第百二十二話 ラウール十七歳は籠りたい
あれから首都サーシンに滞在し、冒険者ギルドで依頼も受けずにいた。
そして十七歳となった。
久しぶりに見る僕のステータスはこれだ!!
名前:ラウール
職業:ジェノサイダー
LV:ー
HP:1722→4576
MP:2946→5267
体:1587→4003
心:2598→4778
運:92
ユニークスキル:すくすく育つ・看るスキル:解析・学習・アイテムボックスX・忍びの技・魔法(全)・戦闘(全)・解体・自然回復(全)・状態回復(全)・空間転移・空間把握加護:才能の神の加護・創造神の加護
称号:地球人・心は中年・才能の神が見てる人・両親への信頼・両親からの信愛・乗り越えた者・逃亡者・ダンジョン周回者・漆黒の翼・黒猫・無神経・後悔先に立たず・神に逢える者・ドラゴンバスター・聖者・クロウの主人・ジェノサイド(魔物・人)
*運以外は100が25歳の平均値
自分の目安とはいえ……レベルが表示されなくなった。
職業が……聖者は勝てなかったようだ……
ちょっと密度が濃かったかな?
Sランクの魔物も倒しまくったし……
人も……
サクラにも聞いてみたけど、僕ほどではないにしても、ステータスがすさまじいことになったようだ。
~~~~~
さてこれからどうしよう?
十七歳になって、両親からもお祝いされた。
今が次へ旅立つタイミングかな?
今のところ戦争の出来事が大きく僕達に影響することはない。
知る人ぞ知るくらいで済んでいるようだ。
カーシン伯爵が、僕が目立つことが嫌いなことを知って情報の統制を頑張ってくれたおかげだ。
あの時の貴族も特に敵対することもなかった。
そして国王……
国王は僕達と敵対したくないとカーシン伯爵を間に入れて伝えてきた。
レインゴールド・フォン・サーシン国王。
国王はレインと呼んでくれと伝言してきたがーー無理です!
それはさておき、ラシーア帝国に今は行きたくない。
帝国がどうなったか多くは聞かなかった。
しかし戦場には首謀者である皇帝の血筋の者はいなかったようだ。
今は王国が帝国に対して交渉している段階という事だった。
ここから先は冒険者である僕があまり気にしてもどうにもならない。
ラシーア帝国以外だと……魔の森を超え、海を越えて魔大陸に行くか?
交易都市群、フイエウ共和国の東にある島国……ジパンに行くか?
僕とサクラは迷っていた。
しかし今回はサクラが提案してきた。
「ねえラウール? 私とクロウだけで魔の森に行かない? 魔大陸に行こうとは思わないけど、異世界って言ったら森での生活じゃない?」
……
「ここでテンプレですか? なぜこのタイミングで?」
「だって、今何かすると目立ちそうじゃない? だったらーー人前にあまり出ることのないようにするには……森の中じゃない?」
「軽く言うねーー。森で何をするの?」
「森と言ったらエルフの里……精霊……龍……自給自足、生産活動……そのあたりは?」
ラウールは天を仰いだ……
「そうだね……僕はそれでも良いけど、サクラは寂しくないの? 人とはほとんど会わないんだよ?」
「ラウールとクロウがいたら良いわよ! それに……もし寂しくなったら、転移で戻ればいいんだもの!」
僕は少し恥ずかしかった。
僕とクロウがいたら良い……
ちょっと嬉しい!
「そうだね! いざとなったら転移で戻ってきても良いしね! じゃあ数日間は準備する時間にする?」
「そうしましょ! 自給自足が出来そうだけど、便利な物や食べ物もいっぱい持って行ってもいいでしょ! これまで稼いだ素材やお金はそうそう無くならないしね。ここでスローライフも良いでしょ?」
そうやって次の行き先が決定した。
僕達は数日間かけて今まで買わなかったものまで手を出した。
出来るか出来ないかではなく、やってみたいことをやるための物を……
~~~~~
そして出発の日が来た。
僕とサクラは両親に一旦別れを告げた。
そして魔の森に行くことを告げると驚かれたが、「お前たちなら大丈夫だろう」と応援された。
そしてたまには顔を出せよと言われた。
別れた後は門を出て人気のないところへ転移し、フイエウ共和国の首都フイエウに到着した。
首都フイエウでもまだ人目を忍んで買い物をした。
サーシン王国にはない物も買えた……
そしてヌリンツの街までは移動馬車で進んだ。
これで一応は目撃情報を残せただろう。
滅多なことはないだろうけど、この国で何かをするときにいきなり現れたのでは不自然だから……
移動馬車でヌリンツの街に到着し、一泊は宿で休むことにした。
ヌリンツ の街で冒険者ギルドによっておいた。
受付で冒険者プレートを提示して、しばらく【黒猫】は連絡がつかないと言っておいた。
冒険者ギルドはもっと詳細を知りたがったが、魔の森に籠るとは言えず誤魔化した。
冒険者ギルドによらない生活をするからとだけ伝えた。
そして、この街でないところで冒険者活動を再開するかも知れないとも付け加えた。
この街でも本屋によった。
魔法関連の中でも珍しい、付与魔法の本……錬金術、鍛冶、調合、魔道具作成に関わるものなどがあり、全て買った。
僕のユニークスキルの『すくすく育つ』で成長は早いと思うが、どこまでできるかな?
