第十九話 浜辺までの道 往路
サーシンを出て馬車の周りを僕達冒険者が取り囲み、護衛している。早ければ二日で浜辺につく。道はほとんど真っすぐで、少し細いが道があり、草に囲まれ、木々が生い茂っているのはどこの街道も一緒だった。
実はこの世界に来て海は初めて見るので興奮もしている。この世界の海はどんな感じなのか? まだロドリコさんにも何も聞かず、自分の目で見てから色々質問してみたいと思っている。
護衛は夜に一人は起きていなければいけないため、日中に二人は馬車の中で休み、他のメンバーだけで護衛している。
僕だけソロで子供なので、夜は休んで良いと言われた。明るいうちは馬車に乗ることなく、常に徒歩移動。そして、連携が取れないという事で、しんがり、悪く言えば「勝手についてこい」状態だ。
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道中では時々ゴブリンが三匹程度の集団で何度か襲ってくるくらいで、【破壊の斧】の大斧使いのビルンさんが頭をかち割って圧倒している。時々突っ込んで来るゴブリンも、危なげなくハーシンさんが盾を使い防いでいる。
【放浪の羊】のメンバーも負けておらず、ニックさんが素早くゴブリンが隠れているところを察知し、短剣を構えて切りつけ、コーフットさんが槍で突くという連携で圧倒していた。
辺りがだんだん暗くなってきたところで、ロドリコさんが「もう少ししたら野営に適したところが以前はありました。そこまで行ったら今日は休みましょう。」と声をかけてきた。
道中のお昼ご飯は保存食を歩きながら食べていた。ロドリコさんが僕にも配ってくれたが、一番後ろで見えないのをよいことに、母様が作ってくれた食事を食べてすませた。
目的地につき、テントを渡された。設営は父様と依頼をしていた時に覚えていたので、すぐに済ますことが出来た。僕には1人用のテントが割り振られ、ちょっと安心した。
夕食はロドリコさんが鍋を作ってくれた。みんなで鍋を囲みつつ、僕も少しは話をしていた。
普段は剣と火の魔法で戦っている事。今日は一匹も倒せてないので、明日は前に出たい事。将来は冒険者として旅に出て、色々なところを見て回りたいことを話をする。大斧使いのビルンさん以外は、相槌を打ったり、からかったり、フルートさんは「旅はいいものだよ~」と色々な話を聞かせてくれた。
夕食を食べた後は解散し、各自のテントに入り、見張りのメンバー以外は休むことになった。
今日はなれない環境で過ごし歩き疲れたせいか、すぐに眠りにつくことが出来た。
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「おはようございます!」
「「おはよう!」」
全員流石に慣れている。起きているメンバーはもう今日の準備を始めていた。
「みなさんおはようございます。朝食が済んだら出発します。今は順調に進んでいるので、おそらく今日中に浜辺につくと思います。今日もよろしくお願いします。」
朝食を食べ、早速馬車が進みだした。今日は僕も前に出してもらっている。昨日は後ろから来る敵もなく、僕だけ歩いているだけだった。少しは実力を見せておきたい気持ちもあり、出発前にお願いしていたところだ。
「本当に大丈夫なんだね?ラウール君が攻撃するまでは、僕たちは手を出さないよ?」
フルートさんは心配そうに聞いてきたが、僕は胸をたたいて
「大丈夫です!誰の手も借りないくらい頑張ります!!(たぶん一撃だしね)」
今日はビルンさんが馬車の中で休む番だ。すこし苦手だから助かった。
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浜辺に向かい進んでいる。時々気配を察知し、火の魔法でゴブリンを一掃している。もちろん草や木を燃やすなんてことはない。ゴブリンの眉間を狙い、火を圧縮し、小さな火を打ち出す。その火はゴブリンの眉間を打ち抜いたと同時に霧散する。僕の魔素操作では楽勝な方法だ。
「そこ!!」 バコン!
「そこ!!」 ドスン!
「はー!」 ズシン!!
ウサギがいる、鳥がいる、イノシシがいる!!
動物を見つけると走り近づき、剣を一閃!! スパーァ!
「これでご飯のお肉も多くなりますね!! ってそこ!!」
ズズズッ!
小さな火を飛ばし、時に猛スピードで移動し切りつけ、雑魚無双状態だ!
これでちょっとは見直せたかな~。そう思って雑魚を倒し振り替えるとフルートさんはポカーンと僕をを見ていた。
(おいおいおい、これは夢か?僕はどこかで寝ているのか?なんだあの魔法。初級魔法みたいな大きさの火だけど一撃・・・。おい、あのスピード!僕より早い・・・。ってなんでいるのに気づく?? 何さわやかな顔をしてるの!? 何者?)
戦闘を見ながらフルートは心の中で叫んでいた。
そんな心の中まで知ることは出来ないので、浜辺につくまで変わらず無双したラウールであった。
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「お疲れ様です。おかげさまで浜に予定通りつきました。道中の事は・・・、私もびっくりしましたが、まずは食べて休んでください。明日から三日ほどは私が貝殻を採取しています。見晴らしがいい所で、敵にはすぐ気づきますが、囲まれやすいとも言えますので、よろしくお願いします。」
明日やりたいことを事を考えながら、僕はテントを張り始めた。
「貝殻採取の邪魔をしないように海のことも聞いてみたいな~。」
その前に・・・質問攻めにあう事を僕は予想できていなかった。




