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第二話 神との出会い

どこからか声が聞こえたような気がする。

僕は今唸っているのだろう。


戻って来た体が感じるのは「固い・・・寝にくい・・・」そんな感触だった。

決して良い布団で寝ていたわけでもないが、仮眠するための布団と比べても硬い。


それに、いつもであれば

『おい!起きろ! 俺が呼んでるぞ! 』

そう言う先輩の声で起こされていた。休憩時間が終わる前に・・・。

そう聞こえると・・・、僕は反射的に答えてしまう・・・。


「はい! すいません! 今いきます~!」


そんなやり取りが続いていた。

体にはそのリズムが刻み込まれ、まるでパブロフの犬状態だった。

寝る、起こされる、ケアをする、残りの少ない時間で寝る、起きる...。


しかし今日は寝た気がする。

硬い感触は別にしても熟睡したときと同じくらいの目覚めだ。


そう考えていたが、ふと今の状況を顧みた。


・・・・・


物音は...、しないな。

場所は...、見たことのない場所だな。職場でも家でもない。

風景? 真っ白だ。


・・・・


ん~・・・、今日は休みだっけ?

昼まで寝て、夜勤の準備をして仕事に来た。

職場では普段通りご飯を食べさせて、排泄介助をして、利用者が眠るのを見守っていた。

それで遅いけど仮眠をとって...、「あっ! 苦しくなったから先輩をどうにか起こそうとした!」

だけど、こんな時にも先輩は眠っていたのか、来てくれないまま意識がなくなったんだった。


・・・・・・


この場所はどこだろう?

職場であれば常にざわついていて人の気配が途切れることがない。

病院に運ばれたのであればもっとざわついているだろう。

自宅でも壁の薄いアパート、人の気配が常にある。


ん~考えても考えても普段の自分には当てはまらない環境にいる。


普段なら寝るために家に帰り、仕事でも常に人の気配がある日常。

こんなに人の気配を感じないのはいつ以来だ?

寝ぼけてるのか? ブラックな環境でとうとう僕の心も...。


それはまた考えるとしても、体はどうだろう?

寝た姿勢のまま手足を動かしてみる。


うん、手足は動くな。

頭も動くし、体を起こしてみると体は普段通り動くことが確認できた。


だけど理解は追いつかない。

どうなっているか確認した体には外傷もなく、一つ変なところが全裸だったところだ。

周りに人がいないことは幸いだが、これは恥ずかしい。

どこかわからない広い空間で全裸とは...。


そんなとき、頭のなかに声が聞こえてきた。

いくら眠ることのできない生活が続いても幻聴が聞こえたことはなかった。

だったらこの声は何?


『ちょっと聞いてくれるかな? 私の声は聞こえているかな?』


ん~、また何かが聞こえる...。


『聞こえてるよね? 私の声はあなたに届いているよね?』


ん~、やっぱり初めての経験だけどこれは幻聴かな。

流石の僕の心も疲労で壊れてしまったようだ。

そんな時に僕の知識は寝ることが大切だと教えてくれる。


「よし、寝よう。寝て起きたらこの状態も治るかもしれない。さっき体を起こしたときに手もつねってみたけど痛くもなかったし、これは夢だ。」


・・・・

・・・・・


『って! おーい! 聞こえてるだろ!! もっと違う感想を思ってくれ!!』


・・・・


僕はもう寝ると決めたんだ。

僕のこの寝ると言う鉄の意志を崩すのは難しいぞ幻聴よ。



『ちょっと、一人で完結しないで反応してくださいよ~。私のこの声は幻聴じゃあないよ!!』



・・・・


『肉体のない者よ。』


ん、肉体のない者?

体は見えるけどな?


『魂にかりそめの姿を映し出された者よ。』


かりそめの体?

魂?

この痛くない体は夢ではなく、ただ見えて触れているように感じるだけ?



『ようやく気づいてくれたか死者よ。お前は現世を終えた。肉体を持たずあの世とこの世の中間に位置する亡きものだ。ようやく私の声に反応を示してくれたな。』


僕は死んだ...。

あの世とこの世の狭間?

死者?

死?

死んだ?





えー~~~~~~!?



「僕は死んだの? んっ・・・え~!! だって僕は今まで仕事をしていたんだよ。それはちょっと苦しいと思ったらここにいたけど、死ぬ? 死ぬってもっと苦しいんじゃあないの? 苦しんだ後フアっと感じただけだよ!」


急に死んだと言われても僕の理解がまだ及んでいない。

混乱したこの状態には何も声が届くこともなかった。


しばらく僕の頭の中には産まれた時から死ぬまでの様子がダイジェスト放送されたように流れていた。

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