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続魔獣の壺  作者: 夢之中
12/28

条件指定データ

宇宙歴20年、3月3日、第10番艦アディスの個室


6人はアディスの個室にいた。

条件指定データのロックが解除されたからだった。

その時、突然来訪者が現れた。

6人が一斉に入口を見た。

来訪者は6人が知っている人物だった。

ヴィヴィアンとアナキンが立ち上がり敬礼をする。


ドルス:「お久しぶりです。」

アディス:「ドルス隊長。

     一体どうしてここへ。」

ドルス:「皆さんを護衛するようにと艦長から言われたのです。」

エリー:「護衛?

    監視の間違えじゃなくて?」

ドルスはニコニコと笑いながら答えた。

ドルス:「やっぱり、ばれましたか。

    まあ、普通そう思いますよね。

    しかし、クーカ艦長の名誉のために言っておきますが、

    クーカ艦長は皆さんを疑ってはいません。

    むしろ信用していると言っていいでしょう。

    監視の件はバトラーの指示なのです。」

アディス:「わかりました。

     とりあえず座ってください。」

ドルス、ヴィヴィアン、アナキンの3人が座るのを確認して

アディスは話を始めた。


アディス:「条件指定データの確認。」

音声:「1件の文字データと1件の条件指定データがあります。」

アディス:「文字データを読み上げてくれ。」

音声:「条件指定データを閲覧するには、次の者が必要となる。

   アディス、マルス、エリー、エリス、

   ヴィヴィアン、アナキン、ドルス。」

6人:「!!!」

音声:「あとは、荷物として渡してある4つの箱が必要だ。

   以上です。」

アディス:「何故、ドルス隊長の名前が?

     モリー博士をご存知なのですか?」

その言葉を聞いてドルスは首にかけていたペンダントを外し、

それを見せた。

アディス:「それは、、、。」

彼等は知らないが、それはマイクが持っていたペンダントと

同じ物だった。

ペンダントに驚いたのはモリーの弟子たちだけではなく、

ヴィヴィアンとアナキンも驚いていた。

そして、2人はドルスと同様にそれを見せた。

それらは全て同じペンダントだった。

モリーの弟子たちはそのペンダントに見覚えがあった。

それは4人がモリーと別れる際に見せられたペンダントだった。

モリーは、それを見せながら言った。

モリー:「このペンダントを持つ者は味方だ。

    我々の助けになるだろう。

    隠し事をせずに行動を共にしなさい。」


ペンダント入手の経緯は次のようなものだった。

モリーが警備兵の人選を行っていた時、ドルスは

このペンダントをモリーから受け取った。

そして、弟子の誰かから自分との関係を聞かれたら

見せるように言われた。

ヴィヴィアンとアナキンも同様だった。

但し、このペンダントを見せるときは同じペンダントを

見せられた時だと言われていた。

この時7人はモリーが、この事態を予想していたと知った。

アディス:「わかりました。

     モリー博士は、この7人で問題に立ち向かえと

     言っているのだと思います。

     この7人は仲間です。」


そして4人はモリーから送られた箱を持ち寄り、

それによって、条件指定データのロックが解除された。

ロックが解除されたデータは1件の映像データのみだった。


アディス:「まずは、映像を見てみましょう。

     再生してくれ。」

映像に映し出されたのはモリー博士だった。

場所は、どこかの遺跡だろうか?

