第二十五話 次の街へ移動
僕は歩きながら、南の小さな町を目指している。
どこから行くか迷っていたけど、まずは自分の産まれた街は確認しておきたい。
スタスデ街は王都サーシンから南に進んで行くとある。その道中は町や村を通り、馬車を使うと1か月かからずに到着すると思う。
だからこそ産みの親が僕を害しないか心配し街を移動するときにかけた時間は、いかに両親が僕を気遣いゆっくり移動していたかがわかる。だだ移動するだけならこんなに短い時間で移動できたのだ。
スタスデの街に着いてからは、一度旅に必要なものを補充して次の目的地に進みたい。
それに何か依頼も受けてみたいと思っている。僕も冒険者として活動してきて、あまりお金も使わなかったから貯蓄もある。
無理はしないけど、色々なものを見るためにはただ旅をして場所だけ見て回っても、一部の世界しか見えないと思う。だからこそ、そこでしかない依頼や珍しい依頼、何か興味が引かれる依頼は受けながら旅をしたいと考えている。
スタスデの街で過ごした後は、東に行くと国境があり、フイエウ共和国に行ってみようと思っている。今は王国だけど、隣は共和国だ。統治の仕組みも違うだろうから街の雰囲気も王国とは違うだろう。考えるだけでも楽しくなってくる。
そんな大雑把な計画を一人でたてながら野営をして休み、朝が来たら移動し少しすると小さな町についた。
ここでは一泊宿泊し、移動方法を馬車に変更する。
今回は冒険者とは名乗らず、一般のお客さんとして移動したい。せっかくの旅の始まりは、ゆっくりと景色を眺めながら進みたいと考えたからだ。
移動馬車は、荷物が少ないこともあり、盗賊からは狙われにくい。魔物は時々街道に現れる。だけど護衛もついているし、この辺の地域は魔物も少ないので移動の危険性も少ない。
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町から村をいくつかを過ぎたころ、スタスデの街が近づいてきた。僕が乗っている馬車の他にも、色々な種類の馬車を見かけるようになる。
商人が馬車で移動していたり、一般人と思われる男が歩いて移動していたり、これから魔物を狩るのか武器を片手に移動している冒険者らしき人等とすれ違うようになった。
更にそのまま進みスタスデの街がすぐそこに見えるようになり、ふいに産みの親のことを考えてしまった。
母様は「もし出会っても相手はわからないと思う。けれどももし気づかれて声をかけられても、お金やお金になる物は絶対に渡さないように」と言われている。
お金になると思えば、産みの親があの手この手で寄生してこようとすることを心配していた。僕を売ることに罪悪感の欠片もない産みの親にくれてやるお金は持ち合わせていない。
出来るならば会わない、ばれないように行動しようと考えている。もし、僕や両親の邪魔をしようとするならば、容赦はしない気持ちでいる。
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スタスデの街の門が近づき、僕たちは馬車から降ろされ入場待ちの列に並んだ。
一人ひとり簡単な質問をされてから入ることになる。もし指名手配されている人物であれば、そこで取り押さえられる。僕たちのような冒険者は、プレートを見せることで、自分の事を証明する。それは他のギルドも一緒で、プレートは身分証明になる。
王都サーシンで顔見知りになり冗談まで言い合うようになった門番のスコットさんでさえ、毎回僕はプレートを提示させられていた。
顔を知っているからと通すのは、門番のすることではないのだ。
貴族用の入り口も別にある。一般人と一緒に並ぶとトラブルが起きる心配がある。
この世界はでは、特権階級と庶民は別にしたほうが良いのだ。特権階級が難癖をつけてくる場合もある。どんな行動をしても罰せられる事もあるようだから、僕達のような一般人を守るためでもあるのだ。
そんな事を考えていると僕の順番が来た。
「身分を証明するものを見せてください。」
僕は準備していた冒険者プレートを門番さんに見せこの街に来た目的も告げる。
「ラウール12歳。旅と冒険者ギルドで依頼を受けるために来ました。」
子供でも冒険者であれば依頼を求めて移動するのは不自然ではない。旅も子供がしていないこともないので問題ない目的だと思う。
「へ~12歳で一人旅ね。このプレートも冒険者ギルドの本物だね。通ってよし。」
門番さんが通してくれた。その門番さんの横を過ぎようとしたとき、小声で僕に声をかけてきた。
「(Bランクってやるじゃないか。がんばれよ。)」
これには僕も嬉しかった。
ちょっと言いすぎになるかもしれないが、一人の人間として認められた気分だ。
「ありがとう!!」
気持ちよくスタスデの街に入っていくことが出来た。
情報を漏らさないため冒険者ランクも声を出さず、プロだね。強面の男の人だけど、良い人だ。
よし、まずは冒険者ギルドを探そう。そこでおすすめの宿を教えてもらって、今日は休もう。




