第十一話 冒険者ギルドで遭遇
冒険者ギルドでの説明を受け、両親とも相談したが、何かの依頼を受けることにした。
両親は僕から離れて見守っている。できるだけ一人でできる依頼を見つける事と言われた。
討伐でもできると思うけど、僕自身はGランクだ。Gランクでできるものを探してこよう。
依頼票の前に行くと、Gランク票の前はあまり人もいない。ほとんどが街中の依頼で、報酬も少ない。安全だが実入りが少ないのが特徴で、まだ幼い冒険者がよく依頼を受けている。
やはりここは定番の採取系依頼を探すべきかな。一応戦闘力はあると思っているので、街の外に出る依頼の方に移動してみる。
そこは少し人が増え、僕より少し年上の冒険者の姿が見える。みんな一生懸命依頼票を見ており、悩んでいる姿がそれでもまだ幼い。だが幼くとも何かの手段で稼がないと暮らしていけない。商人や職人の弟子として働いていない子供は、自分や家族のために危険と隣り合わせで稼がなければいけない。
僕が言う事でないけど、僕はまだ幼いが働かなくとも両親は何も言わないだろう。
だがこれは僕のロマンなのだから頑張るのだ。
頭の中で自分のサクセスストーリーが勝手に描かれながら依頼票を確認していると、後ろから声が聞こえた。
「うぉぉい! ガキがなんでこんなところにいるんだ!! じゃまだ!! ガキは家でママのおっ〇いでもすってるんだな!」
声がしたなと思い振り向くと同時に右足で僕のおなかを蹴り上げようとした。
しかしそのスピードは遅く、僕の目にははっきりと軌道が確認できた。
相手は百九十センチの身長はあるような巨体でマッチョだ。
受け止めるだけでは重さで吹き飛ばされるのが目に見えている。だから僕は蹴り上げようとしている右足を、相手の内側に巻き込むように蹴り上げた。
僕に攻撃を返された男は、左足を軸にコマのように回り、後ろ向きに倒れこんだ。
ゴンっ!!!
いい音がした、これは後頭部強打。このまま起きなければいいのに。
『痛て~~~!!』
『『ぎゃははっー~!!』』
「あいつ子供に倒されてるぜ! ださ!! 自分から絡んでいきやがったのに~、ぷっ~!」
男が何が起きたかわからない様子だが、回りで見ていた他の冒険者は倒れた男を見て笑っている。
僕も大男が小さな子供に転ばされたら笑うと思う。
男は倒れこみながらも顔を真っ赤にして、にらみつけてきた。
また来るかと構えようとしたとき、冒険者ギルドに入ってきたときに声をかけてきたマッチョが目の前に来た。
「お前は馬鹿か! 子供相手に・・・ぷっ~!!」
ここであおりやがった・・・!?
これ以上騒ぎが大きくなるのがゴメンだ。両親も僕に対処を任せているようで何も言ってこないが、流石にこの騒動は終わって欲しい。
「もうやめてよ、僕も怒るよ!!!」魔力を練り上げると、僕の周りが重い空気になっていく・・・。
これだけ周囲の魔素も一緒に操作し練り上げた僕の魔力は、空気を重くしプレッシャーを与える。
両親と依頼をしているときに学んだ知識だ。
『『!!!』』
周りの大人たちが顔を青くしている。やりすぎたか。でもこのままでは僕も抑えられない。あおられるだけならいいが、いきなり暴力に訴える大人は許せない。
あの僕を捨てたクズを思い出す・・・・
ますます僕は力を抑えられなくなってきた。頭がくらくらして、怒りで訳が分からなくなってきた・・・。
理不尽なことをするクズはこの世からいなくなればいい!!!
「そこまでだラウール、やめておけ。もう周りの大人は動けないぞ。お前がそこまでする必要はない。俺がお前の父としてこの場は俺が収める。」
父様の声で我に返った。僕は何をしようとしたんだろう・・・。このままだったら、この建物の中にいる人みんなに大けがを負わせていたかもしれない。
「ラウール安心して。私たちはいつでもあなたの味方。理不尽な暴力は親である私たちが払ってあげる。」
母様も優しく語りかけてくれて。
ここで僕の力もす~と抜けた。
「ごめんなさい父様、母様。僕今日は家に帰りたい・・・。」
「「そうだね、帰りましょう(帰ろう)」」
両親は僕を挟み手をつなぎ、冒険者ギルドを出て家路についた。
僕は色々な思いが頭の中を駆け巡っていたが、やはり僕の両親は父様、母様だと改めて感じた時間だった。
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ラウール達家族が帰ったあとの冒険者ギルドでは。
「やべ~このギルドであの子に何かあれば、あの親にやられる」
「っていうかあの子供にかてるか??」
「なんだよあの殺気!?魔力?」
「瞬殺される!!」
「ってあの身のこなし・・・。体術でもやべー!」
親が見守り、ラウールだけで対処したことによって本人達がいないところで、色々な噂話が広がっていくのであった・・・・。
ミックとララはラウールが一人で冒険者ギルドに来ても活動できるように意図したのかしないのか。本人のみが知る事だった。




