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第二十二話 サーシンまでの道 復路

浜辺を出発した一同は、浜辺に向かう時よりも打ち解けていた。



あの僕が起こした騒動があったからか、みんなの距離が縮まり連携も上手くいっていた。今回は僕も夜の見張りをやらせてもらえた。

初めてなのでビルンさんが一緒に起きてくれて、見張りの時の注意点を教えてくれた。


今までは父様が教えてくれたことしか知らなかった僕はは、同じランクとはいえ、色々な経験をしているビルンさんの言葉に感心していた。


実際にこうやって話していると、細かなところまで気にしていることがよくわかる。パーティーメンバーの特徴をとらえて、こういったことを注意しているから、もしパーティーを組んだらお前もそういう気配りをするんだぞ、と。



そして夜には自分たちで対処できる魔物や動物しか出てこず、みんなを起こすことはなかった。



順調に移動出来、街までもうすぐの所まで戻ってきた。僕とビルンは馬車の中で休んでいる。


ビルンさんは慣れたもので、いびきをかいて眠っていた。こういう姿はさすが旅に慣れていると感じる。どこでも寝られることも冒険者には必要なことなのだとその姿で教えられた。



パかパカパカ


パかパカパカ


パかパかパか


・・・・


・・・・


・・・・



『敵襲ーー!!』



この旅で初めての言葉!! 魔物が来ても起きているみんなで対処できていたのに、何事だ?


ビルンさんは飛び起き、もう外に出て行った。僕も遅れながらも馬車から降りていく。



「は~はは~! おいお前ら! 俺たちが全部もらうからな!!」



と叫びながら、馬車に汚い男が駆け寄ってきた。空からは矢も飛んできており、すでに戦闘態勢だ!



・・・・・・・



けどここで少し僕の心の中で(ここは命が惜しかったら金は置いていけ! 女は傷つけるな! 男は殺してしまえー!)

だろ~!と思ってしまったのは・・・内緒だ。



「くっ! ここまで来て盗賊かっ! デーブンはロドリコさんを守れー! ニックは近くに来た盗賊を牽制、後ろからコーフットは隙をつけ~! クーフットは弓を放ちながら、まずは敵を分断! 俺は近寄ってきた敵から対処する!」


とフルートさんがリーダーらしく声を出した。



「ビルン!どうする!!」


とハーシンさんが叫んだ。



「ハーシンは盾で弓を防げ! 特に馬には当てさせるな! ラエラはロドリコさんの側に待機、負傷した者はすぐに回復を! ビビアンはフルートと並び対応を!! ラウール・・・、お前は適当に攻撃しろ~! 味方に当てるなよ!?」



既に魔素に干渉する行動は済んでおり、何時でも動き出せた。


「はいわかりましたっ! 落とし穴!!」



ズドン!!!


??????



弓を引き、構えていた盗賊以外が消えた。弓持ちの盗賊もポカーンとしている



目の前に大きな穴を開けた。



その穴をフルートがのぞき込んでいる。そこには既に盗賊たちが倒れているよ。

盗賊たちも何が何だかわからずに周りを見渡している・・・。



ハイハイ、次!

「拘束!!」



弓持ちの盗賊が動けなくなる。足が土の輪?で固定されている。その姿を見てフルートさんが僕に話しかけようとしているが・・・。



「凍れ!!」



盗賊の弓が盗賊の腕ごと凍った。



何が起きているかわからない混乱したフルートさんが僕にに声をかけようとしたが、もうそこから僕は移動している。



穴の前に立ち盗賊だろう人達に声をかける。



「ねー降参する?」



すると盗賊達は穴の底から罵声を浴びせてくる。


「あ”-! 降参するかだと~! ここから出しやがれ!!」

「このクソガキが! 何をした!」

「バーカ! バーカ!」


バーカ? 子供かっ!


「そんなことを言われても出すわけないでしょっ! アナタタチハウバオウトシタ。ボクハソレヲトメタ。OKぼーく?」



「何を言ってるんだ!? 出しやがれ!!」



「は~・・・。」

僕は脱力しながらも魔力を練り上げた・・・



「うっ!!  なんだ? この・・。う・う・・ごっ!!」


僕は盗賊達が落ちている穴に向けて威圧するように魔力を向けた。魔力を向けられた盗賊はプルプルと震えている。



がっ!!

「ん!?」


急に体が飛ばされた?? 僕は自分が今何が起きてるかわからない??  


混乱した僕に手を凍らせた盗賊が襲いかかってきて、その氷で僕を叩こうとしている・・・。


反射的に剣を振った。


すると魔物を切り裂いたときと同じように、肉、骨を切ったような感触が剣を通し伝わってきた。



スパーン!! 



目の前で盗賊の首が飛んだ・・・。







殺してしまった???



