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続魔獣の壺  作者: 夢之中
9/28

接触

宇宙歴20年、3月3日、異世界


音声:「対象は移動方向を変更し、マイク隊へ進路を変えました。

   接触までおよそ60分です。」


ルードフ:「コンタクト適任者は誰だ?」


音声:「第107隊のキースです。

   接触予想地点までの移動におよそ30分かかります。」

立体マップ上に接触予想地点である赤い球体が出現した。


ルードフ:「接触予想地点にキース隊を移動。

     他の隊も集結、マイク隊は下がらせろ。

     1000m以内にはキース隊以外入れるな。」


30分後、キース隊が目標地点に到着した。

他の隊も周辺に集まっていた。

キース隊は防護服*1を装着すると、3人とも車外へと出た。

それぞれが腰のレーザー*2銃を確認すると

異世界人の到着を待った。

全ての車両が接触予想地点から1000m離れた地点に集まり、

キース隊と異星人が接触するのを見守っていた。



マイク:「あれは人間じゃないか?」

ジョセフ:「確かに人間に見えます。」

ブラッド:「間違いなく人間だ。」

磁気嵐の影響で映像が乱れていたが、映し出されたものを

人間以外に見間違える者は皆無だった。

彼等は腰に剣を携え、背中に盾を背負っており、

服装は動物の皮を鞣したような鎧を身に着けていた。

彼等はキース達に気が付いたのか進路を少し変え、

キース達に向かって真直ぐに歩みを進めた。


ブラッド:「あの武器は中世代の装備だろうか?」

音声:「映像の解析に失敗しました。」

ブラッド:「解析失敗ばかりじゃないか!!」

ジョセフ:「そうイラつくな。

     きっと磁気の影響が大きいのだろう。

     通信の乱れ方も異常だしな。」

マイク:「確かにあの装備は過去の遺物だ。

    我々よりも1000年単位で遅れた文明だということは

    間違いない。

    しかし、何か嫌な予感がする。」

ブラッド:「予感ですか?」

マイク:「あぁ、予感だ。

    彼等は我々に驚きもせずに近づいてくる。

    普通なら警戒するだろう。」

ジョセフ:「確かにそうですね。」

ブラッド:「何も起こらなければいいんですが。」

マイク達は彼等とキース達が接触するのをじっと待った。

異世界人は恐れる事も無く、動揺する事も無く、

真直ぐにキース達に向かって歩いてくる。

そしてついに接触した。

マイク、ブラッド、ジョセフの3人はキースから送られてくる

映像を食い入るように見ていた。

異世界人は見た目は完全に人間だった。


キース:「初めまして、私はキースと言います。」

キースが異世界人の目を見た時、その真っ黒な瞳に自分自身が

吸い込まれて行く感覚に襲われた。

とてつもない恐怖を感じ、背筋が凍り付いた。

それは自分自身が消えて行くような感覚だった。


???:「*#^!>! ̄! ?#<! ^;$$%?? 

    @& !.!%.% ;! ̄&$」*3


音声:「発音の言語は未知のものです。」

その時、突然映像が乱れ、音声もノイズのみになった。

ブラッド:「くそ、なんで重要な時に映像が乱れるんだ。」

音声:「磁気の影響で通信に乱れが生じています。

   回復にはしばらく時間がかかります。」

5分後、映像と音声が回復した。

キース達がゆっくりと車両へと帰ろうとしている映像が

映し出された。

その足取りは重く、任務に失敗しているようにも見えた。


ルードフは接触で何が行われたのかが気がかりだった。

ルードフ:「キース、応答しろ。」

しかし、キースからの返事は無かった。


キース達が車両に戻ると突然車両が動き出し、

同時にレーザー砲の先端が輝きだす。

そして、砲塔が回転を始めた。


マイク:「まさか、攻撃する気じゃないだろうな?」

音声:「キース隊車両、レーザー砲の発射準備。

   レーザー砲の最高出力*4と予想されます。」

ブラッド:「さっ、最高出力だと?!」


砲塔は異世界人に向かって回転して行く。

誰もが驚き、その映像に釘付けになっていた。

砲塔は回転を続け、そして最も近い味方車両に

照準を合わせた。

誰もが我が目を疑った。

次の瞬間、砲身が光に包まれた。

映像は白く光った後、着弾地点に切り替わる。

車両は見るも無残な状態だった。

車両の真ん中に1m程の円形の穴が開き、

後ろの景色が見えていた。

円の縁には赤く光る液体状の金属が滴り落ちていた。


その時、マイクは声を聞いた。

聞いたというよりも浮かんだと言った方が正しいかもしれない。

 (直ぐにその場を離れろ。

 全速力で戻れ。

 お前にはまだ死んでもらっては困る。)

その声でマイクは正気を取り戻した。

モリー博士だ。

どうやったのかは分からないが、確かにモリー博士の声だった。

マイクの指示は早かった。

全速力で洞窟まで戻る指示を出す。


直後、別の声が頭の中に轟いた。

 (@! ̄% ?# ^<#.!+!%)

