第百三話 ラウール達の待ち時間
オークションの開催日が三日後という事は、今日休んだ後はもう二日待つ必要がある。何をして過ごそうかな?
意外に疲れていた僕達は宿に戻り、夕飯を食べた後は眠った。
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朝になり食堂で僕はサクラを見つけた。
「おはようサクラ。今日は何をする?」
眠そうな表情をしているサクラが僕を見た。
「おはようラウール、クロウ。……いきなりな質問ね? ラウールはどう考えてるの?」
話ながら僕達は同じテーブルに位置どり、椅子に座りながら僕も答えた。
クロウは僕の左肩に乗っている。
「んーー僕はサクラが一日、僕が一日行きたい場所に行けたら良いかなって思ってる。それでオークション当日にサクラが欲しいロマン武器がなければ、少しサクラのロマン武器を探す時間にしたいと思ってるんだけど。」
サクラはロマンの大鎌を探したい。
僕のロマンは従魔を手に入れる事だった。その目標は達成したから、次はサクラのロマンを追う時間だと考えている。
「私のロマンティックが止まらない武器をここで手に入れる事ができる!?」
ロマンティックがって……サクラはまだ寝ぼけているのか?
「私の大鎌……ロマンの大鎌……どうせなら死神が持っているような大鎌に鎖をつけて、鎖がまっちゃう? それとも包帯を巻き付けて、包帯を持って振り回しちゃう? ふふふふ……」
低血圧か?せん妄にでもなっているのか……
そんな朝の挨拶が終わり、朝飯を食べた。
そして今日は武器屋巡りをすることにした。
大通りに面したところに商店が並んでいる。
武器屋も多くあり、店の中を覗いて見るがサクラが好む武器はない。
どんどん歩いて店を確認していくが、大鎌はあることにはある。
誰が、どんな冒険者が使うのかはわからないが、確かにある。
僕は一度売っている大鎌を手に取ってみた。
二人の人間が黒いフード付きのローブを身に纏い、大鎌を振りかざす。
その片割れの男の肩には黒い鳥、魔物……。黒い髪をなびかせて時には肩に乗っている魔物が魔法を唱える……。出会った敵を殲滅して歩くその姿は……死神……
うん、想像を止めよう。
僕たちは冒険者パーティー【黒猫】、猫だよ気ままにだ。
その後もサクラのロマンを探しているが……見つからない。
そこで目の前に冒険者ギルドが見えたため、冒険者ギルドで良い武器屋はないか聞いてみることにした。
冒険者ギルドに入ると人が溢れかえっていた。
第十三都市は中心都市。
やはり人は中心に集まるようだ。第十三都市は、冒険者ランクが高くても低くても集まりやすい雰囲気があるようだ。
若い冒険者はベテラン風の冒険者と話をして、ベテランの冒険者は依頼票を見ている若い冒険者に声をかけている。
今までの冒険者ギルドも良い雰囲気の所があったけど、ここは年長者がしっかりと若年者の面倒を見る。年長者が若年者の成長を促す。
前世では見られなくなった光景に思えた。
……思い出すと足の引っ張り合いの世の中だった。
出る杭は打たれる……
出ない杭は出せと言われる……
打ちすぎだよ……矛盾しているよ……
愛情を感じない厳しい指導はただのいじめだ……
ちょっと暗い方向に思考がそれた。
この中で誰に聞いたら一番良いのかな?
辺りを見渡していると「よっ! ここは初めてか?」と言って元々はイケメンだった顔が、年をとり年齢相応のイケメンになったような男が声をかけてきた。
「はい、初めてです。ちょっと用事があってこの都市に来ました。どこか良い武器屋がないか?もしくは鍛冶屋がないか聞けたら良いなと思って、冒険者ギルドに寄りました。」
「ーーそうなのか。この街は中心都市だが交易都市だ。鍛冶が盛んな都市ではない。交易で成り立っている都市だから、既に作られている物を探すのが一番だ。……どんな武器を探しているんだ?」
「大鎌です!!」
サクラが即答だ!
「大鎌か……なかなか玄人好みな武器だな。んーー大鎌……大鎌は……おーい! だれか大鎌で良い物が置いてある店を知らないか?」
目の前の男が冒険者ギルドに響く声で皆に聞いた。
「大鎌……んーー見ていない。」
「あそこの店の大鎌は粗悪品。」
「大鎌? 難しいな……」
「斧なら良い物があったが……」
「大鎌、大鎌、んーー?」
周りに集まった冒険者も武器屋の商品を思い出してくれているようだ。。
しかし誰も思いあたらない……
「悪いな。今すぐ思い付く武器屋はないみたいだ。そういう時はオークションに行ってみたらどうだ?」
目の前の男も思い付かずにそう言って申し訳なさそうにしている。
そして近くにいる冒険者も同様な態度で頷いている。
「ありがとうございます! こんなに親身になってくれて。うれしいです! 一応オークションにはいってみる予定なので探してみます!」
そう目の前の男に告げ、何か皆が困っている時は自分も力になりたいと僕達は伝えて、冒険者ギルドを後にした。
「やっぱり難しいねサクラ。これはオークションにかけよう。それでもなければ、他の国に行ってでも探してみよう。僕はその時はまだ大鎌なんて気にもしてなかったから記憶にもないけど、サーシン王国の鍛冶屋にでも行ってみよっか?」
ちょっと笑みを受かべてサクラも返事をする。
「そうね。サーシン王国だったらラウールの両親にも会えるのね。一度会ってみたいなーー」
「そう? じゃあオークションでも大鎌が見つからなかったら、他の国を後回しにしてサーシン王国に行く?」
「行く!! 見つかっても先に行きたい!!」
サクラが予想以上に食いついてきた。
僕も一度戻っても良いかと思っていたから、転移もあるしちょっと戻ってみようかな?
「じゃあーー大鎌があってもなくても一度転移でテザン皇国まで戻って、そこからフイエウ共和国を最短距離で移動してサーシン王国に戻ろうか?」
「うん!そうしよう!」
僕達はオークション後に里帰りをすることに決めた。
父様、母様……元気かな?
サーシン王国に行った時にやりたいことを楽しく話ていた。そして楽しく話をしていると時間が経つのも早く、今日はオークション当日だ。




