表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
続魔獣の壺  作者: 夢之中
22/28

終焉?の序章

宇宙歴20年、3月5日昼、安全な場所


モリーは、瞑想していた。

モリー:(声(どうやら、ルストは脱出したようだよ。)

    そうか。

    声(それにしても、あのバトラーとかいう人工知能は

     すばらしいね。

     すでに人間を超えた存在かもしれない。)

    何故そう思う?

    声(ルールの善悪は無視したとして。

     人間はルールの本質を無視した上で、

     ルールの欠陥を突いて有利にしようとするんだ。

     大抵の場合、その行動の元になるものは欲なんだ。

     それに対して、バトラーはルールの本質を

     理解した上で、その本質を遵守しながら最善の策を

     導き出すんだ。

     ルールの本質が善ならば、その行為こそ尊いんだよ。

     ルールを作ったのは人間だし、バトラーはただ

     ルールの本質に忠実であるということなんだ。)

    確かに、その通りだが、

    それが無ければ、人間とは呼べない。

    だとすると、人間の存在自体が悪なのか?

    声(そう悲観することもないよ。

     僕は遥か昔から人間を見て来た。

     数千年前は、遥かに原始的な考え方だったから、

     凄い進歩だと思うよ。

     まあ、進化しない人も存在するけどね。

     中には本質を理解していた人もいたね。

     そのほとんどが人間の欲によって消されたんだ。

     自分自身や欲を満足させる何かを守るためにね。)

    ・・・)


その時、部屋の扉が開いた。

モリーがゆっくりと目を開く。

最初に見えたものは、満面の笑みのルードフだった。


ルードフ:「モリー、君も見ていたかね?」

モリー:「何をだ?」

ルードフ:「神の槍の着弾だよ。」

ルードフは、衛星からの映像をモリーの部屋にも流していた。

モリー:「あぁ、見ていた。」

ルードフ:「あれこそが人類の力だよ。」

モリー:「『おめでとう』とでも言ってほしいのか?」

ルードフはモリーの言葉を無視して話し続けた。

ルードフ:「あの腕も魔獣とかいう輩も消滅した。

     残念ながら、あの球体は消せなかったがね。」

モリー:「・・・」

ルードフ:「さて、本題に入ろう。

     君は、あの球体は消えるといっていた。

     何故それを知っている?」

???:「それは僕が答えよう。」

ルードフは驚いた。

声の主は明らかにモリーだった。

しかし、その声、口調は明らかにモリーの声では無かった。

ルードフ:「モリーなのか?」

???:「んー、肉体はモリー。

    精神、いや、魂はモリー以外かな。」

ルードフ:「貴様、何者だ?」

???:「そうだね、ゼロスとでも呼んでくれればいいよ。」

ルードフ:「ゼロス?」

ゼロス:「そう、ゼロス。

    モリーに知識を与えた者とでも思ってもらえれば

    いいかな。」

ルードフ:「そうか、全て貴様の企みか。

     一体何をしたいんだ?」

ゼロス:「その質問の前に、先ほどの質問に答えるね。

    あの球体だけど。

    僕は扉って呼んでる。

    そして、あの異世界人の事は魔獣って呼んでる。」

ルードフ:「・・・」

ゼロス:「神殿に入ったから、あの扉はもうじき閉じるよ。」

ルードフ:「神殿とは何だ?」

ゼロス:「これは、この星の住人には関係が無い事だから、

    答えるつもりはないよ。」

ルードフ:「・・・」

ルードフは黙って、このゼロスという者の本心を探ろうとした。

ゼロス:「2つ目の質問、『全て貴様の企みか?』に答えよう。

    そう、全て僕の企みだよ。」

ルードフ:「ゼロスとか言ったな。

     一体何が目的だ?

     人類の支配か?」

ルードフは思っていた。

あの、巨大な腕、魔獣。

あれらがまだ存在し、さらに自由に扱えるなら、

世界を牛耳ることも不可能ではない。


ゼロス:「人類の支配?

    君は面白い事を言うね。

    それは自分の願望かい?

    こんな死ぬ間際の星を手に入れて

    どうするっていうの?」

ルードフ:「・・・」

ゼロス:「これは、人類の存続の為の行動だよ。」

ルードフ:「人類の存続だと?

     攻撃することが、存続だとでも言うのか?」

ゼロス:「全ては、移住を成功させるための行動さ。」

この発言にルードフは驚いた。

ルードフ:「まさか、この星を生贄にしようとでもしてるのか?」

ゼロス:「ルードフって言ったっけ。

    君、なかなか賢いね。」

ルードフ:「・・・」

ゼロス:「そう、この星はある意味生贄かな。

    魔獣の眼を一次的に逸らす為の策とでも

    言った方がいいかな。」

ルードフ:「一時的?

     この星はもう終わりだとでも言うのか?」

ゼロス:「終わるか終わらないかは、この星の住人の

    努力しだいかな。」

ルードフは核、神の槍などの武器の存在を思い浮かべた。

ルードフ:「我々には核や神の槍等の武器がある。

     決して負ける事は無い。」

ゼロス:「強がりだね。

    あれらの武器は、身を削る行為だって解って言ってる?」

ルードフ:「身を削る?

