクになっているという。Bランク冒険者は一つの到達点だ。強制依頼もあり、冒険者としてやっていく覚悟が必要だ。危険な状況でも、自分を顧みず、依頼に向かっていく。
その覚悟がない奴はCランクで支援を受けずに過ごしている。
Cランクが悪いわけではない。Cランクまで来た冒険者は、犯罪者を殺す経験を持っている。あの感覚は魔物とはまた違う。人間という同種を殺す・・・。
魔物でも同種を殺すことは稀である。それはやはり特別なことである。
それを若干十二歳で・・。
それもそのあと更にランクアップ試験を受けてランクを上げている。
そんな人物は天才か、紙一重か?
そのあとの兄のメッセージも鳥肌が立つ。
姿で判断するべからず
あなどると自分の身の危険がある
漆黒の翼が見える前に
さわぎを収めることが
平和へのカギ
ギルドが騒がしい、何事だ?
俺は一階に向かった。
そこで目にしたものは、兄が言っていた特徴を持つものが困惑している場面だった。
あの兄があせる事・・・元Sランク冒険者の兄・・・。目の前にかなわない敵が現れた時にも冷静に、全員が命を保ったまま退却する手段を考える事ができる兄・・・。
その兄が警告したこと。
おれは必死に謝罪した。
なぜか依頼と言ってしまった。
しかしそれが功を奏し、依頼を受けてくれ、矛を収めてくれた。
ありがたい。
これは・・・Bランク依頼だな・・・。
騒ぎはあまり起こさないでくれよ
ラウール・・・お願いします・・・。