魔の森までは当然徒歩移動だった。
定期的な移動馬車などは無い。
道もあってないようなものだから、方向だけ気をつけて走って移動した。
~~~~~
「森が見えてきたわねラウール?」
サクラがそう言ったタイミングで、走るスピードを落として先に進んだ。
もうすぐ魔の森に到着する。
……
木々が近くなってきた時に、魔物とは少し違う気配を感じた。
僕は気になりサクラの許可もとり其方の方向に進んだ。
進んだ方向では、戦闘が起きているようだ。
魔物に囲まれた気配が一つ……
その気配を感じ、更に急いで移動する。
そして目の前にはオークジェネラルを中心に、オークの上位種が一人の人物を追い詰めていた。
「誰かーー!! 助けてくれーー! 神様ーー!!」
叫んでいる人物の周りにはすでに死んだと思われる人間が横たわっている。
対してオークはほぼ無傷で、なぜこんなところに人がいるんだろうと不思議に思った。
魔の森の入り口近くとはいえ、魔物の強さはBランクから上位が出て来る。
ブモッ!
とオークが叫ぶと、目の前にいた男もオークに吹っ飛ばされ動かなくなった。
しまった!
考え事をしていて間に合わなかった……なんと間抜けな……
ーーしかし敵は討つ!
心の中で風の刃を飛ばすイメージを持つとともに魔法を発動した。
そして次の瞬間には目の前のオーク達の首が飛んでいた。
僕とサクラは人が殺されたところに近づいていく。
倒された男の格好をよく見てみると、盗賊のような恰好をしていた。
「この人達は盗賊だったのかな?」
僕は目の前の人の格好だけではよくわからなかった。
サクラやクロウも頭の上にはてなマークが浮かんでいるような表情をしていた。
そして馬車も傍にあるため、そちらを確認することにした。
先ほどからもう一つの気配がしていた。
目の前の男が死んでから……急に気配が出現した。
僕が馬車に入ってみると、中には檻があった。
そして檻の中には、僕達と同じ年頃に見える人がいた。
エルフ……
大きな街では見かけるが、このエルフは何かが違う……
気配? 魔力? 存在感が大きい。
エルフ?の首には首輪が巻かれており、奴隷のようだ。
この世界には奴隷がいる。
しかし、大っぴらに奴隷です!といったようには見かけることはなかった。
犯罪者は人々の目につかないところで作業をしている。
……このエルフ?はおそらく、違法奴隷にあたる人物。
目の前のエルフ?も僕を観察していた。
何かを話したそうにしているが、僕も相手も口を開けずにいた。
「ラウール? 何かいた?」
そう言いながらサクラが馬車に乗り込んできた。
「……エルフ? あなたはエルフなの?」
サクラがそう呼びかけると、目の前の人が口を開いた。
「私はなぜここにいるのでしょう? お昼寝をしていたら、急に良いにおいがして……。強い魔物は入ってこれないように結界を張っていたのに……。この状況は?」
「あなたの乗っている馬車の持ち主らしき人は、オークたちに殺されていたわよ。もしかして仲間じゃない?」
「私は一人で過ごしてきてたから、仲間はいないわよ? もしかして……この首についているのも?」
「もしかして拐われたんじゃない?」
「もしかしたら? 私が油断してたかな? だけど、んっ!」
そう言うと目の前で首輪を外していた……
……パキ……
外れるんかい!!
「外れるんだねそれ……。僕は奴隷の首輪で、隷属させられるものだと思ってたよ……」
「私くらいになると大丈夫!! いくら隷属の魔道具でも、魔力で無理やりにね! コツもあるしね。」
「そうなんだ……。それで、あなたは誰で……なぜこんな状況になっているか聞いて良いかな?」
……
目の前の人は少し考え込むと、一転して笑顔を作り話し出した。
「私は人族の言葉で発音しずらい名前だから、ソフィアって呼んで。そして自分で言うのもなんだけどエルフよ。ただのエルフじゃあないけどね。そして……眠っている時に拐われたかな? 私を害することが出来ないように魔法をかけていたけど、これくらいじゃあ害って判断されなかったんじゃない? 私は里を離れてしばらくは街に住んでいたんだけど、ちょっと休暇にこの森に来てたのよ。」
「へーーエルフだから、僕達よりは長生きしているんでしょ? それに、僕達と目的が似てるね。僕達もこの森で少し生活してみよっかなって思ってたんだ。」
「ふ~ん、あなたたちは強いのね……。雰囲気で強いことはわかるけど、変わってるわね人族でこの森で生活してみるなんて。」
「まーーずっといるわけではないしね。ちょっと? いくらか? 街に戻りたくなったら戻るけどね。」
その説明を聞いたソフィアは悪だくみをしているよな笑顔を向けてきた。
「私も一緒に行く!! 良いでしょ? ねっ!」
そう言って目の前で手を合わせている。
急に何だこの展開は……
気心が知れたサクラだけなら良いけど……
サクラはどう思っているのかな?
そこでサクラとクロウと相談を始めた。
サクラは数日間は様子を見てみても良いのでは?と提案してきた。
一緒にいてどちらかが相性が悪いと感じたら別れたら良いでしょ、と……
この森で生活できるほどのエルフだったら、何かを教えてもらえるかもしれないしと言った。
結果的に僕達は一緒に行動する事に同意した。
どちらかが離れる決断をした時までは一緒にいることにした。
……
目の前の人物はソフィア。エルフの女性だ。普通のエルフよりも光っているように感じる。身長も僕と同じくらいですらっとしている。
その人物としばらく生活することにした。
盗賊?はなぜここにいたかも、この森で活動できるほどの強さだったかも不明だ。




