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続魔獣の壺  作者: 夢之中
17/28

映像

宇宙歴20年、3月4日、第10番アディスの個室


エリーを個室で寝かせた後、6人はアディスの部屋で

侵入時の映像を見ていた。

映像は先行して移動していたアロイドのものだ。


アディス:「ここから侵入したんだ。」

ドルス:「さて、一体なにが映っているやら?」


映像はゆっくりと慎重に前進するアディスだった。

その後ろに、ドルス、ヴィヴィアン、エリーが映っていた。

しばらく全身を続けたとき、それは起こった。

突然3人に捕りつくように魔獣が出現したのだ。


アディス:「止めてくれ。

     一体、何処から現れたんだ?」

ドルス:「5秒戻して、スロー再生。」

ドルスが手際よく指示を出す。


映像が少し戻って、ゆっくりと進む。

ドルス:「ストップ。

    よく見てくれ。

    ここだ。」

ドルスが指差す先には、ぶれてはいるが、上から下へと移動する

物体が映っていた。

アディス:「天井か。」

そう、魔獣は天井から落下して3人に捕りついたのだ。

アディス:「再生開始。」

映像はアディスがそれに気が付き、

魔獣に襲われるところまで進んだ。


この先の映像は衝撃的だった。

突然、エリーを襲っていた魔獣の頭が弾け飛んだ。

そして、ゆっくりと立ち上がると、ヴィヴィアンを襲っていた

魔獣に近づき、その頭に手をあてる。

途端に魔獣の頭が弾けた。

続けてドルスの魔獣、アディスの魔獣と頭に触れるたびに

魔獣の頭が消えていった。


ドルス:「何だこれは!!」

マルス:「魔法だ。」

ヴィヴィアン:「えっ、これが魔法?」

ドルス:「・・・」

マルス:「あぁ、魔法だ。

    あの本を読んで、エリーと一緒に色々と試した。

    いくら試しても、魔法は発動しなかった。

    何が原因なのかも分からなかった。

    この時はやっぱり魔法は失われたか、

    そもそも存在しなのではないかとも思った。

    だけど、この映像を見て確信したよ。

    エリーは魔獣に襲われることで何かを掴んだんだ。」


その時、クーカ船長が興奮した顔で飛び込んできた。

クーカ:「一体なにをやったんだ?!!!」

アディス:「どうしたんですか?」

クーカ:「あの獣、いや魔獣の頭が吹き飛ぶのをみた。」

アディス:「映像をみたんですね。」

クーカ:「あぁ、見ていたとも。

    あれは一体どういうトリックなんだ?」

アディス:「艦長は、超能力や魔法といったものを信じますか?」

クーカ:「何を言っている。

    この科学の時代にそんな非科学的なものを

    信じる者など、、、。」

クーカは、その時『悪魔の証明*1』が頭を過り、

そして次の言葉を飲み込んだ。

クーカ:「まさか、超常現象だとでも言うのか?

    そんなこと誰が信じるんだ!!?」

クーカ艦長の質問に対してドルスが静かな口調で答えた。

ドルス:「艦長。

    実は私も今の今まで、完全に信じてはいませんでした。

    しかし、今回の件で考えが変わりました。

    やはり、魔法は存在するんですよ。」

クーカ:「ドルスくん、まさか君まで、、、。」

ドルス:「艦長は、この現象をどう説明するんですか?」

クーカ:「・・・」

ドルス:「これだけではないですよ。

    モリー博士の作ったエネルギー生成装置。

    あれは結局、世界最高の学者達が説明できなかった。

    しかし、あれは現に実在する。

    我々の知識の外に存在する何かを感じませんか?」

クーカ:「・・・」

続いてヴィヴィアンも意を決したように話始めた。

ヴィヴィアン:「私も半信半疑でした。

       しかし、私達は窮地に立たされています。

       この窮地を乗り越える為には、この事実を

       受け入れるしかないんです。」

クーカ:「ヴィヴィアン、君もなのか。」

アナキン:「艦長、僕も信じる事にしましたよ。」

クーカ:「そうか、君もか。」

アディス:「前にも話しましたが、モリー博士は我々に

     いくつかの品を託しました。

     それらは神秘に満ちた物です。

     確かに信じるに値する物かは分かりません。

     しかし、他の道を見出す事ができないのです。

     あの力が自由に使えるのなら、

     何とかなるかもしれません。」

クーカ:「君達の考えはわかった。

    少し考えさせてくれ。」

そう言うとクーカは艦長室へと戻っていった。


しばらくして、クーカと入れ違いに、

エリーが部屋へと入ってきた。

エリス:「エリー、起きて大丈夫なの?」

エリー:「えぇ、ありがとう。

    もう大丈夫。」

エリー:「アディス。

    残念だけど、あれは自由に使えるわけじゃないわ。」

アディス:「聞いていたのか?」

エリー:「ブレスレット端末の通信機能を切るの忘れたでしょ。

    全部聞こえてたわよ。」

アディス:「そうだったのか。

     起こしてしまったようだな。

     すまない。」

エリー:「問題ないわ。」

アディス:「早速ですまないが、

     なにが起こったのか教えてくれないか?」

エリー:「えぇ、もちろん。

    それを話す為にきたのよ。」


エリーは少し間をおいてから話始めた。

エリー:「魔獣にいきなり襲われたとき、最初のうちは

    魔獣の頭を掴んで耐えていたの。

    でも、魔獣の力の強さに1度は死を覚悟したわ。

    目の前の獣の顔が怖くて目を閉じた時、

    遠くに小さな光が見えたの。」

アディス:「遠くの光?」

エリー:「そう、実際には遠くじゃ無かったかも知れないけれど、

    何故か遠くって感じたのよ。

    その直後、光が爆発するみたいに大きくなって、

    破裂音と共に急に魔獣の力が無くなった。

    目を開いたら魔獣の頭が無かったのよ。

    横をみたら皆も襲われてるじゃない。

    助けなきゃって思って立ち上がってから、

    記憶が無いのよね。」

エリス:「ところで、

    どんな力で魔獣の頭を吹き飛ばしたのかな?