切り離された体は、そのまま僕に倒れ掛かってきた。



「おい!大丈夫か!!」盗賊の体が僕にのしかかる前に、ビルンさんが盗賊の体を蹴り飛ばしてくれた。



「僕・・・人を殺した?」

頭が・・・、考えが・・・。



「おい!しっかりしろ! 盗賊に殺されそうになったんだ!! 逆に殺さないとお前が殺されるぞラウール!! 情けをかけるな!!」



・・・・・・・・・


・・・・・・・



そこからの記憶が定かでない。何か聞かれて答えてた気がするけど、頭に入ってこない・・・。


人を殺した??


この世界に生まれ変わり冒険者となり、いつかは人を殺さないといけないかもしれないと、何となく思っていた。

けど、こんな・・・、覚悟もないときに不意にやってくるなんて・・・。



~~~~~



「ラウールは人を殺したことが無かったんだな・・・。いくらDランクとはいえ、まだまだ子供だ。これで心が折れなきゃいいが。もし心が折れそうなら俺が力になる。あいつは俺の友達だからな。」



「そうね、ビルンが言いたいことはわかる。私も短い時間だけどラウール君のあの姿は好きだもの。」



「ラエラ、まずはラウールと一緒に馬車に乗って居てくれ。俺とフルートで穴の中の盗賊は処理しておくから。一人だけは連れて行く・・・。」



「わかったわ、お願いビルン。」



あの時の威圧で、ラウールの魔力が穴に向き弓持ちの盗賊の魔法の拘束が取れなければ・・・。


厳しいことを言うなら、油断だな・・・。



~~~~~



「まったく、大変な旅でしたね。短い時間でこんなに色々なことがあるなんて。これだから商人はやめられない。ただラウール君は心配ですね。これに負けずに冒険者を続けてほしいですね・・。」



「ロドリコさん、もうすぐ街につきますよ。」



「わかりましたよフルートさん。さ~、一稼ぎしましょうか!」




~~~~~



ビルンはラウールが早く立ち直って欲しいと願う。




ラウールが落ち込んでいる。


俺はもやもやしている。


俺はあいつに殺されかけた。だがそれは俺が悪かった。


俺は親にいつも邪魔にされていた。何かイライラしていると感じた瞬間、俺は吹っ飛んでいた。


親は家に帰って来ては金。

外に行くときは金。金金金金・・。


金にしか興味がなかった。



俺が六歳の誕生日。家でじっとして待っていた。誕生日と言うものがあることは知っていた。友達の家では誕生日に、「自分達のところに産まれてきてありがとう」と普段よりいい食べ物を食べて、笑って過ごしていると聞いていた。


俺も誕生日になり、家でじっとしていながら、少し期待していた。



(誕生日おめでとうビルン! 俺達のところに来てくれてありがとう!)



どんなにうれしいだろう・・・。



しかし現実は・・・



「ビルン、一緒に来い! いいところに連れて行ってやる!」



・・・・・・


・・・・・・



親父の後ろをついていくと、一軒の家にたどり着いた。



「おい!いるか?」


親父が、誰もいないところに叫んでた。



「うるせーよ・・・、そんな大声を出さなくても聞こえてるから・・・。」



機嫌の悪いときの親父のような臭い・・・。家に帰ってくる親父と同じ臭い・・・。



「こいつはいくらになる?」


俺を見ずに親指だけで俺を指差す。



「あ”~ガキか・・・、こいつか?    金にならねーな。何ができるこいつは?」


この男はゴミでも見るような視線を俺に向けてくる。



「おい! ビルン!荷物を運ぶくらいできるんだろうな! お前をここまで大きくするに、いくらかかってると思ってる!!」



親父が何か言ってる。


俺は何ができる?


この痩せ細った貧弱な体で何ができる?


できる事?


・・・・・



「おい!こいつは最低ランクだ! それでいいなら買ってやる!」



・・・



親父は声を出さない。



・・・



「・・・わかった。チッ穀潰しが・・・。」


最後の言葉は小さな声で言ったんだろうが聞こえてるぞクソ親父!



「おしっ、じゃあこれ|||」



「「動くな!!!」」



~~~~~



そこからはよく覚えていないが、俺は同じような年のガキと一緒にいた。


こいつらも親に売られようとしていたんだと。



いつの間にかつるんでた


いつの間にか孤児院を出てた


いつの間にか一緒に旅をしていた


いつの間にか俺はこいつらを大切と思った


いつの間にか・・・



ラウール!お前は親が馬鹿にされて、俺を殺そうとするやつだ!


今、お前は悔やんでるだろう


けど俺はお前を尊敬してる!


親に誇りを持てるお前を



だから・・・。負けるな・・・。負けるな・・・。



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