表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

106/153

第百六話 顔ぶれ

ラウールが気合を入れて冒険者ギルドのドアを開けた。


……


ガチャ!


ラウール達が中に入ると、中にいた冒険者は一瞬品定めをするように目を向けた。

大体の冒険者はすぐに視線を戻したが、何人かの冒険者がそのまま固まっている。


「漆黒の翼……?」

「あいつが帰ってきた……」

「でかくなったな。漆黒の翼だよな?」

「おい!仲間に伝えておけ!見たことのない奴にはあいつらの特徴を伝えろ!」

「この街にまた……」

「久しぶりだなーー元気だったのかなーー」

「誰だあいつ?やけに注目されてるな?」


サクラが……

「ぶふっ! ラ……ラウールさん?漆黒の翼の……ご帰還だーー!ってしなくて良いの?」


「おい! それをネタにしないでくれよーー。僕だって言われたくてこうなったんじゃないから……」


「でも……ぷっ……一目見て思い出させるなんて……恐怖の大魔王はラウールだった!」


「んーー! 冗談でもやめてよ!」


「ラウール凄い!我もすごい!」


「クロウはわかってないだろ……。ここにいてもしょうがないから、えーーと……あっ、いた! やっぱり何かあったとしても、知ってる顔があるのは良いな。」


そう言って受付にいたチルミの列に僕は並ぼうとした。

すると僕が進んだ方向の冒険者が道を開けた……

僕を見たことのない冒険者は、周りの冒険者に話を聞いた後……やはり道を開けていた。


「は~、こんな状態か……。僕はまだ何もしてないのに……」


……


すぐにチルミの目の前に到着してしまった。


「こんにちはラウールさん、お久しぶりです。あれから何年か経ちましたけど、まだまだこの冒険者ギルドではあなたの話題が出ていますよ。」


つい額に手を当て絞まったが僕は眉間に皺がよっていただろう。

「まだですか……だけど……今回すぐに王都サーシンに移動するので、そんなに怖がらなくても良いと、周りの冒険者に伝えてください。」


「そうですか……少し依頼のご相談もしたかったのですが、冒険者プレートを見せていただいてもよろしいですか?」


「もちろん良いですよ。」


そう言った僕は冒険者プレートをチルミさんに渡した。

受け取ったチルミさんは一瞬目を見開いたが、僕の冒険者ランクや履歴を口に出すことはなかった。


返してもらった冒険者プレートをしまうと、もう冒険者ギルドには用事がないので帰ろうとした……


「ちょっと待ってくださいね。いつになるのか分からないけど、この国に戻ってきたら一度会いたいと、クロース様から伝言を承っております。クロース様は一年に一度手紙の交換に自ら出向いていましたよ。」


「へーーだったら伝言を飛ばしてくれたら良いのに。」


「それはラウール様がこのくらいになっているとは思っていなかったのでしょう。それに送る側にも力がないと、結局は伝言が届かない時もありますから。相手が毎回きちんと、誰と誰の伝言は受け取ってほしいと伝えないといけませんよ。」


僕はやってない……

はーー


「あっーーそこまでしてなかった……それだと届かないよね……」


手紙を受け取り僕は今度こそ受付を離れた。

すると目の前からまぶしい人物が現れた。


「うっ! まぶしい!!」


「お前は変わらないのか? そしてまぶしいわけがないだろ!!」


そう、目の前にはナダルが立っていた。

ナダルはこの冒険者ギルドで真っ先に僕に絡んできた人物だった。

少し大人びた程度で何も変わらない。


「だって光ってるもの。」


「光ってない。さすがに髪がないくらいでは光らん!」


「そう……久しぶり! 元気にしてた?」


「おうよ! 俺もゆっくりかもしれないが、Cランクになったぜ!」


「へーーおめでとう! すごいね!」


「ありがとよ。だけどラウールはもっとすごいんだろ?」


「んーー僕はSランクになったよ。それにパーティーメンバーがいるよ! 今は【黒猫】って言う冒険者パーティーなんだ。僕の隣にいるサクラと僕と……肩に乗ってるクロウと旅をしているよ。」


「んな! 隣の女の子も……。負けた……。だけどやっぱりすごいなお前ら。俺もクラン【希望の家】に入れてもらったが、お前ら凄い! ここにギルマスがいたら慌てただろうな。」


「ギルマスはいないの? 魔物に殺られた?」


「勝手にギルマスを殺すな! ただ王都サーシンに行ってるみたいだぜ。」


「へーー僕たちもすぐにサーシンに行くから、もしかしたら会うかもね?」


「そうか……すぐに行くのか。カシマスさんには会わないのか? 時々懐かしそうにお前らのことを話してるぞ。」


……


「カシマスさんにはお世話になりっぱなしだから、出発前に挨拶はしていくよ。あっ……そうだ。明日伺いますって言っておいてよ!」


「おうよ! ラウールが来るって聞いたら喜ぶぜ。じゃあ俺は一回クランの拠点に戻るよ。」


……


そう言ってナダルは冒険者ギルドを出て行った。

後姿を見送ったラウールだが、用件が終わったので冒険者ギルドから出た。

ラウールがいなくなった冒険者ギルドでは……



「漆黒の翼がパーティーを組んだってな!」

「俺は聞こえたぜ! あの女の子もSランクだって!」

「性別は強さに関係ないが、まだ子供に見えるのにな……」

「私も負けた……私はCランク…。」

「……っていうか、漆黒の翼は何歳だ?」

「肩に乗っていた鳥は何だ?」

「俺はデーブン情報でラウールの事は聞いてるから、目も合わせないぜ!」

「デーブンってなんだ?」

「なんでも荷物運び情報網を作ってるやつみたいだぜ。この街にもよっただろ。」




……この街でもデーブンの軌跡があったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