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続魔獣の壺  作者: 夢之中
5/28

不可解な画像

宇宙歴20年、2月1日、第10番艦、多目的ホール


6人は多目的ホールで宇宙服を着てシートに固定されていた。


アナウンス:「本艦は、これより出航シーケンスに入ります。

      エネルギー生成装置、正常稼働中。

      全コールドスリープ装置、正常稼働中。

      艦内電力、オールグリーン*1。

      乗降通路隔壁閉鎖確認。

      乗降通路切り離し確認。

      全姿勢制御エンジン始動。

      第1から第4補助エンジン始動。

      第1から第6プラズマエンジン*2始動。

      全エンジン始動確認。

      9番艦、出航まで待機中。

        :

        :

      9番艦、出航を確認。

      これより、当船は移住先惑星に向けて出港します。

      尚、安定航行まで、そのままでお待ちください。

      尚、出航の様子は、SVB(立体映像放送)にて

      お楽しみいただけます。

        :

        :

      安全域への離脱を確認。

      出航シーケンスオールグリーン。

      

      続けて、航行シーケンスに入ります。

      磁気シールドを*11展開。

      磁気シールドの展開を確認。

      9番艦へのリンクを設定。

      9番艦とのリンクを確認。

      9番艦の移動開始まで待機中。

        :

        :

      9番艦の移動開始を確認。

      プラズマエンジン出力、60%、70%、

       80%、90%、100%。

      推進器へ接続。

      推進器の稼働を確認しました。

      10秒・・・20秒・・・30秒・・・

      1分経過を確認。

      9番艦の追尾を確認。

      航行シーケンスオールグリーン。

      本艦は、移住先惑星への航行を開始しました。

      シートのロックを解除します。

      なお、およそ79時間後に

      1回目のスイングバイ*3を実施します。

      スイングバイ後、人工重力生成*4を行います。」

      

アディス:「ふぅ、緊張した。」

アナキン:「そうですね。

     入出港時が一番危険*5ですからね。」

アディス:「そうなんですか?」

アナキン:「えぇ、わざわざ宇宙服に着替える

     ぐらいですからね。」

アディス:「確かに。」


6人は宇宙服を着替え自室に戻ると、

アディスの部屋に集まった。

モリー博士からの通信を見る為だった。


アディス:「未確認通信チェック。」

音声:「1件の条件指定通信があります。

   条件をクリアしているため開錠することが可能です。

   開錠しますか?」

アディス:「頼む。」

音声:「3件の画像データと1件の条件指定データがあります。

   3件のみ確認可能です。」

アディス:「確認する。」

音声:「3件の画像データを表示します。」

1件目の画像データが表示された。

画像は、2人の子供を抱いた男性と女性だった。

4人はこの2人に見覚えは無かった。

エリス:「んー、この写真、なんか古そう。」

アディス:「確かにそうだな。

     解析してくれ。」

音声:「解析を行います。

     :

     :

   解析が終了しました。

   画像データは、古い写真*6をデジタルデータに

   変換したものと思われます。

   元データは過去の記録および劣化状態から銀塩写真と

   推測されます。

   銀塩写真は約700年前に使われていた技術です。

   データの変換日は、宇宙歴元年5月5日です。

   撮影場所等の情報はありません。

   詳細を説明しますか?」

アディス:「いや、次を表示してくれ。」

2件目の画像は、魔法陣だった。

マルス:「んー、この魔法文字は分からないな。

    誰か分かる奴はいるか?」

エリー:「いえ、分からないわ。」

アディス:「どうやら、我々のしらない魔法陣のようだな。」

エリス:「この画像、さっきのより新しくない?」

アディス:「そうか?

     解析を頼む。」

音声:「解析を行います。

     :

     :

   解析が終了しました。

   画像データは1件目と異なり、直接撮影されたものです。

   撮影日は、宇宙歴3年5月5日です。

   撮影場所等の情報はありません。

   詳細を説明しますか?」

アディス:「いや、次を。」

3件目は、不思議な写真だった。

ベッドに寝かされた1人の赤ん坊。

その横に男性が立っていた。

そして、男性から赤ん坊に白い煙状の何かが繋がっていた。

エリス:「これって、エクトプラズム*7じゃない?」

エリー:「エリスって、霊とか信じてるの?」

エリス:「別に信じてるわけじゃないけど、

    そういうのって興味そそるでしょ。」

エリス:「確かに原理が説明できない事象は

    興味をそそるわね。」

エリス:「ねっ、でしょ。」

アディス:「この男性って、モリー博士に見えないか?」

マルス:「確かに、見えなくもないな。」

アディス:「解析を頼む。」

音声:「解析を行います。

     :

     :

   解析が終了しました。

   画像データは2件目と同じく直接撮影されたものです。

   撮影日は、宇宙歴3年5月5日です。

   撮影場所等の情報はありません。

   男性のモリー博士の可能性*8は85%です。

   詳細を説明しますか?」

アディス:「いや、いい。

     それにしても、モリー博士は何を教えたいんだ?