同時に首から下げた石が光る。

そして車両内部が光に包まれた。

マイクは、その光が自分達を守っているという気がした。


離脱する車両の中でマイク達は見ていた。

何が起こっているのか分からなかったが、

只、映像に見えている全ての車両の砲身が

輝き始めている事だけはわかった。

しばらくして彼等は信じられない光景を目撃することになる。

それは、味方同士が攻撃し合う地獄絵図であった。


指令室はパニック状態だった。

最高出力で発射されるレーザー。

それは味方車両に向けての攻撃だった。

ルードフは呆然と映像を見ていた。

音声:「キース隊車両破壊されました。

   ルーツ隊車両破壊されました。

     :

     :」

次々と破壊報告が耳にはいる。

その音声で我に返った。

ルードフ:「うるさい。

     報告はもういい。」


ルードフはその時気が付いた。

1台の車両が戦線を離脱しようとしていた。

ルードフ:「あれは誰の車両だ?」

音声:「マイク隊の車両です。」

ルードフ:「マイク隊との専用回線を開け。」

直ぐにマイク隊との回線が確立された。

ルードフ:「何が起こった?」

マイク:「わかりません。

    突然キースがレーザー砲を発射しました。」

ルードフ:「では、何故君たちは離脱した?」


マイクは首からぶら下がるペンダントの石を握りしめた。

そして、ペンダントを受け取った時の事を思い出していた。

マイクは突然モリー博士に呼び出された。

この時は何か失敗したのではと、内心びくびくであった。


モリー:「マイク隊長。

    君たちには期待している。

    異世界では何が起こるかわからない。

    そこで君にこれを進呈しよう。」

それはペンダントだった。

鎖には1つの石が付けられており、その石には魔法陣が

描かれていた。


マイク:「それは?」

モリー:「君は魔法を信じるかね?」

マイク:「魔法ですか?

    いやー、信じるかと言われても見た事も

    聞いた事もありませんし、、、。

    しかし、超常現象やオカルトは好きです。

    それに、博士の作ったエネルギー生成装置は

    とても興味をそそられます。

    装置には魔法陣が描かれているとか、、、。」

モリー:「そうだろう、そうだろう。」

モリーはニコニコとしながら頷いた。

モリー:「これは、君達の身を守るペンダントだ。

    但し、ひとつ守ってもらわなければ

    ならないことがある。」

マイク:「何をですか?」

モリー:「大したことではない。

    このペンダントの事を誰にも話してはいけない。

    ペンダントの力の事。

    誰から受け取ったのか。

    それら全てだ。

    これらが守られている限り、このペンダントは

    君達の身を守ってくれる。」

マイクは半信半疑ながらペンダントを受け取った。


そして今回の件である。

確かに守られている。

そう実感せずにはいられなかった。


マイクは答えた。

マイク:「砲塔がこちらに向けて回転を始めたので、

    非難行動を開始したのです。

    味方車両の攻撃を避ける為、戦線を離脱しました。」

ルードフ:「異世界人との接触で何か起こったのか?」

マイク:「突然の攻撃で何が起こったのか分かりません。」

ルードフ:「そうか。

     まずはこちらへ帰還してくれ。

     ゆっくりと話を聞きたい。」


ものの30分の間に部隊は全滅し、

生き残ったのはマイク達のみであった。



*1:防護服

 防護服という名称だが、どちらかというと宇宙服である。

 SFアニメであるような、上下一体型のスーツであり、

 一般的にはヘルメット、スーツ、グローブ、ブーツ、ベルトの

 5点セットで構成される。

 完全な密閉仕様であり、宇宙、水中等幅広く利用されている。

 簡易的な生命維持装置をヘルメットに内蔵しており、

 超小型燃料電池により必要なエネルギーを生成している。

 ベルト部に追加パーツを取り付ける事により

 様々な用途に使用できる。


*2:レーザー

 強いエネルギーを持つ光線を照射し、照射対象の温度を

 上昇することにより溶解する。

 レーザー銃は対人用であるため、出力はあまり高くない。

 車両に搭載されるレーザー砲は高出力であり、

 照射時間にもよるが、数十メートル程の距離であるならば、

 車両を貫通する出力をもっている。


*3:*#^!>! ̄! ?#<! ^;$$%?? @& 

  !.!%.% ;! ̄&$

 言語として分からないものを表現する時に使われる記号羅列。

 一般的には意味の無い羅列であるが、

 稀に変換処理をしている場合もある。

 なお、本作の文中に記載される記号は特定のルールによって

 文字変換している。

 ちなみに「*&???#=<#<!」は、「こんにちは」だ。

 暇な人は解読に挑戦してみるのも良いだろう。


*4:レーザー砲の最高出力

 レーザー砲は出力によって攻撃力を変化できる。

 通常は出力を落とし、対人用として連続発射で使用される。

 最高出力ではエネルギー生成の問題で連続発射は不可能だが、

 車両を沈黙させるには十分な出力を叩き出す事ができる。



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