第33話 日本橋ダンジョンの探索指令
遅くなりましたが、続きを投稿します。それではどうぞ。
本部から呼び出しを受けた村正東樹は神妙な顔つきで本部の自衛隊基地に向かっていた。
東樹はあれからこっそりレベル上げに勤しんでいた。
3週間くらい経過したが、なかなか自分のレベルを上げている感覚はとても素晴らしいものだった。
この前潜った虚空のダンジョンがとてつもない難易度だった。
ルミルと潜ったから多少は楽だったが。
1階層からソルスネークが現れて、俺の膝を喰らってきた。
俺は影分身をしていたから無傷だった。
そのまま飛影斬で斬り倒した。
影乱撃を使い蹂躙する。
12階層のアンペルトグリズリーもルミルの風魔法も相まって敵ではなかった。
そして40階層の虚空の記録領域で記録を取った。
記録を取れば、別のダンジョンの記録領域に入ればこのダンジョンに来ることが出来るようだ。
とまあそんなことがあったのだが、今は長官殿の部屋にいる。
「村正一等兵。どうかね迷宮探索の方は?」
「なんのことでしょうか長官殿?」
東樹はポーカーフェイスを崩さずに冷静を装った。
「何……いつもの日課のことじゃないのかね……休みの日は迷宮、もといダンジョンに潜っているのではないだろうか?」
「長官殿……私は一度だけダンジョンに挑戦しましたが、苦労して逃げ帰ってきたのですと話したと思いますが」
長官の眼が鋭い、こちらの全てを見通しているかのような張りのある眼だ。
そして顔から鋭い獰猛な肉食獣の鷹のような雰囲気が無くなり、いつもの笑みに戻った。
「すまんすまん……なに風の噂に聞いたんだよ、村正一等兵がこっそりダンジョンに潜っていると言う噂をだ……」
「そんなの噂ですよただの噂」
俺はちょっと焦って言葉がうわずった。
だが長官殿は見逃してくれたようだ。
「だが、まあ一度でもダンジョンに潜ったことがある隊員が君ならこの指令は受けてもらわなくてはいけないな」
と一呼吸置いた長官殿がまた話し出す。
「日本橋ダンジョンをご存知かな村正一等兵?」
「はい」
「なら話は早い。あのダンジョンは暗黒ダンジョンと違って階段という人工物で剥き出しのダンジョンだ」
暗黒ダンジョンとは黒い渦の入口のダンジョンのことだ。
しかも大抵は敵が強くまさに暗黒のように底が見えないダンジョンだ。
中には1階層でオークやトロールやオーガと言った強敵が現れるダンジョンもある。
そんなのは自衛隊で武器を持っていてもまず勝てない無理だ無謀だ死んでしまう。
「その日本橋のダンジョンの調査と探索そして攻略が今回の君への指令だ」
「なぜ私なのでしょうか?」
長官殿は一瞬考えたような表情をしたが、直ぐにきりっと表情を変えて笑いながら言った。
「何、村正君が一番この隊の中で骨がありそうで伸びが鋭そうな顔と心体に見えたからかね」
「俺一人では危ないのでは? 大抵5、6人くらいのパーティを組んで挑むのが常識ではないのでしょうか?」
東樹はある情報を得ていた。
それはネットの端切れの端切れに書いてあった未確認の情報。
ダンジョンに1人で潜るのと3人で潜るのでは一度に出てくるモンスターの数に違いがあるという情報だ。
たぶん誰かが都心から離れた場所に出現した暗黒ダンジョンに試に入ってみたのだろう。
そして入る人数の検証をしたんだと思う。
そこに書いてあった情報によると1人だと一度にモンスターは普通は1体、たまに2体、多くても3体、運が悪いと4、5体出てくると書いてあった。
そのダンジョンはスライムやホーンラビットとかお化けカエルとかぐらいしか出ないダンジョンだったから命からがら逃げられたとその投稿者は書いてあった。
そして肝心なのはここだ。
3人で潜ったら一度にモンスターが必ず最低3体出てくるようになったと。
しかも多い時だと10体ぐらい出てくるようになった。
俺はその貴重な情報を得た。
だがネットの端っこのほうに書いてあるはずの情報でもすぐに拡散するようだ。
今ではダンジョンwikiとかのページが存在している。
