第百八話 再会!!
「ようラウールおかえり!」
「スコットさん! ただいま!」
王都サーシンに着くと、すぐに門番のスコットさんが気づいて声をかけてくれた。
嬉しいけど今はそれどころではない。
王都サーシンに近づくにつれて、ドキドキしてきていた。
久しぶりに会える父様、母様。
どうしよう……おやじ! おふくろ! って呼んだらびっくりするかな?
スコットさんから王都に入る許可をもらい、通りなれた道を先に進むと、実家が徐々に近づいて来る。
サクラとクロウも紹介しないと……
どんどん僕の気持ちは高ぶっている。
家が見えてきた。
久しぶりの実家……
何も変わっていない。
僕は一歩一歩前に進んで行った。
そして実家に到着し玄関のドアに手をかけると……鍵がかかっていた……
「そうだよねーー今の時間は仕事に行ってるよねーー」
「ラウール、今は不在なの両親は?」
「うん。今は仕事の時間だと思う。ちょっと急ぎすぎたかな……」
そうサクラと話をしていると後ろから声が聞こえてきた。
「ラウール!! おかえり!」
母様?
「お帰り!」
父様?
突然の事でなかなか声が出なかった。
「…………父様……母様……仕事は?」
「スコットさんが使いを出してくれたの! 門を通った知り合いに声をかけてくれてね! そうしたら治療院の人も早く帰れって! 大きくなったわねラウール。」
「俺も同じかな。話を聞いた孤児院の院長が、早く迎えてあげてって言ってね。」
ありがたい……院長のコリンさんかな?
ミックとララはラウールを抱きしめた。
ラウールが苦しくなるほどだった。
「会いたかった……。それでも旅に出したのは私達……。でも……元気に戻ってきてくれた……。ありがとうラウール。」
「僕も……」
僕は泣いてしまった。
心が中年の十六歳が泣いて誰が得をするのか、という事は置いておいて……
嬉しかった……僕を待っていてくれる人がいる。
僕の戻る場所はここだけだ。
こうして感動の再会を果たした家族は家に戻ろうとした。
「ーーちょっと待って! ラウール!私を置いて行かないでよ!」
……
……
「……あっ!」
「あっってなによ! 忘れてたの!?」
「忘れるわけがないじゃないか! ちょっと両親に会った感動で、思うがままに行動しちゃっただけだよ。」
「それが忘れたって言うんじゃない!!」
サクラは笑っていた。
僕がわざとやっていた事にも気づいていたから。
この旅で僕の性格がだいぶ分かったのだろう。
僕は、恥ずかしい時は素直になれないのだ!
そして、隣にいたサクラに気づかないわけがないだろう。
両親も同じでチラチラ見ていたし、気づいていないわけがない。
ちょっとリョウシンも茶目っ気をだしていた。
「ラウール紹介してくれ。その彼女の名前は?一丁前に恋人を作ったから帰ってきたのか?」
「ちょっと! 父様! 違いますよ。僕達は友達ですよ。仲間、パーティー、一緒に旅をしてるんです!」
「そんなに焦るなよラウール。ちょっと聞いただけだよ。それでその肩に乗っていた鳥は何だ?」
「クロウは父様と母様に驚いて飛んじゃったけど……従魔だよ。」
「……従魔ってラウール、どうやって手に入れたの?」
「母様、僕は旅をしていたのです。Sランク冒険者になっています。そしてダンジョンに潜っていました。従魔はダンジョンのボスの宝箱から手に入れましたよ。それで僕とサクラの二人の従魔になったんです。」
「んーー後でもっと詳しく教えてね。サクラさんもいらっしゃい。歓迎するわよ。一緒にお家にいてもらっても良いかしら?」
「良いのですか?私は部外者だから、宿にでも行きますよ?」
「そんなことできるか! サクラさん、ようこそ我が家に。この街にいる時は我が家だと思って過ごして。ラウールの仲間は、家族と一緒だよ。」
……
「ありがとうございます。なんとなく一緒にいるのも悪い気もしますけど、一緒にいさせてもらいます。」
一通り話をしてから家の中に入った。
サクラも緊張はしているがちゃんとついてきている。
一部屋をサクラに使ってもらうくらいの広さはある家だ。
僕も自分の荷物を自分の部屋に置き、みんなが一緒に過ごす部屋に移動した。
全員揃ったところで父様が歓迎のあいさつをして、僕の旅の話を聞きたがった。
しかし母様が「もっとゆっくり聞きましょう」と言って、食べ物や飲み物を準備し始めた。
その準備を待っている間に父様は色々と聞きたそうにしていたが、我慢するためか無言になった。
全員が揃い食事も開始した。
母様の手料理は久しぶりで、僕は泣きそうになってしまった。
長い旅の話をした……
ロドリゲスとローリーのことも話した。
初めは一度戻ってこようと思った事。
しかし、カシマスさんと言う冒険者のおかげで何とか旅を続けることが出来たこと。
カシマスが悪者の役割りを受け持ってくれたおかげで、今の自分があること。
自分の両親はリックとララしかいないと話した。
父様と母様は泣いていた。
そして、周りを見るとサクラが泣いていた。
クロウだけは涙は出ていなかったが……
リックとララは安堵した。
ラウールの心のつかえが一つとれた事で……
その日は夜遅くまで話声が絶えなかった。
サクラも自分のことを上手く話せていて、僕達家族の輪の中に入れた。
僕もこの短い間に凝縮された旅の思い出を語った。
この世界で初めてお酒も飲んだ。
十五歳からはお酒飲んでも良いようだ。
酔いもあり全員が楽しく会話をし、疲れて同じ部屋で寝てしまっていた。
一息ついた旅。
安心する場所。
ここがあるから僕は旅に出ることが出来る。
これからは、転移で戻ってくることもできる。
選択肢も増えて、これからまた旅立つことに思いをはせたラウールだった。




