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第百十八話 ラウールの選択

また代り映えのしない毎日を繰り返していた。

クロースの情報を基に魔物を討伐する日々だった。



しかし今日は魔物の集団を一度討伐すると、クロースが話し出した。

クロースは僕に周囲に誰もいないか探ってほしいと話し、その後誰もいないことを告げると重要な話があると言い出した。


「親父からの新たな情報だ。ラウールは魔物を引き寄せる方法は知ってるか?」


「引き寄せる? 知らない。」


「それが、魔物を引き寄せる方法があるみたいだ。俺たちが魔物の集団を殲滅した後に、その場を詳しく調べる役割の者がいたらしい。そして、その者が報告するには、何か魔石?鉱物?を砕いたような跡があったようだ。それを調べると魔力が残っていたらしい。その物が何かまではわからないが、やはり人為的な物のようだ。」



……僕は考えた。人為的な物で魔物を引き寄せる?

そんなことが出来るのだろうか。僕もまだこの世界では十六年とちょっと……もうすぐ十七歳になる程度の人生経験だが、そんなことが出来るのか?……魔道具?


「おそらく王国ではないところで開発された魔道具だろう。王国には魔除けはあるが、魔物を引き寄せる物は確認されていないそうだ。親父が言うからにはその通りなのだろう。だからこれは他国が引き起こしているのだろう。」


「やっぱり帝国?」


「情報をまとめるとそうなるらしい。俺と、Sランク冒険者のラウールだからと親父がある程度教えてくれた。帝国も権力争いがあるようだ。今回は次期皇帝を争うっている状況だから……そして一部の帝国貴族が、王国の一部を手土産に後継の座を確実にすることを狙っているらしい。」


「後継? 長男とかではないの?」


「皇帝は、血筋と力で決まるそうだ。血を引いていることが第一条件。第二条件が、周りを屈服させることが出来るか。力とは単純な武力だけではないが、皆を屈服させるだけのものを見せる必要があるようだ。」


「それで、今回の魔物騒ぎとどんな関係が?」


「うむ……今回は魔物を使い王国を混乱させた上でサラシトの街まで侵攻し、領土を拡大させる目的のようだ。」


僕はそのことを聞いて考えた。

国家間の争いが今、僕のいる時代に起きているのか。転生するときは大きな争いはないと思っていたのに……。神にも読めないことはあるんだろうな。

そしてこのことを僕が聞いたら、僕も人間同士の争いに……戦争に参加しなければいけないんではないかと危惧した。


「……ラウール……すまない。これから話すことを聞いてくれるか?」


んーーこれからの選択肢で、僕がどこまで首を突っ込むのか決まるな。

……断る! 王国が平和でないと両親が……

……受ける! 人と人の争い……目立ちすぎる。

どっちを選んでも困った未来しか見えない……


「クロース? クロースは僕に手伝ってほしい?」


今度はクロースが考えている。

……

……

しばらく考えたクロースが口を開いた。


「できれば手伝ってほしい!」


…………

……


……覚悟を決めよう、両親の為に……


「わかった。じゃあ話を続けてくれ。」


「ありがとうラウール。それでは続きを……。俺は親父にお願いされた。ラウールを説得してくれと……。今回の争いに冒険者として参加させてほしいと。」


クロースの話では、今回の争いは戦争と呼べる規模のものらしい。

魔物で疲弊させることが失敗したと見た帝国が、今現在で予想より多くの兵を集めているそうだ。

混乱した王国であれば、ここまでの規模は必要ないと思っていた帝国。しかし、満足に戦力を減らせなかった帝国は、情報を隠しもせずに戦力を集めだしたそうだ。騎士、兵士、民間からの徴兵、冒険者を集められるだけ集めている。もちろん帝国にもSランク冒険者がいるが、今回の戦争への誘いに乗ったようだ。

王国も対策はとっており、サラシトの街にも戦力は集まってきているそうだ。


「じゃあ僕は、冒険者の中に入っていたらいいの?」


「親父が言うには、冒険者の立場で、おやじの傍にいてほしいと言っていたが……それは待ってもらった。」


「そうだね。できれば王国貴族の前で目立つことは避けたいな……」


「そう思ったから親父には言っておいた。一番はラウールが参加することで戦力が高くなることを優先すると言ってもらった。」


「そうなると、正体は隠せないけど、なるべく目立たないように頼むよ……。いや、逆にこの機会に目立った方がいいのか? そろそろ隠しているのも無理が来ていたし……」


「俺はラウールに任せるが、確かに今のラウールとサクラは目立ってるぜ。今後も目立つと思うぞ。」


僕はサクラと相談した。サクラも一緒で今後は目立つことになるから。


サクラは僕に任せると言ってくれた。サクラもこのまま目立たないでやり過ごせるほど、二人のチートは小さくないと言う。

神は思うように過ごしていいと言ってくれていたし……


うん。今がチャンスかな?

これから目立つなら、半端にではなく目立ってしまおう。

そして誰にも何も言わせない。

これからも好きに生きるんだ!

冒険者以外の肩書がテンプレ通り付き纏う?なら……その時に考える。

今は、両親の老後の安定のため、帝国にはちょっかいを出されないようにすることが一番だ!


「クロース! カーシン伯爵に言っておいて。僕はサクラと一緒であれば、どの位置でも立ちますと。」


「ありがとうラウール、サクラ。それじゃあ俺は親父に会いに行く。ラウールとサクラはいつもの宿に伝言をしたらいいよな?」


「うん。わかばにいるから、伝言を残してよ。直接来てもいいし。」


「わかった! じゃあ行くぞクリス。」


そう言ってクロースとクリスは離脱した。

一緒に街まで戻ってもよかったのに……


僕はこれからのことを考えた。

両親の安定と、サクラの安全は僕が守ると……


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