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第百二十七話 変化の術を覚えよう!

ソフィアから修行をつけてもらう傍ら、緑龍にも術を教えてもらえることになった。


クロウと遊びにいった時にはじめは見えなかったのは、変化の術で小さくなっていたそうだ。

人族にはない術だが、長年生きてきた魔物や、神に近い者はつかえる可能性があるようだ。


だから今日もみんなで緑龍に会いに来た。魔王の心配は僕がすることでもないし。今日は僕が質問しながら話を進める。



「これから俺が変化の術を教えるが、できるかはわからないぞ! 俺も覚えるまでに時間がかかった! そして、自分より質量が大きい姿にはなれないからな!」


「へ~? 小さくなるのは大丈夫なの?」


「小さくなることや、今より小さい魔物の姿にはなれるな! ただ、体の中の構造も自然に変化するからな!」


「元々の魔物の内臓と同じになるの?」


「いや違う! お前たちが使えたとしたら――人間の体に合わせた内臓になる。だから解体されたらばれるぞ! 普通ではないとな!」


「普通じゃないより、死んでるから……」


「だから、外見が変わる術と考えろ! 合わせて小さくなる想像だな! 魔力で圧縮された素材が形のある武器に変化する。武器が元の素材に戻る! それくらい難しい術だ!」


「ん……難しいな……。戻れなくなることは?」


「そこはおそらく大丈夫だ! 変化できたら生物は元に復元される! 神が生物の人為的な永久変化を許さないだろう? 何故か戻れるんだよこれが!」


「――何となくわからないけど、わかったよ!」


「――では俺の変化を見て、魔力の動きを確認するんだ! そして、なりたいものへの想像力だ!」



そう言われたからには緑龍の変化を感じよう。何度も何度も目の前で変化してくれている緑龍……


元の大きさが二十メートルはあるが、二メートルくらいの蛇の姿に変化している。


それを見て僕たちも魔力で自分を圧縮しているが、なかなかこれといったものをつかめない……


一日目は術を見ていることだけで終わった。



~~~~~



しばらく通いつめたが、まだコツがわからない。これまではチートで何事も早く覚えていたから、まどろっこしい。



拠点では物体の変化を練習し、緑龍のところでは延々と緑龍の変化の術を見る毎日だった。


緑龍は気が長いらしく、不満も言わず付き合ってくれている。この修行が成功しても失敗しても、何かお礼をしないといけないな。


魔物だけがつかえる変化の術なだけあって、人間には無理かと考え始めたときに、緑龍が言った。


「人族で使えると聞いたことはないが、魔族はできるやつがいるぞ! バンパイアなんて蝙蝠になるだろ! ラミアも人から魔の姿に戻るだろ? それと同じことをしてみるのだ!」


「確かに…………魔物、魔族、人族……。ん~、まずは少しだけ見た目を変える……」


そこから更に修行が始まった。

全体を変えるのではなく、一部分だけの変化を練習する。



~~~~~



修行して数か月が経過した。

今までの僕達であれば、ここまでの僕たちが長いと感じる期間練習した場合、大抵のことが出来ていた。

だからこそ今回はあきらめそうになったが、今止めたらもったいない。

もう少し練習したらできるのではないかと、ずるずると練習を続けていた……



変化の術の為に常に想像、創造と言いながら武器、防具を作っていたからか、錬成は上手くなっていた。

僕たちが魔法で作る装備品も一級品と呼べるものが出来ている。


こちらはチートが効いていた。


しかしここでクロウが一歩前進した。

クロウは人族ではないが、仲間が変化の術を使えたことで、やる気がまた出てきた。


クロウは足を二本にして、体も一回り小さくなった。

本当にただの鴉の姿に変化している。

一回り小さくなったとはいえ、圧縮されたためか、僕の肩に感じる重さは変わっていない。


そこで僕とサクラはクロウの重さを感じ、一部分からの変化ではなく、小さくなることを目標とした。

ただ体が圧縮される感じをイメージ。

そのまま小さく、小さくと考えて魔力を纏っていくと、僕もサクラも一回り小さくなった!!


……


一度コツをつかむと、小さくなることはできるようになった。

ただし、虫くらいまで小さくなることは無理なようで、一メートル位の大きさまでが限度だった。


ここまで来たからにはできるまで練習しようと、更に数か月の期間が経過していた。



~~~~~



「そろそろ変化できそうな感じになって来たけど、サクラはどう?」


「ん~、なんとなくイメージが固まってきたかな? 私は猫をイメージしているけど、ラウールは?」


「僕も猫をイメージしているよ。人型から急に獣型は難しいかもしれないけど……」


「そうなのよね。毛の感じがね~。」


「耳もね。頭の上に耳……。んーー」


「私たちハイエルフは、変化ではなくて魔法で周りに別の姿に見えるようにできますけど、一度ラウールとサクラにかけましょうか? 自分で触っても、感触は相手に見えている姿の感覚になりますから、参考になるのでは?」



ここに来て新たな事実……

ハイエルフにはそんな便利な魔法があるなんて……

変化を覚えなくても、その魔法を教えてもらえたらよかったのではないか……


「ただ、この魔法は、人族であれば獣人族程度の姿にしか変化はできませんが。獣型は無理ですからね?」



それでも何かがつかめるかもしれないと、ソフィアにお願いして、猫の獣人に見えるように魔法をかけてもらった。

その状態で自分の全身を触りまくった。さすがにサクラの全身を触ることは……出来ない――




そこから更に一週間たったころ、ふと――できる気がした。


自分自身が猫の獣人に変化する!




「変化!」




僕はおもむろに魔力を込めて叫んだ…………すると次の瞬間には、猫の獣人の姿にゆっくりと変化した。



「できた……できたよ~!」



大喜びしている横でサクラも僕の変化を探っていたのか、変化!と叫んだ。

するとサクラも猫の獣人にゆっくりと変化していった。


「私もできた! ラウール! 出来たよ!」


僕たちは嬉しくなり、手を取り合ってぐるぐると回っていた。

しばらく回り気持ち悪くなったころにクロウとソフィアの生暖かい視線を感じて……動きを止めた。


そこからは順調だった。

なんとなく体の変化の仕方を理解した僕とサクラは、練習を繰り返した。



猫の獣人と、猫そのものに変化できるようになった。

他にもいくつか変化できるものが増えて、見た目も少し変えることが出来る。


これで何かやってしまって目立つ時に色々と役立つ!


クロウはそこまで変化を望んでいないし、大きさも小さくなる必要もないのでそのままだ。

ソフィアも認識を阻害することや、魔法で相手からの見え方を変えることが出来る。


僕とサクラは、変化できる!


ただここまで来て思ったこともある。

変化の術を使う事なんて、ほとんどないのではないか?

元々何かをしでかしても、変化して迄誤魔化すことなんて……この先もないのではないかと気づいた僕とサクラだった。


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