そこでは日夜情報が書かれていると思ったが、意外にも少ない。
ドロップアイテムの名称が書かれているが効果などは不明だとかとか意外にも抜けが多い。
ただロイトとかいう投稿者が異常なまでの更新頻度で情報を更新している。
そういえば同名のダンジョン実況者がいたな。
どうみても本人です本当にありがとうございました。
とまあそんな情報が得られた。
長官殿が一呼吸置いて発言する。
「何、一人のほうがかえって動きやすいと思ったわけだ」
「…………その意見には同意します」
少しばかり返答に時間を置きすぎたか、俺はまだ自衛隊に入って2年目だからな。
しかも不味いな、同意しますとか言ってしまった。
「それではもとい日本橋ダンジョンに今から行ってくれたまえ。そして記録用のカメラを渡しておこう一応、何か珍しいものが見られたら撮ってくれたまえ」
東樹が長官室を出た後、長官は一人余裕の表情で考えていた。
(村正君、君は上手く回避しただろうと考えているようだが、私の眼は誤魔化せないぞ)
(何せ、私もダンジョン踏破者なのだからな)
長官は鳥堺ダンジョンを踏破していた。
その時の踏破特典としてこのスキルを得ていた。
位階眼識。
その効果は眼で見たもののレベルを見抜くもの。
ただどんなもののレベルを見抜くわけではない。
普通はもちろん1だが、ダンジョンに潜っている者の場合ダンジョン挑戦者やダンジョン踏破者などと表示される。
他にも殺人や傷害や暴行などでレベルを上げている者のことまで判断できるようになった。
この前連続通り魔事件の犯人を見たいと言って眼識しに行ったが、その通り魔はレベル6と表示された。
2人殺して、女性を7人斬りつけた凶悪犯であるが、レベルが6にもなっていた。
なお表示は殺人犯と出ていた。
これはかなり使えると確信した長官だった。
そしてレベルが表示されない例外もあった。
それは高度な隠蔽のスキルをもっている人物だ。
試にこの前テレビのカメラに撮られた稲荷仮面とかいうたぶんダンジョン踏破者のレベルを見てみようと思ったが、レベルが表示できませんと表示された。
これは隠蔽のスキルによるものだと思われる。
そして村正東樹君の場合も同じだレベルが表示できませんと出た。
つまるところこれは逆に言うと高レベルの証明にもなる。
隠さないといけないほどのレベルだということだ。
うちの隊員たちの中でも一番高いのは私でレベル38の自分くらいだ。
他には本道大佐が順調にダンジョンに潜ってレベル23になっていたがそれがうちの隊の限界だ。
レベルが上がるにつれて弱いモンスターほど獲得できる経験値というものが少なくなるようで、なかなかレベルが上がりづらくなるようだ。
自分も平の二等兵や一等兵の隊員たちとたまにチームを組んで、潜るがそれでもレベルが上がらない。
特にチームだとさらに獲得できる経験値が分散されるようだ。
5人で潜れば1人が獲得できる経験値は五等分になる。
だが、他の隊員のレベルを上げなければ凶悪犯罪者やダンジョン挑戦者の中から出てくるあれくれ者の対処が出来なくなるということで私の指示で行っている。
さてさて村正君のレベルはいくつなんだろうか。
それを見ぬけるように私のレベルも上げなければいけないな。
●
日本橋ダンジョンに来た東樹。
現場に待機している本道大佐が東樹を見つけると呼びかける。
「長官から話は聞いている。ではこの日本橋ダンジョンを探索して欲しい頼めるか村正!」
「はい、よろしくおねがいします」
「頑張れよ村正。今は朝の9時ぐらいだ。日没ぐらいには戻ってこい」
「はい、頑張ります」
「中では通信機器の使用は一切出来ないが、撮影機器は動作するようだ。珍しいものがあったら撮影してきてくれ」
「わかりました」
「では検討を祈る村正」
「承知しました本道大佐」
そうして東樹は日本橋ダンジョンに潜ることになった。
そこは予想だにしない未来が待ち受けていた。
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