第百二話 ロマン武器の情報
思いもよらなかったが、魔物の卵も手に入れてしまった。
だからサクラの従魔を誕生させるか聞いてみたが、サクラは一匹の従魔に愛情を注ぎたいという事で、魔物の卵は孵化させない事にした。
僕も従魔はクロウだけで充分なので、魔物の卵はどこかに売ることに決めた。
だから僕達は今日三度目になるが冒険者ギルドに来ていた。
冒険者ギルドの受付にはまだギルマスが座っていて、暇そうにしていた。
そこで僕達は今回もギルマスのところに向かった。
「ギルマス、今暇?」
「おい! いきなり失礼な。俺は暇そうに見えても暇ではないぞ!」
その割に頬杖をついて冒険者ギルド内を見渡しているだけだったじゃないか……
「じゃあ、暇でないかもしれないけど、ギルマスに質問しても良い?」
「良いぞ。俺は忙しいがラウールの頼みだ、聞いてやる。」
その返事を聞いた僕はギルマスに相談した。
この籠には魔物の卵が入っているという事を小声で話した
そして今回手にいれた魔物の卵は僕達はいには必要がないので、どこかで売ることが出来ないかと聞いてみた。
「……んーー冒険者ギルドで買い取ることも無理をすればできるが……オークションに出品してみたらどうだ?」
「オークション?」
「そうオークション。第十三都市では定期的にオークションが開催されている。そこに出品したら一番良い買取り額になると思うがな。」
「んーーオークションに出品するなんて目立たない?」
「オークションへの出品者の名前はどうしても有力者には知られてしまうだろう。しかしここは交易都市。良い物を出品してくれる者に害を与える有力者はいないだろう。」
「そうなの?だったら良いけど……。オークションっていつあるの?」
「オークションは一週間に一度開催される。これから出品するために移動して、到着してから最大でも一週間の待ちで開催されるだろう。俺が推薦状を書いてやるよ。」
「推薦状?」
「そうだ。ただ物を持って行っても受け付けてくれるが、審査が厳しい。だったら推薦状があった方がすぐに審査を開始して、時間もそんなにかからない。……信用があるんだぜ俺の推薦状は……」
「そうなんだ、だったらこの籠の中を見て物を確認してよ。それでギルマスが認めてくれるなら、推薦状を書いてもらえたらありがたいな。」
そう僕が言うとギルマスは、籠の中身が周りからは見えないところで確認した。
無事に魔物の卵であることがギルマスから保証され、推薦状を書いてもらえる事になった。
「オークションが終わったら一度は第三都市に帰って来いよ。都市間は道が整備されているから、第十三都市までも三日もあればつくからな。一日移動する間隔で宿場町もあるからな。」
「へーー良いねその便利な感じは!」
「あーーこの交易都市は大陸の中心に行くほど警備が厳重になって、魔物も定期的に討伐されてるからな。その分冒険者ランクが低い奴から中堅までもが討伐依頼には困らないんだぜ。」
道中の説明も受け、オークションの為に明日早々出発してしまおうと考えてた。
ギルマスの説明で、オークションには色々な物が出品されることも知った。
魔道具から装備品、美術品。魔物から人間。従魔にできなくとも、魔物もオークションに出品されることがあるそうだ。金持ちが他の人に見せびらかすために購入するそうだ。
そして一つの疑問、なぜ都市の名の数字が第十三都市なのか聞いてみた。
時計と同じような配置の都市。
一から十二までの都市があり、零都市がなく中心が十三都市になっているのはなぜか?
ただ前世の時計と比べただけの間隔で不自然に違和感を感じただけなのだが…移動気になった。
だが……ギルマスにも何故かはわからなかった。
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一晩寝て起きた僕達は宿を引き払った。
そしてすでに移動馬車に乗っている。
行き先は第十三都市。
オークションには出品者として参加し、良い品物があった場合には落札したいとも考えていた。
交易都市群サザではサクラのロマン武器が手に入ることも期待していたが、まだ見つけることは出来ていない。
第三都市では、鍛冶師の技能が足りないようで、ロマン武器を任せることが出来なかった。
オークションであれば滅多に手に入らない物もあるのではないかと期待している。
普通の冒険者は使わない武器として出品されるのではないか……
旅路は順調で、道中も魔物は出現せず先に進むことが出来た。
そして予定通り三日で第十三都市に到着した。
第十三都市はさすがに門が十二箇所あるわけもなく、四つあるいずれかの門から出入りするようだ。
門番はここでもいなかった……誰でも身分証明をせずに入れる状態であった。
門に到達する前に考えたが、街道の魔物を討伐する体制は整っているようだが、不審者が都市に入り込まないようにする体制はないようだ。
門に立つ人物は、門の開閉係だそうだ。
第十三都市でも目についた都の人に聞いて、結局は宿屋わかばに宿泊を開始した。
宿に一泊し朝におかみにオークション会場の場所を聞いてから移動し、特に何事もなくオークション会場に到着した。
オークションは三日後に開催される。
今日出品依頼品を渡すと、出品依頼品の審査が速やかに終了した場合は、今回のオークションに出品できるそうだ。
オークション出品依頼受付に僕は声をかけた。
「すいません。オークションに出品したいのですが?」
「はい、こちらで承っております。この先に進み、中の担当の者に声をかけてください。」
そう言われて示された方向に進む。
「いらっしゃいませ。どのような物を出品されますか? あっ、こちらのお部屋にどうぞ。」
二つ目の受付で誘導された場所に僕達は行き、示された部屋に入った。
そこには一人の屈強な男も立っていた。
「こちらの部屋にはトラブル防止のため、我々を守る者もおります。そこはお許しください。……それではどのような品を出品されたいのでしょうか?」
そう言われた僕は、魔物の卵を取り出し目の前の者に見せた。
「これは…………魔物の卵……本物……?」
やはり魔物の卵は珍しかったようだ。
目の前の者はすぐに他の者も呼び、部屋が狭くなるほどの人数が集まった。
そして全員であーでもない、こーでもない、これは本物だ、などと言ったりして確認作業をしていた。
……
……
しばらく目の前で繰り広げられる百面相を見ながら待っていると、ようやく意見がまとまったようだ……
「……申し訳ありません……。この度は興奮して……お客様の目の前でこのような姿をお見せしてしまい……。普通であればすり替えを防止する作業を行い……我々だけで確認するのですが……。今回持ち込まれたこの魔物の卵は本物ですね。……目玉商品になる可能性があります。」
目の前の人達は興奮している……
そして預かり証を僕に渡した。
預り証は偽造防止機能があるようで、僕以外の者が魔物の卵やオークション後の売却金を、受け取ることが出来ないようになっているという事だ。
ひとまずオークションまでこの街を観光しようかな?
そう考えていたラウール達だった。




