五話
今回、身体の欠損や精神崩壊表現等があります。
下手くそな描写で生々しくはないですが、苦手な方はお気を付けください。
また、今回からあらすじを入れようかと思っています。
◆前回までのあらすじ
冒険者ギルドで登録と換金
道具屋で錬金術関連の道具を購入
残金58500Gなのに・・・怪しい骨董品店で禍々しいネックレスと呪われたブレスレットを購入してしまった。
お値段なんと10000Gの所、まけてもらい8500G。
ネーミングから装備するとろくな事が起きないアクセサリーだが、錬金術で変化させるか、白魔術で浄化出来れば激レアアイテムになる可能性が高いので買って損はないはずと思い購入した。
買った後でロベルトやカルロスからの視線が痛い。
でも、シオンの感がこれは良い物だと囁いていたのだ。
そしてその後も寄り道(飲食店・八百屋・武器屋・防具屋)をした為、結局奴隷商店に着いた頃には45000Gまで減ってしまっていた。
こんなはずじゃなかったが、やってしまった事は仕方ない。
***
奴隷商店はサーカスの様なテントの店だった。
中からスーツを来た太ったおじさんが登場。
こういうお店のオーナーは大抵太っている奴が多いのは儲けるからだろうかと思っていると、ロベルトを相手に挨拶を始めた。
「初めまして、私当店のオーナー三代目ジェイ・ソルブラハムと申します」
「さっそくですが、奴隷を見せてもらいたい」
自分の挨拶をするつもりはないので、要件をすぐに述べるロベルト。
そういった客にも慣れているのだろう。
すぐさま対応を切り替えるオーナーは、優秀な商人に見えた。
「かしこまりました。予算はどのくらいでしょうか?」
ここからはシオンが決める為、ロベルトの視線がシオンへ移る。
「3万Gよ。それで何人か購入したいの」
「それですと、当店では最低クラスとなりますがよろしいでしょうか?」
「ええ、構わないわ。どうせ実験に使うだけだから」
実験に使うつもりはないが、ここで正直に話して値を吊り上げられても困る。
異世界転移では当たり前の、問題のある安い奴隷を買って回復させ、優秀な部下を手に入れるのだ。
「それではこちらへ」
実験用の購入も珍しくない為、疑われる事もなくテントの奥へと案内された三人。
「こちらが最低クラスの商品でございます」
目の前には5m程の檻の中に泥や汚物にまみれた奴隷が所狭しと詰め込まれていた。
ほとんどの者は五体満足ではなく、欠損しており、虚ろな目をしている。
うん、予想以上に酷い。
しかし、ここで怯んだ姿を見せたら怪しまれる。
私は、マッドサイエンティスト!成り着るのよ!!
「ここにいる物は処分待ちですから一体5000Gの破格のお値段です。清掃費と奴隷契約費込で総額7000Gとなります。値切りには一切了承しませんのであしからず」
「わかったわ」
檻の中を見て、一人一人鑑定を発動させる。
今のシオンであれば【鑑定S】なので、大半の者のステータスを見ることが出来る。
育てる余裕はないので、レベル10000以上であれば御の字でこだわらない事にした。
「まずはあの隻眼で片手と片足がない龍人。龍人って頑丈なんでしょ。楽しみだわ」
Lv65723の大物で職業欄は当然の様に奴隷。
ステータスは大量の呪いで弱体化され、1000も満たないが状態だ。
スキルに【龍化】があり、皮膚に鱗が見える。
前世で使用していたシオンのアバターより強いのに、何故こんな所にいるのか気になる。
「それと、両手両足がない人間。綺麗な顔をしているのね・・・虹色のお目目が残っているなんて、ふふふ」
Lv72746の更に大物。
同じくステータスは大量の呪いで弱体化されており、状態に不死、称号に【勇者】を持つ人間。
おそらく、何代か前の魔王との戦いに敗れて、次期勇者が誕生しないように不死の呪いをかけられ奴隷になってしまったのだろう。
“ 勇者も魔王もこの世に一人の存在。生きている間に二人といない。死ねばすぐに引継ぐ者が現れる”とされる伝承があるので予想は当たっている可能性が高い。
「全身火傷のミイラもちょうだい。火傷した状態に効く拷問方法って何かしら」
Lv55680のエルフ。
スキルにエルフのみが使える【精霊魔法】があるので確実にエルフだろう。
回復した後は鑑賞したいなんて思っていないんだから。
「あとは・・・翼の折れた目の見えないエンジェルかな。天使って初めて見るから余すこと無く実験したいわね」
Lv45824の天使。
状態に失声とあるので、目も声も無くなれば反応がなくてつまらず売れ残ったのだろう。
せっかくの巨乳ロリっ子天使なのに。
「黒髪の正気を失ってずっと白目の女性もいいわね。あの状態で何をされても気付かないのかしら?」
Lv42752のくノ一。
スキルに【忍術】があるので、魔界で任務中に失敗したのだろう。
見た目、黒髪でスレンダーなお姉さんだ。
思ったより、優秀な配下が手に入りそうな事に笑みを深めるシオン。
しかし、檻に残った者達の姿を見て眉間に皺を寄せる。
魔族は残忍で残酷だから、本当に嫌になるくらいに皆ひどい状態で捨てられてしまう。
ここにいる全員を買えなくてごめんなさい。
私も自分の事で精一杯なの。
綺麗事を言って皆を救う物語のヒーローにはなれそうにもない。
「もういいわ」
「かしこまりました。それでは奴隷契約の為部屋を移動致します」
***
「シオン様、レオンハルト様にお願いすればマシな奴隷も購入出来ますよ?」
「さすがに、あれは使えねぇだろ」
二人は魔族の為に、日本人の感覚からして非道の行いも特に何も思っていない。
これがこの魔界では当然の反応。
「ふふふ。いいのよあの子達で。契約が終わり次第家に帰りましょう。悪いけれど奴隷達は自分で歩けそうにないから、どちらか私の部屋まで運んで欲しいの」
「はぁー。俺が先に運んでおく」
「ありがとう」
別室で待っている間に35000Gを用意すると、すぐに身綺麗にされた奴隷を伴ってジェイ・ソルブラハムがやってきた。
奴隷達は先程の檻より更に狭い2mの檻にすしずめ状態にされている。
契約は簡単に終わった。
魔法陣に立たされた奴隷の心臓の上にシオンの手が置かれ、ジェイ・ブラハムが呪文を唱えると、奴隷の首に鎖の痣が出現する。
命令に違反した場合や主人を裏切る行動をとろうとした場合、首に出現した鎖が首を絞める仕組みになっているそうだ。
全員の契約が終わり、さっさと帰る事にした。