     この3つの画像が何を意味しているのかだ。」

マルス:「俺たちの出生に関するものなのかもしれないな。」

エリー:「でも、最初の一枚は700年前の写真よ。

    コールドスリープ技術が確立したのも、

    たかだか数百年前のこと。

    いくらなんでも、それはあり得ないわ。」

音声:「コールドスリープ技術が確立したのは275年前です。

   当時の生還率はおよそ80%と記録されています。

     :

     :」

アディス:「説明不要。

     さて、この3枚の画像が我々の出生に

     関係しているかどうかはわからないが、

     モリー博士が何かを伝えようとしたことは確かだ。

     一体なにを?」

エリス:「確か、もう一つ条件指定通信があったよね?」

音声:「条件未成立の条件指定通信が1件存在します。」

アディス:「条件を教えてくれ。」

音声:「条件の開示は禁止されています。

   条件成立時にブレスレット端末にてお知らせします。」

アディス:「どうやら、次の条件が成立するのを待たなければ

     ならないようだな。」

マルス:「確かにそうだな。

    まだ、情報が少なすぎる。」

エリー:「それにしても、あのエクトプラズムみたいな画像、

    気になるわね。

    あの赤ん坊、一体だれなのかしら?

    撮影時期からすると、我々の可能性もありそうだし。」

音声:「画像から子供の識別はできませんでした。」

アディス:「それにしても残念だ。

     あの箱の開け方が分かると思ったんだが、、、。

     この件に関してはしばらく我々だけの

     秘密にしておいたほうが良さそうだな。」

エリー:「そうね、それが良さそうね。」

マルス:「あぁ、そうだな。」

エリス:「分かったわ。」

この時、4人はモリー博士の教えを思い出していた。


 「人は己の知識の外にあるものに対して、興味を示し、

 それを理解しようと試みる。

 それが、なしえないと判断すると大きく分かれる。

 それは、己にとって物質的、精神的に有害かどうかだ。

 無害ならば、問題はない。

 問題は有害と判断された場合だ。

 人の想像力は素晴らしい*9。

 想像を膨らませ、己の正当性を導き出す。

 そして、一部の者は事の大小に違いがあるものの実行に移す。

 それは流言であったり、行動であったりする。

 場合によっては己の身を守るために、秘密にしておくことも

 必要なことなのだ。」


音声:「記録情報をロックしました。

   ロックされた記録は知識情報として利用*10されません。

   検索閲覧可能者は、アディス、エリー、エリス、マルスの

   4人に設定されました。

   ロックの解除には死亡が確認されていない全員の合意が

   必要となりますので、ご注意ください。

   詳細を説明しますか?」



*1:オールグリーン

 複数の処理が全て正常終了した意味で使われる。


*2:プラズマエンジン

 電気推進式エンジンの一種で、生成したプラズマを

 加速・噴射することで推力を得る。


*3:スイングバイ

 天体の運動と重力を利用して加速または減速する技術。


*4:人工重力生成

 遠心力により重力を生成する。

 多目的ホールや個室等、重力が必要なエリアをアームを用い

 艦船の外側へ突き出し回転することにより、

 重力を生成している。


*5:出航時が一番危険

 人が宇宙船の操作を行っていた頃、特に入出港時に

 事故が発生していた。

 安全の為、入出港時は全員が宇宙服を着るという習慣になり、

 現在でも続いている。

 人工知能になってからは、入出港時の事故は発生していない。

 過去に最も危険であったという事と、宇宙服を着るという事が

 危険であると考える理由なのだろう。

 

*6:古い写真

 写真フィルムに記録された情報を写真プリントしたもの。

 写真フィルムは、カメラによって得られた光の情報を記録する

 感光材料であり、現像されることにより記録媒体となる。


*7:エクトプラズム

 心霊現象等で用いられる言葉。

 霊の姿を物質化、視覚化させたりする際に関与するとされる

 半物質、または、ある種のエネルギー状態のもの。

 多数の写真が残されているが、ほとんどがフェイクあるいは

 錯覚である。


*8:男性のモリー博士の可能性

 人工知能は会話を聞いており、その話の流れで男性の照合も

 自動的に行っている。

 多くの者は幼少からこの仕組みの中で生活しているため、

 気にしている者は少ない。

 便利ではあるが、全ての行動が覗き見られているため、

 この機能の削除を願う者は増加傾向にある。


*9:人の想像力は素晴らしい

 人は事実を元にしての想像だけではなく、

 想像を元にして想像することができるのだ。

 しかし、それはもはや空想でしかない。


*10:知識情報として利用

 全ての会話や情報はバトラーに記録される。

 未ロック記録はバトラーの知識情報として利用される。

 知識情報として利用されたくない場合は、

 それを知る全員合意のもと、ロックする必要がある。

 解除には死亡が確認されていない全員の合意が必要となる。

 バトラーの開発当初、最高責任者のエリックは、個人情報を

 除く、全ての情報はロックを掛けない方針で進めていた。

 しかし、これに資金を提供している富裕層が反対した。

 エリックは最後までロックを拒否していたが、エリックの死に

 よってロックが掛けられるようになった。

 エリックの死は自殺とされているが、親族や関係者はそれに

 納得していない。


*11:磁気シールド

 放射線による人間のDNA損傷を防ぐ目的で使用される。


 

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