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第百四十九話 新生【黒猫】

デーブンから猫の姿になることを一つの案として提案された僕は、みんなに相談した。


みんなはそれでいいと同意してくれたが、どんなパーティーにするかと【春の気配】に聞かれた。


ソフィアがソロで、黒猫を四匹引き連れて旅をする。

ソフィアと春の気配が合流し、四匹の猫を連れて冒険をする。

パーティー名を【黒猫】【春の気配】どっちにするか。




――僕たちは大激論を交わした。

僕たちの存在をできるだけなくしたほうがいいと、【春の気配】にしようと言う僕とサクラ。


【黒猫】はなくしてはダメだと言う僕とサクラ以外のメンバー。

三日間話し合い、結果が出た。



~~~~~



僕たちは今、冒険者ギルドの受付にいた。

顔見知りのシトカさんはいない。


「今日は【黒猫】の解散手続きをお願いします。」


「…………へっ? …………え~~~!!」


「僕たちは今日――――――解散します!」



……

……

……

……





「――――え~~~~!!」



……

……



「だけど、パーティー名黒猫は……、ソフィアが引き継ぎます。僕ラウールとサクラ、ヤマトは一時冒険者ギルドの仕事を受けません。事情があってみんなばらばらになります。」



「――は~~~~?!」



「一人でもパーティー名は据え置けますよね?」



「……大丈夫ですけど、ソロでは名乗ることもないでしょうね……」



「それでもいずれ復活する可能性もあるので、よろしくお願いします。」



……

……



「高ランクの冒険者だからだけではなく、考え直してはいただけませんか? 【黒猫】がそんな状態になるなんて……」


……



「――これはみんなで話し合って決めた事です。だから、よろしくお願いします。ウールさん! 聞いてますよね?」



――受付の後ろのドアからウールが出てきた。


「うむ――。受理しよう。冒険者は自由だ。お前たちも自由に行動するが良い。」


そう言うとウインク?


下手で、両目が閉じそうだ……


事情はガイアから聞いているのだろう。

僕たちはウールを信頼している。



「わかりました――――手続きを行いますので、冒険者プレートをこちらに……」




……粛々と手続きが進んでいる。

周りで聞いていた冒険者も静かだ。



Sランク冒険者パーティーで解散宣言をするものは珍しい。


特に僕たちのような若い冒険者ならなおさらだ。


「はい……。これで【黒猫】はソフィアさんだけになりました。Bランク冒険者のソフィアさんがリーダーで、今は一人の【黒猫】に登録をしています。」



「ありがとうございます。それでは僕たちはこの街を出発します。ソフィアはどうする?」



「私はもうしばらくこの街に留まります。またどこかで会いましょう。」



そう言うと僕たちは別れた。



僕とサクラ、ヤマトとクロウは荷物をもって街を出た。



街を出てすぐに森に進み、付けられている気配をまいて奥へと進んだ。


……

……

……


探られない距離まで移動し、僕たちの気配が感じられないくらい追跡者を突き放した辺りで、僕たちは転移し、魔の森の拠点に移動した。



魔の森の拠点にはすでにソフィアがいる。



「お帰りなさいみなさん。」



普段通りなソフィアに迎えられた。

ここからの筋書きはもう決まっている。



~~~~~



「デー――――ブン――――さーん!!  大変だデーブンさん!! 黒猫が解散した!!」



「なーーーーに~~~~!! 本当か!! 冒険者は黙って……自由。黒猫は……」



デーブンは驚いた――――風だ。



~~~~~



「サンクリット様。黒猫がこの街を出て行きました……。正確にはソフィア様が一人黒猫と名乗っていますが、他の者は今日去りました。ただ、後をつけた者は見失ったようです……」



「まずは――最低限満足のいく結果だな。あのラウールという男がいなくなっただけでもいい。我々のことを恐れたな。」



「追手に気づいたようですから、そこはさすがSランク冒険者という所でしょう。」



「Sランクとはいえ、国相手にはさすがに恐れおののいた様子ですね。」



「そうだな。残ったハイエルフは何かに使えるだろ。」



「はい。ハイエルフは我々より長生きしていますからね。」



「このままあいつらが戻ってこなかったら、もう一度勇者の教育にもどってもらうか? ハイエルフの技術も欲しいからな。」



「――はっ。張り付いておきます。」



~~~~~



僕たちは魔の森の拠点にいる。

解散宣言から七日間経っていた。


今日はデーブンが初めて魔の森の拠点を訪れた。


ゲートで移動するのが初めてだったので、緊張した面持ちだ。――めずらしい……



「うまくいっているぞラウール。そろそろソフィアについて動いてもいいのではないか? ソフィアはエルフ……。一人で寂しくなったから、動物を飼いだす。いい筋書きではないか?」



「――じゃあそろそろいいかな? 僕達も慣れておかなければね。しばらくはこの姿でソフィアの周りにいることになるから。」



「そうだぜ。俺はまだその姿で話をされると違和感が凄いが、お前たちだとはわからないだろう。俺の情報網でも、人間が動物に変化できるなんて聞いたことがない。」



「僕たちはチートだからね?」



「すさまじいなちーとは? 日本という所が気になるぞ俺は。」



「ちょっと……、口が回ってないよデーブン。チートだよ。ま~、デーブンの情報網にはお世話になるから、これからもよろしくね。」



「――おう! 任せておけ。」



~~~~~



今でも春の気配のみんなはまだ違和感があるようで、僕たちが黒猫の姿で無双していると微妙な顔をしている。


あの日から僕たちは天然の毛皮を装備している。

黒光りする毛皮……

ヤマトが長男。

僕が次男。

サクラが三番目の長女。

末っ子のクロウ。



そう、僕たちはみんなで黒猫の姿に変化している。


しばらくはソフィアがメインで冒険をすることになる。

春の気配と協力して……ん、何時までも一緒にいる自信もないが……



ハイエルフ一人と……黒猫四匹の物語が始まる……なんて!


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