九話
◆前回までのあらすじ
龍人ジークフリートを回復
ジークフリートから心臓を捧げられ(永遠の忠誠を誓われる)奴隷から解放する
今、シオン・ベルフェゴールはとても困っていた。
ライディーンとジークフリートは意識があったからこそ、あれだけスムーズに話を進められたが、残りは意思疎通が難しく、回復した途端に暴れられる可能性や反抗的な態度をとられる可能性がある。
奴隷紋がある為大事には至らないが、極力穏便に済ませたいと思うのは前世が日本人であるから仕方がない。
「次は誰がいいと思う?」
自分では決めきれずに、後ろに立つライディーンとジークフリートへ相談をすることにした。
「私は包帯の方をお願いしたいです。あの火傷は永遠と痛みが持続しており、痛い痛いと繰り返し苦しむ姿はとても見ていられない」
「シオンの好きにすればいい。何が起きても俺が対応する」
ライディーンの言葉に己の身の心配だけをしていた自分が恥ずかしくなり、ジークフリートの言葉にシオンを第1に優先してくれる気持ちが伝わり嬉しくなる。
「それじゃあライの意見を採用して包帯の人を回復させよう。ジーク、混乱して襲ってきた場合は守ってね」
「もちろんだ。俺のお姫様」
可愛らしい主人の願いにすぐに頷き返すジークフリート。
心臓を捧げると、心臓の持ち主の事だけを想い行動するようになるのだ。
「・・・私もお守り致します」
ライディーンが何とも言えない表情で二人のやり取りを見つめ、ジークフリートだけを頼るシオンの態度が面白くなく口を挟む。
「もちろん、ライもよろしくね。火傷の跡が痛いなら檻から出すよりも檻の中で回復しようかな」
「それは対象者が何人も重なっているので、魔力を取られすぎる可能性があって大変危険です。私が【時空魔法】でこちらに移動させます」
「確かに私の魔力量だと危ないわね。それじゃあライ、お願い」
「かしこまりました」
無詠唱が使えるライディーンは、呪文も唱えずに転移魔法を発動させた。
檻にいたはずの者が、瞬時に指定された場所へと移動する。
「わぁっ凄い!さすが勇者。この魔法って短い距離だけじゃなくて、色んな場所に行けたりするの?」
「行った事がある場所や目視出来る場所であれば、転移可能です。自分だけでなく、触れている物や者も転移出来ます。私の昔の仲間では魔法使いが使えていましたが、距離や対象も制限がありましたね」
シオンからの尊敬の眼差しに機嫌を良くしたライディーンは饒舌になる。
だが、すぐにシオンの話題はジークフリートへと移る。
「便利ね。私も次はそのスキルを取りたいな。ジークも取っちゃう?」
「ああ。便利そうだし欲しいな」
「じゃあ先に取得しちゃうね」
ステータスボードを使用して、ジークフリートが【時空魔法】を使える様にする。
「心臓を捧げられるジークフリートが羨ましい限りです」
「スキル10個だと色々取れるからね」
シオンはスキルを沢山取れる事が羨ましいと勘違いをしたが、ライディーンはスキルではなく心臓を捧げ心からの信頼を得ている二人の関係が羨ましいと思っての発言だった。
魔族を羨ましいと思い、魔族を慕うなど、勇者としてあってはならない気持ちであったが、永年の苦しみから解放され、他の魔族と比べてとてつもなく優しいシオンの態度に惹かれるのは仕方の無い事であった。
「それじゃあ包帯さんの回復を開始します“完全回復”」
「・・・・・・・・・痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」
喉が治り、痛いと呟く声が大きくなる。
高いソプラノボイスから、若い男、もしくは女性である事がうかがえる。
「本当にまだ痛い?声は治ったみたいだけれど、他は治ってないの??」
シオンの声が聞こえたのか、自身の包帯をズラして顔を触って状況を確認している。
チラチラと包帯の巻かれた隙間から見える美しい色白の肌、プラチナブロンドの髪の毛に、森林の様な緑の瞳。