    やっぱり、魔法なの?」

エリー:「残念だけど、分からないわ。」

アディス:「解析してみよう。

     何かわかるかもしれない。

     映像解析開始。」

音声:「全映像中で4回の急速な熱量の上昇を確認しました。

   対象の頭部破壊後、急速に温度低下しています。

   頭部中心に熱源が発生したものと考えられます。」

エリス:「やっぱり。」

アディス:「えっ?

     何がやっぱりなんだ?」

エリスは、人差し指を立て、胸の位置まで上げると、

左右に動かしながら言った。

エリス:「それはですね。

    エリーの中には幻獣イフリートがいるんですよ。」

アディス:「あぁ、俺もそう思う。」

エリス:「いや、そうではなくて。

    じゃあ、順をおって説明しますね。

    まず、物語に出てくる人で幻獣を従えたのは、

    パインがベンヌ。

    アリスがシヴァ。

    シェリルがイフリートです。

    そして、パインが赤い指輪、アリスが青い指輪。

    パインが剣を持ち、アリスが水差を使った*2。

    モリー博士は所縁(ゆかり)の品を託したんですよ。

    つまり、アディスはパイン、私がアリス、

    エリーがシェリルという事になります。

    とすると、

    アディスがベンヌ。

    私が、シヴァ。

    そして、エリーがイフリートになるわけです。」

アディス:「なるほど。

     確かに。

     じゃあ、マルスは?」

エリス:「わかりません。」

アディス:「・・・」

エリー:「んー、よくわからないわ。

    確かにあの後から光を感じる。

    でも、それがイフリートなの?

    それに、声も聞こえる。」

アディス:「声?

     なんと言っているんだ?」

エリー:「ぼそぼそって感じで、よく聞き取れないのよ。」

その時、エリーは何かに驚いた。

エリー:「ちょっとまって、別の何かが急に大きく、、、。」

エリーは目を閉じて意識を集中していった。

他の者は黙ってそれを見守った。


しばらくすると、エリーは目を開き呟いた。

エリー:「なるほど、わかった。」

アディス:「何かわかったのか?」

エリー:「えぇ、巫女の神殿への行き方がね。」

アディス:「どうやって知ったんだ?」

エリー:「教えてくれたのよ。」

アディス:「誰が?」

エリー:「たぶん、光りが。」

アディス:「たぶん?」

エリー:「なんて言ったらいいのかしら。

    閃き?

    何も考えてもいない事、知識に無い事が突然閃いた。

    そんな感じ。

    それで、状況から光が教えてくれたって言ったの。」

アディス:「それで、どうやって神殿に行くんだ?」

     そもそも巫女の神殿はどこにあるんだ?」

エリー:「場所?、さぁ?」

アディス:「さぁって、、、。」

エリー:「分かったのは、行き方はだけ。

    それ以外の事は分からない。」

アディス:「そうか。

     なら、早速そこへ行こう。」

エリー:「それは、まだ無理。

    準備がいるのよ。

    明日まで待ってもらえる?」

アディス:「あぁ、それで何か手伝う事はあるか?」

エリー:「手伝いはいらない。

    ただ、例の箱と魔晶石の粉末が必要よ。」

アディス:「そうか、ならば準備は頼んだ。」

アナキン:「巫女の神殿か。

     なんか、ワクワクすすな。

     楽しみだ。」

エリー:「あっ、言うの忘れてた。

    巫女の神殿に入れるのは、

    私、アディス、マルス、エリスの4人のみ。

    残念だけど他の人はお留守番。」

アナキン:「なぜ?」

エリー:「今は閉じられているため資格が必要みたい。」

アディス:「閉じている?」

エリー:「詳しくはわからないけど、

    主のいない部屋という意味に思えた。

    そして、鍵がかかった部屋。

    行き方は、鍵を開ける方法という訳ね。」

アディス:「なるほど、あの箱が鍵なのか。」

エリー:「たぶん。」

アディス:「それで資格というのは?」

エリー:「血の契約。

    子孫に代々受け継がれる契約の事よ。」

ドルス:「DNA*3ってことなのか?」

エリー:「そこまでは解らないわ。

    でも、その可能性は否定できないわね。」

アディス:「そうか、大体分かった。

     エリー、すまないが準備を急いでくれ。

     準備が出来次第、神殿に向かおう。」

エリー:「そうね。」



*1:悪魔の証明

 証明することが不可能か非常に困難な事象を悪魔に

 例えたものをいう。

 無い事を証明することは基本的に不可能であるため、

 その場合に使用される場合もある。


*2:アリスが水差を使った

 ここで書かれているのは、魔獣の壺-本編-の話ではなく、

 魔獣を完全に封じ込めた最終戦の話。

 本編では、氷属性と契約したレミューズが使用しました。


*3:DNA

 DNA(デオキシリボ核酸)は、核酸の一種。

 地球上の多くの生物において遺伝情報の継承と発現を担う

 高分子生体物質である。

 (wikipediaより抜粋)


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