第百十四話 二つの伝言
「では先にどちらの伝言をお聞きしますか?」
「んーーでは、クロースの伝言を教えてください!」
僕はクロースの伝言は、ここまでの事もあり面倒なのではないかと考えた。
そのクロースからの伝言は『この街に寄ったということは、俺は今はサーシンにいる。だから俺と一緒でなく、先に父に会っていても良いぞ。』だった……
ん?
「次はカーシン伯爵の伝言をお願いします。」
カーシン伯爵の伝言は『君とは話をしておきたい。是非一度我が家に来てほしい。』だった……
んっ?
……
……あっ、追い越した!
僕は失敗した……転移で移動したから数日はクロースより早く着いてしまった……
「カーシン伯爵は何度も伝言を変更しているの?」
「はい、だいたい一年に一度は更新しておりますね。」
やはりかーーこれは僕がサーシンに居ることを知らない時の伝言だ。
はーーもう数日待つか……
「おい! いつまでコロンを独占してる! 早くどけ!」
コロンさん?
この受け付けの人はコロンさん?
早くどけと……
まー用事がすんでるけどね。
「……すいません、今退きますよ。じゃあコロンさん? また数日後に来ますよ。」
「ああん!? また数日後に俺のコロンをくどくだとー!」
「誰が俺のですか……。ラウールさん、用事がすんだのであれば良いのですが?」
「今日はまだ来るのが早かったみたいで……。クロースが伝言に来たら、わかばにいると伝えてください。」
「かしこまり「あ゛ーー! なに俺を無視してるんだ!?」ました。」
「じゃあそういうことで!」
「あ゛ーー! 無視するんじゃねーー!」
結局絡まれた……
どうしようかな?
そう僕が考えていると、サクラからもの凄い殺気が放たれた!
「ん゛っんんんーー!」
絡んできた冒険者がヘタリ込んでいる。
「あ……ああ……」
気を失いそうか?
けど助けるのもな……
すると冒険者ギルドの入り口の方から叫び声が上がった。
「止めてやってくれ! そいつは限界だ!」
そこには……カーシン伯爵の姿があった。
「門番から聞いて来てみれば、なんだこれは! そこにいる冒険者は俺の知り合いだ!」
へっ?
知り合いにランクアップ?
門番から聞いた?
さすが門番!
って、良い働きって言えない……
また面倒な……
「ラウール、久しぶりだな!」
「……はい……お久しぶりです。」
「そこの女性は初めてだな。仲間か?」
「はい。僕のパーティーメンバーです。クロースとも一緒に旅をしましたよ?」
「おーー! ではサクラか? 話は聞いているぞ! だが、クロースが着く前になぜここにいる?」
「移動手段が良かったのですかね?」
カーシン伯爵は顎にてを当てて考えている。
そして豪快に笑いだした。
「そうだな、お前たちほどの冒険者に聞くことではないな! しかしクロースから話を聞いていないのなら、先に俺が話しても良いか?」
「いいですけど、場所は変えてくださいね?」
「もちろんだ!」
僕達とカーシン伯爵はさっさと冒険者ギルドを出た。そして、待っていたカーシン伯爵の馬車に乗ることになった。
……
その後の冒険者ギルドでは……
「あいつは何者だ?」
「あの姿はきっと【黒猫】だぜ!」
「黒猫!」
「今話題になってきている!」
「おう! 俺もデーブンから聞いた話だが、絡まない方がいいぜ!」
「ほーう、あのデーブンが言うのか!?」
「おう、あの荷物運びの伝道師のな!」
「じゃあ気をつけよう。」
デーブンはこんなところでも有名になっている。
Sランク冒険者よりも……
デーブンはどこに向かっている……
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馬車に乗った僕達……カーシン伯爵一行は街の中心の領主館に着いた。
カーシン伯爵は何も言わず馬車に乗っていた。
その後執事のセバスと名乗る人物が現れて館を案内され、一つの部屋で待った。
通された部屋で待っていると、カーシン伯爵が現れ目の前の椅子に座った。
「久しぶりだなラウール?」
「はい、お久しぶりです。よく名前を覚えていましたね? 言葉遣いはこれくらいでご勘弁を……」
「言葉遣いなどどうでも良い。俺が招いたんだからな。そしていきなりだが、お願いがある……」
なんだこの固い雰囲気は……
「……王国のために力を貸してほしい!」
王国のため……
とうとう国のイベントが僕にも……
「この頃魔物が増えている。街道まではなかなか到達出来ないはずだが、そこまで出没するようになった。はじめの伝言はクロースの旅の助けになってもらいたいと残していたが、違う依頼になってしまうが……」
魔物?
確かに増えていたけど、まだ冒険者でも余裕では?
「最近の急激な魔物の増加は、人為的な工作が疑われる……。普段なら魔物の討伐依頼で良いのだが、今回は……」
「何か引っ掛かるものが?」と僕は聞いた。
貴族が引っ掛かる?
面倒事?
「帝国が怪しい雰囲気を漂わせている……。Sランクとはいえ冒険者に依頼する事も異常かもしれないが、国としてはまだ動けない。だから頼む! クロースと一緒に何が起きているのか探ってくれないだろうか? 何もないなら一番良い。」
「僕たちは何を探る依頼を出されるのでしょうか?」
「魔物の増加の原因、理由を先ずは探ってほしい。そして出来るなら討伐をしてほしい。そこに人為的な何かを疑わせる何かがあったなら知らせて欲しい。少しでも怪しい物があったなら……俺に教えてくれ。」
僕は考えた。この国は両親が住んでいる大切な国。出来ることなら両親には平和に暮らして欲しい。僕が出来ることであれば解決したい。
だが……気になることがある……
「依頼は受けましょう。ただ、今気になることがあります。それは……」
……
……
……
「……EXランクの冒険者の名前です……。聞けずここに移動したので気になります!」
ラウールはマイペースだった。
依頼は受けても良い。
だけど名前を聞けず、ずっと気になっていた。
だから先ずはEXランク冒険者の名前を聞いていた……
「今の会話でそれか……」
……
……
「EXランクの冒険者が現在いる場所はわからない。しかし、名前は……イーアス・ノエビア……単独でSランクの魔物を討伐できると言われている強者だ!」
……ようやく知った!
イーアス・ノエビア。
そして待つ!
クロースの帰還をね。




