プロローグ
「世が闇に覆われし時、天使醒める。
闇を払いて長き眠りにつく時、汝に伝う。
再び訪れるとき、
光なれば安住の地を与えられん。
闇なれば終焉を与えられん。」
世界は闇に覆われていた。
人々は魔法を捨て去り、科学に邁進した。
魔導士は魔女狩りと称して駆逐された。
貧富の差は極限まで拡大し、富める者は更なる富を得、
貧しき者はわずかな富を失った。
人々は富を得る為にあらゆる方法を駆使した。
それは人類の為ではなく、己の欲の為であった。
乱開発による木々の伐採により、砂漠化が進んだ。
化学物質流出等により海や土地は汚染されていった。
工場の排出する有毒ガスによって空気も汚染され、
外を歩く場合は防毒マスクをしなければならないなど、
人間が住むには過酷な環境になっていった。
裕福な少ない国と貧困にあえぐ多くの国に分かれ
小競り合いが絶えなかった。
裕福な国は、いつか起こるであろう大規模な戦争を避けるため、
有り余る食料を送り届け、延命処置を繰り返した。
人は安住の地を求め、居住ドームを作りそこに住み始めた。
『その星は、死を迎えようとしていた。』
それが解決策にならない事を知りながら、
人類の生存のための解決策を模索していった。
そして、その先を宇宙にも広げた。
国際宇宙局は人類の新たなる移住先を探しあて、
その星への移住を検討した。
恒星間航行に使用されるエネルギーは膨大なものであり、
それを実現することは不可能と考えられていた。
宇宙歴前10年、モリーという学者が現れ、
新たな理論を発表した。
それは、新空間論だった。
彼はエネルギーの供給源を開発したのだ。
この理論は同時に多次元空間への進出の可能性も秘めていた。
国際宇宙局は実験を行い、成功することとなる。
10年後、それを記念して宇宙歴元年とした。
モリー博士を筆頭に人類は2つの案を導き出した。
1つは惑星移住である。
もう1つは、多次元世界への進出であった。
この2つの研究は同時に行われた。
ドクターモリーには4人の弟子がおり、
全員が惑星移住に関わった。
多次元世界進出を率いたのは、モリーであった。
そして20年の歳月をかけて宇宙船の開発に取り組んだ。
100万人搭乗可能な宇宙船を年間5隻のペースで建造し、
10隻を1船団として第一から第十移民船団を移住先の惑星へと
送り込んだのだ。
人選はモリー博士と弟子のマルスを中心に、
富める者、貧しい者を分け隔てなく実施された。
恒星間航行は未知であり、多くの危険が付きまとう為に、
その大半が貧しき者達であったことは言うまでも無い事だった。
ドクターモリーについて
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彼の過去を知る者は少ない。
少数の彼を知る者は、その全てが彼をマッドサイエンティストと
呼んでいた。
彼の研究に魔術まがいの研究が含まれていたからだ。
この科学の時代に魔術を研究するなど信じられない事だった。
多次元空間論を発表する10年前、とある島を購入した。
その島はあまりにも小さく、未開の島でもあった。
彼は島へと移り住んだ。
その島である石を発見し、それを使用したエネルギー供給源を
開発したのだ。
エネルギー抽出理論は公表されていたものの、
誰にも理解することが出来なかった。
それにはファンタジーで登場するような魔法陣が描かれていた
からだった。
しかし、エネルギーを供給できることは事実であり、誰もそれを
否定することはできなかった。
彼には4人の弟子がいた。
アディス、マルス、エリー、エリスの4人だ。
彼らの出生も謎に包まれており、明らかにされていなかった。
モリーは、
「彼等は元々は孤児だった。
それを私が引き取ったのだ。」
そう答えただけだった。
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この話は、魔獣の壺の時代から遥か未来のお話です。
パラレルワールドの無数の分岐の中の1つだと
思っていただければ結構です。




