第百二十六話 龍との接触
ある日クロウが言い出した。
「ラウール? 我友達が出来た! 一緒に行こう!」
急に言われて言葉が出てこない僕に、クロウは話を続けた。
「我が散歩しているときに、強い気配がした。そっちに行くと、強い魔物がいた。戦ってみたけど強かった。その後我にその魔物が言った。友になろうって。どんな姿か今は内緒! 行こうラウール!」
「その魔物は僕が行くことを知っているの?」
「知ってる! 暇な時に一緒に来い! そう言った。」
「僕だけのほうが良い? みんなで行く?」
「一度みんなで! 後はまかせる!」
クロウに言われた僕たちは、その友達がいるという所に行くことにした。
クロウが言うには念話ではなく、言葉も話せると言う。
その魔物はこの森で長いこと生活していて、僕たちがこの森で活動しているのも知っていたそうだ。
特別自分に害もないし、近くにも来なかったので何もしなかったが、クロウが行ってみたところで力試しと勝負を挑まれたそうだ。
このクロウが引き分けたと言う力の持ち主……
僕達全員で戦って勝てる魔物だろうか……?
戦わなくていいのだろうが、相手は魔物……何が最善なのか考えてしまう。
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クロウに言われて、拠点から南西に向かい進んだ。
僕達は強さがばれないように魔力を抑えているのでクロウが案内する途中では魔物に襲われるが、一思いに首を切り落とす。
いずれ街に行った時に売ることもできる素材として……
道中で魔物を狩りながら考えていたが、これ以上お金は必要か?
今あるお金だけでも、死ぬまで生活できるのではないか?
しかし倒した魔物をずっと死蔵しておくのももったいない。
いつまでも貧乏性だなと一人で苦笑いしていた。
一人で考え事をしているうちに、これがクロウが言う龍か? ……強い気配のするところへ到着した。
しかし気配はするが姿が見えない。
これくらい強い魔物は、クロウでないのだから隠れることはできないと思うのだが?
僕が周りを見渡していると、気配がする方向の木の後ろから声が聞こえた。
「クロウ! その者たちがお前の仲間か! ちょっと待て、今変化を解く!」
そう言うと、目の前に……龍が現れた。
今までのドラゴンが西洋竜、ドラゴンなら、目の前にいる魔物は東洋龍……
某、球を集める有名アニメに出てきていたような龍だった。
「おう! クロウの仲間は流石に強そうだな! 俺は緑龍だ! 宜しく!」
ん~、この世界のテンションが分からない……
龍と言えば相対する者には丁寧な対応をすると思ってしまって違和感が……
「ラウールとサクラ、ソフィア。我の仲間だよ! ――緑龍も元気だった!?」
「おう! 元気だったぜ! クロウと戦った時の傷も治ってるぞ。お前は無傷だったがな……」
新たな事実…………龍相手に無傷……。やっぱりクロウは何者?
僕の従魔だけど……
「緑龍! お前も強かったぞ!」
龍相手にも……
「おうラウールとサクラ、ソフィア。今後もよろしくな! 時々クロウを借りるぜ! 俺に傷を負わせる奴なんて、もうどれくらい昔だったろう? この数百年はいなかったか? 同じ龍では千年に一度くらいしか戦わないしな。」
僕はその言葉を聞いて驚いた。
そんなに強い魔物を相手にクロウは戦える。
もしかして僕たちもそのレベルにいるのか? 頭の中を俺TUEEEが駆け巡り、サクラを見た。
サクラも同じようなことを考えていたのか、僕と目が合って苦笑いした。
「そんなに強いのに、クロウにはかなわないの?」
「どうだろうな? 本当の本当に全力で戦った時には、この森は崩壊しているだろうな! あの時も、俺の防御結界が壊れない程度で戦っていたからな。クロウも全力ではなかったしな。」
「我余裕だったよ! ラウールの方が強い!」
「まだ言うか! クロウは自分よりラウールとサクラの方が強いと言ってな! だから!」
そう言うと緑龍から殺気が向けられた。
殺気を向けられた僕はすぐさま緑龍に対して詰め寄ると、鱗を一枚はぎ取った。
サクラも動いており、他の部分の鱗をロマンの大鎌で三枚ほどはぎ取っていた。
「痛い!!」
緑龍はふいに訪れた痛みだったのか、涙目になり叫んだ。
龍も涙目になるんだな? と別のところで感心してしまった。
「……なるほどな。強いな二人とも……俺より強いかはわからないが……。まだ俺の方が強いかな?」
「さすがに全力でお互いに戦えないしね? それでも緑龍というからには、かなり強いんでしょ?」
「強いぞ! 神の遣わす勇者が育ち切った場合は別として、負けることはないかな? 魔王にも負けないとは思うが、俺は戦ったことはないな。他の龍が戦った時は、相性次第では厄介だと言っていたがな。」
魔王のいる世界。
未だに魔王の魔の字出てきていないけどいるんだね。
それに勇者、他の龍……戦いたくないけど、見てみたいな。
「へ~、やっぱり勇者とか魔王は強いんだ? それに他にも龍がいるんだね?」
「いるぜ! 魔王は今はまだいないな。ただもしかしたらそろそろ一度は出現するかもしれない。どれくらい前かに一度整った世界だが、最近またバランスを崩しているようだ。今までにないことだな。そういう時には魔王が出現して、勇者が現れるか呼ばれる。」
バランスが崩れた?
僕が来たことでバランスが一度整ったはずだ……そのバランスが不自然に壊れた?
神が行ったことを崩せるのは神?
「他の龍もいるぞ! この世の中には色があるだろ? 魔力によっても色々な色が出るだろ? その色にちなんだ龍が産まれる。なぜと言われても自然の摂理としか言えないが……。一色につき一匹の龍がいる。時々混じりもいるがな!」
「混じり?」
「混じりとは、赤と青を合わせると紫になるだろ? いくつかの色の特徴を持った龍もいるという事だ!」
それから龍の属性なんかも教えてもらい、その場を後にした。時々遊びに来て戦おうと言われたが……
しかし不吉な話を聞いてしまった……なんとなく生活できると思っていたが、ここにきて不穏な気配が……
出来る限り人任せにして行きたいと考えたが、巻き込まれる未来が見えてしまったラウールだった。