噂に違わず、エルフという生き物は総じて美しい容姿をしている。
「耳が聴こえる。目も見える」
「他は?」
「手も足も耳も動かせる」
耳がピクピク動く姿は何処と無く愛らしい。
「うんうん。もう一度聞くけど、まだ痛い?」
「痛くない。何で??」
痛みも無くなっていた様で良かった。
回復が終わった後もずっと痛いと言っていたので、痛みが取れず今後の業務に支障をきたす様なら部下に設定して痛覚無効のスキルを取らなければと考えていた。
見た目弓を使いそうなエルフには錬金術も覚えて貰いたく、スキルが1つ潰れるのは惜しまれる。
「それは、私が奴隷になった貴方を購入して、火傷を治してあげたからよ」
「治してくれてありがとう、お姉さん。僕の村のユグドラシルが燃えちゃって、同化している僕も痛くて痛くて死にそうに痛くて。僕奴隷になっちゃったの?」
ユグドラシルなんて、この世界にあったんだと思いつつ、毎度の説明をエルフにも行った。
「ええ。でも頑張れば、お金を貯めて自分を買い戻せるから奴隷から解放されるわ。貴方なら5億Gかしら」
「そうなんだ。僕頑張る!僕はエアリアル。お姉さんのお名前は?」
「シオン・ベルフェゴールよ」
「シオンお姉さんっ「おいおい離れろ。ガキの見た目でも500過ぎてりゃ充分大人だ」」
シオンに抱きつき、胸の谷間に顔を埋めるエアリアルを無理矢理はがすジークフリート。
「でも、僕は75歳からの記憶がないし」
「奴隷なのですから、立場を弁えましょう」
エアリアルのレベルや歳から、充分な大人だと判断した二人。
可愛らしい言動や行動も裏があるのではと疑ってしまう。
ユグドラシルと同化するという事は、村の長をやっていた可能性が高い。
そんな者が無邪気な子供であるはずがないと。
「はーい。分かったよお兄さん達」
「素直な子で良かった。エアリアルも私の部下に設定するわね。エアリアルには【偽装S】より【錬金術S】がいい気がする。詳しい説明はお兄さん達から聞いてちょうだい」
ステータスボードを使用して、エアリアルにも【鑑定S】【錬金術S】【従者S】のスキルを取得させる。
エアリアルのステータスは下記となった。
エアリアル
年齢:511
職業:奴隷
状態:
忠誠:シオン・ベルフェゴール
Lv:55680
HP:5568000
MP:27840000
攻撃:5568000
防御:5568000
魔攻:11136000
魔防:11136000
俊敏:5568000
魅力:99
幸運:50
★スキル
【弓術A】【精霊魔法S】【魔力増強】【罠発見】【罠解除】【看破】【状態異常耐性】【魔法攻撃耐性】【忍耐】【魔力制御】【魔力感知】【鑑定S】【錬金術S】【従者S】
★ユニークスキル
【アイテムボックス】【全言語理解】【精霊瞳】
★称号
【精霊に愛されし者】【詐欺師】
これは、ちょっと優秀くらいのステータスで、チート2人に比べると普通なので自分の威厳を保てそうだと安心する。
ただし、称号の【詐欺師】が心配事項である。
「シオン様スキルをありがとうございます。僕お仕事頑張りますね」
両手で握りこぶしをつくり意気込むエアリアルは、誰が見ても可愛らしいエルフである。
「服はサイズが大きいし、メイド服にしようかしら」
「僕は男の子です。ズボンがいいです」
僕と言っていたので予想はしていたが、どうやら本当に男だったようだ。
シオンより背が低く、幼くみえる姿は年上でもメイド服が似合いそうなのに。
「くすくす。冗談よ。はい、これに着替えてらっしゃい。ライ、案内してあげて」
「かしこまりました。こちらについて来なさい」
ライディーンに従い着いていくエアリアル。
扉から姿が消えると、ジークフリートが口を開いた。
「まさか、包帯の下があんな美少年だったとは。奴隷商の奴は悔しがるだろーな」
「そうね。それは皆も同じじゃないかしら?」