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第百五十話 捕らえられない黒猫


ソフィアは冒険者ギルドに依頼の達成報告に来た。

周りには僕達黒猫がいる。


今回は魔物の素材採取の依頼を受けていた。


「シトカさん。これが今回の依頼の素材です。お確かめください」


目の前でシトカが素材の確認をしている。そしてシトカが一人で頷き、素材をテーブルに置く。


「はい、確認しました。それではソフィアさんの冒険者プレートをお貸しください」


そう言うとシトカは冒険者プレートを謎ボックスに入れた。


今日は時間の関係か、受付に並んでいる冒険者がいない。だからか、シトカがソフィアに冒険者プレートを返しながら会話を始めた。


「依頼は達成です。丁寧な仕事ですね。一人になりましたが、頑張ってくださいね。」



「はい、一人にはなりましたが、一人ではないですよ? この子たちのためにも頑張りますよ。」とソフィアはそう言いながら、黒猫の僕達を順番になでている。



「そうですね~。一人ではないですね。そんな仲間がいたら、私も頑張れますよ!」



「かわいいですよ~。私にとっては仲間ではなく、すでに家族です。家族の為に頑張りますよ」


「んーーー! そんなかわいい黒猫が四匹もいたら、私も頑張りますよ……。もし……、大変なら一匹でも引き取りますよ?」



「いえいえ結構ですよ。私の大切な家族ですから」



「ソウデスヨね。家族は大切ですからね~」



そう言うシトカの目じりは下がっている。


僕達はソフィアと一緒に行動し始めた。他の冒険者から見ても印象付けられるよう、いくつかの依頼をこなすことにしている。



~~~~~



今世の勇者とあってから六か月経過した。だいぶソフィアと僕たちが一緒にいることに他の人も慣れてきた。



ソフィアは【黒猫】に入れてくれと言う冒険者を断り、俺たちのパーティーに入れと言う誘いも断り、相変わらずソロで活動していることになっている。



僕達と言えば、相変わらずこの姿だが春の気配を鍛えている。

結局は春の気配と一緒にならなかったが、【黒猫】と【春の気配】は協力関係にあることにしている。

だからソフィアが春の気配と一緒にいても疑問は持たれていない。


――あれから春の気配も一段実力は上がっている。



テザン皇国の密偵?も相変わらずテザン皇国の僕たちの拠点を探っている様子がある。僕が抜けてだいぶ警戒は解かれているが、まだうろうろしている。



その密偵を僕たちは黒猫の姿で近くで見ることが出来る。


変化の術は最強だった。



~~~~~



ある日密偵に近づく偉そうな人物がいた。


「どうだあいつは? あのハイエルフをそろそろ俺たちの陣営に引っ張る材料を手に入れたか?」


「……すみません、これと言った材料はありません。ただ、あのハイエルフに近づく者も、勇者しかおりません。」


「勇者……? あー、あのファンフートのところの出来損ないか」


「そいつです。あの出来損ないたちだけです」


「さすがに出来損ないと仲間にはならないだろう。あいつらと比べたら俺たちの陣営に着くだろ? 俺はそう思うが……。そろそろ粉をかけるか?」


「そこはお任せいたします。我々は見張る役割ですので。」


――ガツーーーン


勢いよく頭を叩かれた男。


「うるさいな。そんなことはわかっている。お前らにそんなことは期待していない。一人ごとだ」


……


「申し訳ございません……」


――ここでも内輪もめか?



~~~~~



数日後、テザン皇国の僕たちの拠点に訪ねてきた人物がいる。

その者の御付きは、挨拶をして僕たちの拠点の中に入ってきた。


「しばらくですなソフィア殿?」


口調が変わっている。

――殿?


「しばらくぶりですサンクリット様。本日はどのようなご用件でしょう?」


ソフィアの前でふんぞり返っているサンクリット。


今まで見た中で一番態度が大きい人物だ。


「今日は頼みがある。そなたの、ハイエルフの英知を勇者様に授けてもらいたい」


「英知?」


「そう、英知だ。我々より様々なことを知っているだろハイエルフは? だから私たちの勇者に、その知識をすべて託してほしい。あの邪魔な奴らがいなくなったんだ。お前も邪魔に思っていたんだろ?」



……


――ソフィアは我慢している。


……


「どのように私は行動したらよろしいので……?」


「私の言う事だけ聞いて勇者に指導したらいい。お前も勇者の役に立ちたいだろ?」


……


「私がすることだけお教えください……」


「あ”っ!? 私のいう事だけ!! 聞いたら!! いいんだ!!」


……


……


「勇者の為になるのでしたら……」

無表情で我慢しているソフィア。


「あ”っ! 私のためならだろ!?」


本性が現れてきた。

司会をしていたサンクリットと、今のサンクリット。

本当のサンクリットは……、これでしょ。

権力を振りかざす……

強い物の前では猫をかぶる……僕たちは変化の術で猫だけど……



――それは置いておいても、最悪の性格だ。



その後はソフィアが我慢した。

勇者の指導を再度引き受けることにして、僕達も猫として同行する。


どの程度まで僕たちが干渉するかは、その時になってから考える……




――猫の様に気まぐれに――


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