第十三話 ゴブリンと戦いたい
冒険者ギルドに入ると、みんな視線を逸らす状態に慣れてきたころ、僕もEランクまで上がっていた。結構早い昇格みたいだ。
所詮チート持ち、他の冒険者より効率が良い。欲しいものを探せるし、大量に物を運べる。今では一人でも依頼をこなしていた。
冒険者は僕の事を知っているから、絡んでくる新参者以外はおとなしいものだ。
何でこんなことになっているかはさておき、今日はとうとう一人で初討伐依頼を受けたいと思っている。討伐ですよ!
今までは両親が見ている前でだけ魔物と戦っていたけど、初めて一人で魔物と戦う許可をもらった。強さのお墨付きは今までも貰っていたが、そこはかわいい子供に無理をさせたくない両親の思いがあったようだ。
もうすぐ九歳。
その前にファンタジーな魔物を一人で討伐しよう。
やはりここは定番のゴブリンがいいかな~と考えながら冒険者ギルドに入っていく。
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いつものアリサさんの受付の列に並んでいる。他の冒険者にはお願いして、順番を守るように言ってからは、順番を譲られることもなくなった。
高ランク冒険者は僕に話しかけてくれることもある。ありがたいことだ、さすがに子供の気持ちでは、避けられるのはつらいものもあるから・・・。
冒険者ギルドでの出来事を思い出していると、何時ものアリサさんから声がかかった。
「おはようございますラウールさん。今日はどんなご用件ですか?」
今日も通常通りの会話だな。
「おはようございますアリサさん。今日は初めて討伐に出かけたいと思います。それで、このゴブリンの討伐依頼ですけど、依頼を受けてもいいですか?」
「ラウールさんのランクでは大丈夫です。まずはプレートを見せてください。」
ぼくはプレートを手渡すと、アリサさんは手元の四角い箱にプレートを乗せていた。
「はい、登録は終了です。ゴブリンを討伐終了したらまたギルドに来てください。ゴブリンは常設依頼ですので、討伐数を決めておりません。一匹五百Gのお渡しになりますが、魔石も買取できますので、採取することをお勧めします。」
「ありがとうございます。ゴブリンは街道沿いでも出現するみたいなので、早速行ってきますね。」
「お気をつけて。それでですが、そろそろもう少し砕けた口調でもいいのではないですか?もともと冒険者の口は悪いものですが、ラウールさんはちょっと丁寧すぎますよ。」
そんなものなのかな、僕はあまり両親以外と話すことが無かったからな。友達も今はいないし・・・・。ちょっと悲しいけどそろそろ友達も欲しいな。
だけど、中の人が中年で、今の年と同じ年って・・・。
ん~ちょっと無理かな。けど、ここは少し口調も変えていこうかな、まだ子供だし!!
「わかったよ、ありがとう。今度からはこれくらいで話すからよろしくね! また戻りそうだけどね。」
「そのほうがいいですよ、まだ子供なんですから。ではいってらっしゃい。」
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冒険者ギルドから出て、僕は街の外に向かっている。
外に出るためには門番の人に一声かけるのだが、今日は顔見知りのスコットさんが門番の日のようだ。
「よう!ラウール!今日も依頼か?」
軽く手を挙げ挨拶を交わす。
「そうだよ。今日は初めて一人で討伐依頼を受けたんだ!」
少しスコットは顔をしかめながら
「大丈夫なのか?強いのは聞いてるが、リックもララも一緒じゃないんだろ?」
「そうだよ、今日は一人で行くんだ! 大丈夫、危なそうなら、すぐに逃げる約束で来たから!」
「ん~心配だな~~、二匹以上いたら逃げろよ、あいつらも集団で来ると手強いからな。」
「ありがと~、無理しないから心配しないで、時間もないから行ってきまーす!」
「本当に気をつけろよな~!」
お互い手を振り、僕は町の外に駆けだした。
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まずはゴブリンを探さないとな。
この世界のゴブリンは、Fランクの魔物。魔石は小さい。身長百三十センチ、力は成人男性と同じか、少し強い。体が小さい分すばしっこい。緻密な作戦を立てるほど頭は良くないが種類によっては武器や、魔法も使う。上位種は頭が良い場合もある。
上位種はめったに人里近くには来ないから、まずはノーマルなゴブリンを探そう。
「早く気配が引っかからないかな~。」
とラウールは歩いていく。
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その頃受付の女はラウールの事を考えていた。
私はギルドの受付
最近冒険者ギルドの様子が変わった。今までは毎日が喧騒に紛れ、それでもいつもの冒険者がお酒をのみ、情報交換し、時に喧嘩をしていた。
けれど、ある日一人の少年が冒険者ギルドの扉を開いてから、雰囲気が一変した。
あの子、ラウールくんが冒険者登録したときの事が、記憶に新しい。
『漆黒の翼』
二つ名がついてしまった。
その後は、気まずそうに冒険者ギルドに来ては地道な依頼をこなしていた。他の冒険者にも気を使い、できるだけ普通にしてもらえるように、お話をしていた。
あの小さな体で大きな冒険者にお願いしている姿は、普通であれば微笑ましいが、恐れられてる姿を見ると少し悲しい。
あの子は時々何かを恐れているように見える。ベテランの冒険者も、力量は認めながらも、何かを感じ取ってるようで、普通に接しようとしてくれている。
私も、受付として長く冒険者ギルドに関わっているからか、その人の内面が少しはわかる気がする。
ラウールくんは、やさしい子、そして私では計りきれない子。
依頼は完璧にこなし、八歳とは思えない丁寧な対応をしている。依頼主の満足度も高く、採取物の品質は高い。街中の依頼も、痒いところまでてが届いている様子が、依頼達成の報告書からもうかがえる。
あの年の子が何故そこまでできるのかはわからないけど。
それでも願わくば、善い友を、良い仲間を得てほしい。両親も実力のある冒険者だけど、いつまでも一緒に依頼を受けることはできないと思う。
冒険者を続けてほしいけど、できたら、もっと少年の姿を見せてほしい。口調の事はよけいだったかな?それでも少年らしい幸せをもってもらいたいと思ってしまう。
頑張って!
ラウール君
応援してる