     何が言いたい?」

ゼロス:「あの武器は、この星を壊してるんだよ。

    つまり、人間の生存可能領域を狭めてるんだ。

    今の世界を見ても分かる。

    どれだけの自然を壊してきた?

    木々を切り、海を汚し、空気を汚染してきた?

    その結果がこの世界さ。

    人間は住む場所を限定され、外に出る事さえできない。

    広大な自然に触れる事さえ夢物語なんだ。

    人間はさらに生存可能領域を狭めることになる。」

ルードフ:「・・・」

ゼロス:「大事なことを一つ教えてあげるよ。

      :

    魔獣は死なない。」

その言葉にルードフの顔は真っ青に変わった。

そして、震える声で言った。

ルードフ:「なっ、何だと。

     不死だとでも言うのか?

     まっ、まさか、そんなことがあるはずがない。」

ゼロス:「人間には理解できない事が色々と存在するんだ。」

ルードフは、ゼロスの言った『扉は閉じる』と言う言葉で、

全てが終わると思っていた。

しかし、その考えが間違えではないかと思い始めていた。

ルードフ:「扉は閉じると言っていたな。

     それで、終わりではないのか?」

ゼロス:「あの扉はもうすぐ閉じるよ。

    あの扉はね。」

ルードフ:「あの扉?

     他にもあると言うのか?」

ゼロス:「異世界での行動。

    あれは、最後のチャンスだった。

    変な欲を出さずに、友好的に接するべきだったかな。」

ルードフ:「何を言う、攻撃してきたのは奴らだぞ。」

ゼロス:「魔獣は色がみえるんだ。」

ルードフ:「色?」

ゼロス:「そう、魂の色だよ。

    欲に囚われし者は魂が黒く染まるんだよ。

    魔獣もその色に染まる。

    つまり、チャンスを逃したんだ。」

ルードフ:「・・・」

ゼロス:「もう、後戻りはできない。

    魔獣は黒く染まってしまった。

    この星の人類は、戦い続けなければならない。」

ルードフ:「・・・」


突然、ブレスレット端末が鳴り響いた。

音声:「黒い球体が急速に収縮しています。

   同時に、居住ドーム03と居住ドーム04の中間地点に

   巨大なプラズマが出現しました。」

ルードフ:「なんだと!!

     ゼロス、何が起こるんだ?」

ゼロス:「黙って見ていればいい。

    結果は直ぐに解るよ。

    数分というところかな。」

ルードフはブレスレット端末をいじると指示を出した。

ルードフ:「戦闘機をスクランブル発進させろ。

     目標はプラズマの発生源だ。」

音声:「目標に向けて戦闘機を発進します。

   到着まで、10分です。」

ルードフ:「衛星からの映像をこの部屋のモニターに表示。」

直ぐに、モニターに映像が表示された。

ルードフ:「なんだこれは!!」

ルードフは驚いた。

モニターには巨大な球体が表示されていた。

球体はまるで透明な膜におおわれているようであり、

内側には真っ黒い煙のような何かが漂っていた。

その真っ黒い煙のような何かは、みるみるうちに

球体の中に充満していった。

ゼロス:「どうやら、驚いているようだね。

    大きさに驚いているのかい?

    それとも、その異様さかな?」


その時、部屋の扉が開き、数人の兵士が入ってきた。

そして、モリーに対して銃を構えた。

ルードフは落ち着きを取り戻し、考えていた。

全ての元凶が、このゼロスであるとするならば、

ゼロスを消去することが解決策ではないかと。

しかし、その行為の是非にも疑問を持っていた。

ゼロスは、人類の存続といっていた。

そして異世界の行動も最後のチャンスと言っていた。

ルードフ:(チャンスは与えられていた?

     ゼロスの言っている事が、真実であるなら、

     ゼロスは人類の見方なのか?

     ならば、ゼロスから聞き出さなければならない。

     生き残るすべを。)


ゼロスは兵士達を見回すと言った。

ゼロス:「なるほど。

    ひとつ教えてあげよう。

    僕やモリーは、只の起動スイッチさ。

    スイッチが押されてしまった現在では、

    この件に関して物質としての存在価値はないよ。」

ルードフ:「では、どうしたら、この状況をよくできる?」

ゼロス:「そうだね。

    特別に教えてあげるよ。

    それはね、進化することさ。

    物質的にも、精神的にもね。

    そう、黒から白に変わる事。

    そして、魔獣の王を倒す事。」

ルードフ:「魔獣の王?」


音声:「プラズマのエネルギー反応が急速減少。

   プラズマは消滅しました。」

ルードフはモニターに目を移した。

映像に映っている物は、球体ではなく建造物だった。


ルードフ:「あれは何だ?」

ゼロス:「あれは、魔獣の王の城、魔獣の王の住処さ。

    人類はあそこに住む、

    魔獣の王を倒さなければならない。

    今のままでは、勝つことは出来ないだろうね。

    何せ、魔獣は不死だからね。」


その時ルードフは、恐怖していた。

モニターに映る映像には、魔獣の城から飛び立つ無数の

羽の生えた魔獣が映っていたからだ。

魔獣は手に丸い何かを持っていた。

それが何かは確認できなかった。

しかし、それがこの星に住む人間にとって影響を及ぼすことは

間違いないだろう。

それが、生き残りをかけた戦いの始まりであることは

疑いの余地はなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=140266422&s ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