第百五話 ロマン武器の注文
「こんにちはロビンさん!今日も頑張ってる?!」
「おう!いらっしゃい……身分を証明する物を!」
「はい!」
「ーーやっぱりラウールか! 何年ぶりだ! 元気だったか!」
僕はロビンさんと握手をしたが、後ろにまだ大勢の人が並んでいたため「僕は頑張っているよ」とだけ伝えて街に入った。
僕は久しぶりにサーシン王国の雰囲気を感じた。
「……ここがサーシン王国だよ。サクラは初めてでしょ。いい所だよここは!」
「そうねラウール。なんとなく昔見た物語のような感じね! ファンタジーな感じがする。」
「我も初めて。サクラ、一緒!」
僕達はそんな話をしながら宿屋に向かった。
宿屋わかばはこの街にいた時に通っていたから、懐かしいさを感じながら歩いた。
わかばでは元気にエミリが出迎えてくれた。
そしてオシルも以前と変わらぬ感じで出迎えてくれ、そして僕を覚えていてくれた。
軽くオシルやエミリと挨拶をかわし、各自部屋に荷物を置いて隣の冒険者ギルドを今は無視して、武器を手に入れるためにギアイヤに向かった。
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【武器防具の店 ギアイヤ】
僕は月光を手に持ち店に入った。
「いらっしゃい! なんでもあるぜ! 見て行けよ!」
……
……
「……いつも通りですね……。この武器も調子が良いですよ。」と僕は月光を見せながら返事をした。
目の前のドワーフは僕の顔をじろじろと見て、誰だこいつはっ!と言いたいような顔をした。
だが手に持っている月光を見てから、はっとした表情をした。
「あの時のお子様で? でかくなりやがったな! 何度かこの店に来た記憶はあるが、その剣がなければ思い出さなかったぜ。」
「ソウデスヨね。ほとんどここには寄っていませんものね……。だけど今日は武器を見せてもらって、欲しい形の武器がなければ注文したいんです!」
「おう! ここは鍛冶屋じゃ! なんでも言ってみろ。」
「じゃあサクラの欲しい武器について説明してあげて!」
僕の後ろからサクラが出てきた。
サクラを見たドワーフの男は、サクラの体を上から下までじろじろと観察をした。
「そのおなごか? どんな武器が欲しいんだ? 短剣か? それとも魔法使い用の杖だとほとんどないぞ。」
「……大鎌を下さい!」
サクラは自分の武器を見せた。
そして、これくらいの大きさは欲しいと手も使って説明を始めた。
まったく物怖じをしないサクラ。
さすがロマンを追い求めて、ようやく武器が手に入るかもしれないと言う興奮……
「んーー今そういうのは無いな。……作るか?」
「はい! 作ってください!」
「では具体的にどんな武器にしたいのか説明をしろ!」
サクラは求める物を説明し始めた。
ダンジョンで困らない程度に大きい物。
持ち手は刃とバランスをとっった長さ。
丈夫な物。
刈り取るように切れるもの。
刃の先は突き刺せるようにしてほしい。
「……フム……なるほどな……。よし!素材は何にする? 鋼鉄か? 何か素材の希望はあるか?」
「ミスリルならいくらでもありますけど……ラウール?使って良いよね。」
「良いよサクラ、ミスリルならいくらでも出しますよ!」
「……そんなに簡単に言うのか! ミスリルは貴重なんじゃぞ! しかし……使えるなら上等な素材だ。持ち手もミスリルにするか?」
「持ち手は……骨なら、レッドかアースか……ドラゴンの骨なら沢山ありますよ。ラウールと一緒にいっぱい倒したから!」
「……おい! いっぱい倒したってお前ら……高ランク冒険者か?」
「はい。僕はこの街から出て旅をしてたら、Sランクになっちゃいました。ロマンな大鎌が欲しいサクラもだけどね。」
目の前にいるドワーフの男は頭を抱えた。
「そんなに貴重な素材を使うのに大鎌の形か」と小さな声が聞こえる。
「高ランク者は変わり者が多いのか」とも呟いている。
「わかった。俺はイヤードな! 兄は今はいないから、完成まではしばらく時間がかかるが良いか?」
「はい! 私達はもう少しこの国を楽しんでるので大丈夫です。」
そう言ってミスリルやドラゴンの素材をイアードに渡した。
イアードは目を丸くしていた。
なんでもこのダンジョン産のミスリルは質が良くて、買うとなるとかなりの額になるだろうと言った。
そして骨はレッドドラゴンの大腿骨を取り出し渡している。できるだけ真っすぐで丈夫な所と言われたから。
注文を終えて僕達は店を出た。
出来上がりに大体二週間はかかるそうだ。
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「じゃあ冒険者ギルドに行く?僕たちは一応サーシンに一時的に拠点を置くけど、この国にいることは伝えておこうか?」
「そうね。私は初めてのサーシン王国の冒険者ギルドによるから楽しみよ!」
僕達は冒険者ギルドに行った後は、宿に戻り休もうと考えていたから買い物も済ませた。
思うような武器を注文出来たサクラは機嫌が良い。
僕とクロウもその姿を見て気分は高揚していた。
冒険者ギルドに近づくにつれて頑丈な鎧を装備した者や、武器を携えた者が増えてきた。
見るからに冒険者のような格好の人が多い。
ただ僕が知っている冒険者にはまだ会っていない。
何か段々緊張してきた……
冒険者ギルドでは絡まれたんだよなーー
あの時の冒険者はまだいるかなーー
チルミさんやギルマスも変わらずにいるだろうか?
サーシン王国から旅立つ時はクロースやクリスもいたんだよな。
あの二人は元気かな?
結局ここまで一度も冒険者ギルドに伝言もなかったし、元気にしてると良いけどな。
……漆黒の翼は封印だな……だれも絡んでくるなよ!
色々な考え事をしながらも、僕達は冒険者ギルドに到着した。