見た記憶がなかった。

モリー:「君達がこの映像を見ているということは、

    もう後戻りできないところまで来ているという事だ。

    まずはアディス、エリー、エリス、マルスの生い立ちに

    ついて話をしよう。

    私の父は、大富豪ミラー氏にやとわれた、

    トレジャーハンターだった。

    ミラー氏といっても今のではない、彼の父親だ。

    彼は1冊の本を父に見せた。

    それは魔術の本のようだった。

    ようだったというのは全ての文字が我々の知らない

    古代文字で書かれていたのだ。

    中に魔法陣と思われる図形が描かれていたため、

    魔術の本と推測したようだ。

    ただ、本に挟まれていた紙に描かれたものが

    地図であることは分かった。

    父とミラー氏はその場所を見つける事に力を注いだ。

    そしてついにその場所を特定した。

    地殻変動によって大きく形を変えていたが、

    それは小さな島だった。

    父達は私を連れてその島へと向かった。

    驚くべきことに、そこには人が住んでいた*1。

    一人の老人が我々を歓迎してくれた。

    老人に様々な質問を投げかけた。

    そして、遺跡が存在することと

    それを調査することの承諾も得ることが出来た。

    調査は何年にも及んだ。

    遺跡の中は複雑なうえ多数の仕掛けや罠があったため、

    多くのアロイドが犠牲になっていった。

    ここでの生活の中で、私は私の中にもう一つの自我が

    存在する事を知った。

    彼は自分の事をゼロスと名乗った。

    ゼロスは物知りだった。

    彼は自分の事を他人に話さないという約束の上、

    私の知らない様々な事を教えてくれた。

    魔法や魔法陣についてもその一つだ。

    そして10年の歳月がたった。

    調査は最深部にまで来ていたが、たった1枚の木の扉に

    (さえぎ)られた。

    その扉を開く事ができなかったのだ。

    現在の科学力をもってしても開ける事も破壊することも

    不可能な木の扉。

    それは常識を打ち壊す程の驚きだった。

    ゼロスはそれを魔法の扉だと言っていた。

    そして、あの事故が起こった。

    魔法の扉を壊すために持ち込んだ溶解型掘削機*2が

    爆発したのだ。

    この事故で多くの人命が失われ、父もその一人だった。

    結局扉を開ける事は出来なかった。

    遺族には莫大な慰謝料が支払われた。

    この時ゼロスはこの島を購入することを勧めた。

    この島は、お金で買えない価値があるというのだ。

    私はゼロスの提案に従い、島を購入し、

    ゼロスに導かれるようにあの扉の向こうへと入った。

    扉の先に入った私は驚いた。

    4つの魔法陣の中に4人の赤ん坊が眠っていたのだ。

    ゼロスは彼等のことを最後の希望と言っていた。

    そう、それが君達4人だ。

    君達の素性が一体何なのか、

    それはいずれ分かるだろうとゼロスは言っている。

    

    次に、異次元の扉を開こうとした理由を説明しよう。

    人類がこの先あの惑星で生存できる可能性は

    極めて低いことは誰もが分かっていた。

    人類の英知は様々な解決案を導きだした。

    しかし、そのいずれもその場しのぎであり、

    解決へと至る道はなかった。

    そんな折、移住可能と思われる惑星を発見したのだ。

    そして惑星移住の検討を始めた。

    しかし、現実的な方法は皆無だった。

    このままでは人類は確実に滅びの道を進むだろう。

    そこで民間からもそれを募集した。

    ゼロスはその方法を知っていた。

    しかし、それは大きな賭けでもあった。

    それは異次元への扉を開く事であり、

    同時にエネルギーの生成にも使えた。

    使えると言っても生み出すわけでは無く、

    異次元からエネルギーを取り出すのだ。

    この方法は多くのリスクを伴う。

    それらのリスクなども含めて、ミラー氏に相談した。

    彼はこの話に飛びついた。

    ミラー氏から連絡を受けた、

    連合宇宙局も乗り気だった。

    そして各国首脳の合意の上、連合宇宙局の元で、

    このプロジェクトは開始された。

    遅かれ早かれ、彼等は小さな扉に気付くだろう。

    そこで、大きな扉を開き、彼等と交渉する以外に

    道はなかった。

    そして異次元への大きな扉は開かれた。

    この扉はもう人の力では閉じる事はできない。

    私は今、権限を剥奪され軟禁されているか、

    あるいは既にこの世にいないだろう。

    人類は彼等との精神的な接触に失敗し、

    本質を目覚めさせてしまったのだ。

    彼等との戦いが始まる。

    人類は最悪の選択をしてしまった。

    いずれ君達にも危害が及ぶだろう。

    いや既に危害が及んでいるのかもしれない。

    君達は生き残る方法を模索しなければならない。

    そのための道具は用意した。」

映像のモリーが何やら不思議な呪文のような言葉を唱えると、

テーブルに置かれた木箱の魔法陣が光った。

モリー:「それぞれの箱にはそれぞれが必要な物が入っている。

    決して諦めてはいけない。

    そして、生き残れ。」

ここで、映像は終わった。


7人は黙ったままだった。

彼等には何が正しく何が間違っていたのか分からなかった。

最初に言葉を発したのはマルスだった。

マルス:「あの爺さん、厄介事を押し付けやがって。」

アディス:「あぁ、まったくだ。

     ただ、今我々が置かれている状況が

     最悪だということは良く分かったよ。」

エリー:「そうね。

    生き残れって言うぐらいだものね。」

エリス:「悩んでいても仕方が無いよ。

    やれることをやるしかない。」

正にエリスの言う通りだった。



*1:驚くべきことに、そこには人が住んでいた

 気候変動や環境汚染によって裕福な国の人々は、居住ドームを

 作り、そこに住んでいた。

 しかし、住める場所が皆無であったわけでは無い。


*2:溶解型掘削機

 熱によって土砂や岩石を溶解して掘削する機械。



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