第二十七話 武器屋での出会い
「おはよー!」
宿屋の見習いエミリに挨拶をしてから、朝食を摂る。
今日は冒険者ギルドによらず、街の中を歩いてみようと思っている。そして良い物があれば買い、武器や防具も新調したいと考えている。
僕の装備はBランク冒険者には見えない粗末なものだ。王都サーシンであれば、顔見知りも多く、僕の実力は知られている。
だがこれからは長期間同じところには留まらないと思っている。そうすると、僕もできるだけ冒険者ギルドでの諍いをかけるために、ランクにあった装備品を身に着けたほうがいいと考えていた。
極端に言えば魔法があるから普段の戦闘は装備が粗末でも問題ないのだが・・・。
だが絡んでくるような人は見た目で舐めてかかる。魔法の実力は目に見えない人にはわからない。
だから手っとり早く見た目を整えようと決心し、おかみさんに武器や防具が買えるところはないか聞いてみた。
「ん~ここあたりに行くと、お店が並んでるので見てみてはどうですか?」
と地図を指さしながら教えてくれた。
この街で評判が良いとか何か情報はないかな?
「おすすめの店はありますか?」
「今まで宿泊している冒険者の皆さんは、それぞれ違うお店をひいきにしているみたいなので・・・。入ってみて決めたほうが良いかと思いますよ。鍛冶師との相性もあると思いますから。」
へー。
「そういうものなんですね?僕は今回旅に出るまでは、両親と一緒に武器を選んでいたので・・。色々回ってみます!」
そう宣言し宿屋を出た。
おかみさんに教えてもらった方向に歩いていくとお店の並ぶ区間に出た。
この先は僕の勘を頼りに店を選んでみよう。最悪外れたら外れたで僕の運命だ。
運命とは大げさだけど、長く使えて、愛着の持てる武器が欲しいな~。
防具も長く使って味が出る服が前世から好きだったから、多少高くても長く使えるものがいいな~。
そう考えながら、お店選びを始めた。色々な店に入るのは好まないので・・・「ここ!」と一人でその場で一回転し指差した。
回転して指差すなんてどこの変人だよ一人で・・・・。
自分のノリでの行動を後悔した。
【武器防具の店 ギアイヤ】
指差した店に入るが誰もいない・・。
目の前には武器や防具が散乱してる・・・。
僕以外にはだれもいない・・・。
(入る店を間違ったかな・・。けど、あのポーズを見られてると思うと、もう少し外には出たくないな~)
そう思いながら、目の前の武器や防具を見ていく。
よく見てみると、散乱といっていい状況だけど、物が重なることもなく、レイアウトがバラバラなだけだった。よくあるお店のように、商品をいかに良く見せるかというものではなく、ただ並べているだけな印象だ。
解析さんを使ってみるかと思ったが、目の前にある刀?に目を奪われた。テンプレのようだが、やはり元日本人。刀を見ると心が引かれる。そして、この刀は・・・・。不思議な感覚を受ける。お店の人がいないから、手に取ってみるか、ためらってると後ろから声がかかる。
「おい!!お前は誰だ?」
振り返ってみると、十二歳の僕と同じ目線にひげもじゃの男が立っていた。
「おじさん誰?」
つい口に出してしまった。しかしそれを聞いたおじさんは予想通りな答えを返して寄越した。
「この店の店主じゃ。お客さんか?」
やはりこの展開は店主。そして、王道のドワーフか?
色々な種族を見たことはあったが、ドワーフは初めてだった。
「何か良い武器防具がないか探しているんだよ!」
僕の答えを聞くとドワーフは手に持った酒瓶を接客を開始した。
「いらっしゃい!ひさしぶりの客じゃ! よく見て行ってくれ俺たち兄弟の傑作たちを!!」
普通の店員と変わらないんじゃないか? ドワーフで鍛冶師だったら、お前の腕は俺の武器を扱えるのか~。だったらこれを振ってみるのだ!!
とかじゃないのか!
普通で駄目ではないんだけど、不満だ。
「見せてもらいます・・・。だけど既に気になる武器があって。この刀を持ってみていいですか。」
ドワーフは不思議そうな顔をしている。
「刀? その目の前にある剣か? 刀とは聞いたことがないが、それはワシの打った剣じゃ。切る、突くに特化し、今までの剣じゃ面白くない。レイピアじゃ突くだけ。ワシはまだ何かできると考えてた末に出来た剣じゃ。誰も見向きもしないがな。」
独自開発か、やるね。
「この武器を使ってみたいです。僕は冒険者で、戦闘スタイルが力でなくて技タイプなので、叩き切るには無理があります。だったら、滑らせて切ることに特化すればいいとずっと思っていました。」
「だったら試し振りをしてみろ。良ければ買っていけ。」
買って行けって、どっちが客?
けど、お言葉に甘えて、ちょっと切ってみたいな。
「どこで試したらいいですか?」
とドワーフに聞いてみた。
「こっちだ、裏に空き地がある。そこに、木でも突き刺してやる。」
そう言うとドワーフは案内してくれた。そして、本当に何もないところに、前世のバットくらいの木を突き刺してくれた。
「これを切ってみろ。」
とドワーフは木を指さした。
僕は少し考え、前世の時代劇を思い出し、適当に構え、振りぬいてみた。
ヒュッ!!!
振り抜いた後の木を見てみると、何も起きていなかった。切ったと思ったんだけど・・・。
そう考えていると、ふいに木がずれた。
あまりに切れ味が良すぎて・・・。
それを見たドワーフ誉めてくれた。
「やるじゃねーか。俺の腕がいいのは当然だが、お客さんは子供だろ? その年でそこまで上手く切れりゃー高ランク冒険者にもなれるだろ! それでどうだ、気に入ったなら買うか?」
「ほしいです。これを下さい!」
そう告げ、店の方に戻っていく。店の戻ると、ドワーフがすでに立っていた・・・・。「分身??」
その店はドワーフの双子が装備品を作り売っている店だった。
【武器防具の店 ギアイヤ】
イヤード:ドワーフ:五十歳:弟
ギアード:ドワーフ:五十歳:兄
兄弟
そう自己紹介された。
その兄弟と話し合い、武器と防具を今日は手に入れた。
武器:刀:ミスリル+鋼鉄:名 月光:白銀の刀身 鍔は西洋風 持ち手 縄を巻いている。
防具;丈夫な服(リザードマンの皮:黒に染色:上下)
丈夫なコート(リザードンの皮:紺に染色:ひざ下くらいまでの丈:ボタンで胸元まで止まる:学ランのような襟)
防具はまだ成長期だからほどほどにした。そして僕は今日、中二装備を手に入れた!!




