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第239話 妖魔鬼の霊ジュバクとの一戦…そしてその戦いの果てに感じた幸せの光

 カグヤの気分が少しだけ落ち着いたようだ。


 でもなかなかにこの山道は難しい。


 天能咲市にある斧塩山に足を踏み入れている。


 山登りを舐めてはいけない。体がズシンと重くなる。


 いつもほどじゃない俺の気の力でも魔力の運用ですらこの山は重力を2000倍ぐらいに乗縮したかのごとく、重苦しい山だ。


 山なのに火山のように熱い。


 こんなところから妖魔の気配がする。


 カグヤは俺と逸れないように肩に覆いいかぶさっていて俺がおんぶする形になっている。


 霊の奴らの姿なら童も見えるぞよとカグヤが言っている。


 だがカグヤとの間に視覚情報のリンクを張れない。


 どうも霊とのリンクを張るのは俺の苦手要素のようだ。


 ならばスランは今パトロールに行っているし、今はみんなを休ませときたい。


 俺とカグヤの二人でいくしかない。


 山道を抜けた先にあったのはお墓の村のような墓地である。


 この中に何かの嫌な気配がする。

 悪霊の類だ。今まで俺が避けてきたものがこの悪霊の類だ。


 妖魔の姿ここに…!?


 俺は後ろから危険な妖気に当てらえた。

 そして気を失いかけた。


 くっそ…なんだ力が…!? 抜ける……!!


 俺はそのまま倒れてしまった。


「嫌じゃあ!? 嫌じゃあ!? 拓郎眼を開けてくれえええええええ!!! 拓郎!!!!!」


 泣きじゃくるカグヤを俺の眼は覚えていた。

 心は囚われていた狭間のセカイから、俺は暗い牢獄に閉じ込められた。


 そこは暗黒の闇が支配する鬼の霊が拷問官として立っていた。


●●



 ジュバクの鬼が立っている。


「ほおら、こんなもんでいいか!!」


 バシンッ!! 棘のこん棒で殴られる。

 

 俺の体は悲鳴を上げている。


「死ねよ! 死んじまえ!!! 愚か者の狐の面をしたものよ!!」


 こん棒で殴られまくる。


 痛い痛い。痛いわこんなの痛いに決まっている。


 皮膚が赤らめて服はボロボロで稲荷の面も穴が開いた。


 俺の全てをこの拷問官の鬼の霊は壊すつもりだ。


 だが抗えない。俺はジュバクという鬼の霊に呪縛されている。


 このままだと俺の精神と肉体が持たない。


 何とかしないといけないと思っていても、拘束を解くことができない。


 普通の感覚じゃない、死にそうだ。俺の精神力が限界に近いとき、助は来なかった。


 俺は精神を牢屋の中に閉じ込められて破壊されるまで弄ばれた。


 その後休憩を与えられる間もなく血の池地獄に落とされた。


 血の池は底なしで永遠にドロドロした禍々しい血の中で溺れる。


 苦しくて苦しくても死ねない。


 永遠に閉じ込められている。


 そんな感情が出てくる。


 だがその微かなおどろおどろしい感情が巻き付く中で美味しそうな飯を炊いている匂いがする。


 そして俺の精神は吸い取られた。


 ある空間に飛ばされた。


「あれっあの野郎稲荷仮面の拓郎はどこ行きやがったんだ!?」


 ジュバクは自身が呪い殺そうとしていた存在が消えうせたことに腹を立てていた。


 そして拓郎はとある普通の浪花な空間に戻ってきた。


「なんだここは!? まるで江戸時代じゃないか!?」


 そうであるだが違う平安の時すらも集約している着物の美女がそこにいた。


「あんさん、苦しんでいるんやろ? そこに座りなさいんかいな? ねえ拓郎殿下殿」


 カグヤなのか?? だが人間のように見える鬼の角が生えているが。


「ここはなうちの生きていた世界を模した空間でな? 童のせがれがいた世界でもあるんや…わからん幻かもしれん……でもなわたし気づいたんや、拓郎殿下殿がこのまま朽ちていくんやと想うと、夜も寝れへんから、もっと飯炊き女として拓郎はんに仕える時がきたんやとうちは思うんやさかい」



 まさに浪花の花道の花魁のような雰囲気を醸し出している。


 だが普通の飯炊き女の鬼の娘にも見える。


 だがカグヤが俺を助けてくれたんだと思う。



「そこにもううちが作ったごはんがあるから食べて欲しいんや拓郎……」


「ああいただきますだ!」


 それは質素な飯だった。


 玄米のごはんとわかめのみそ汁とメザシに卵焼きに漬物だけだった。


「水は残念ながら井戸水なんや……これでもうちは毎朝水を汲んできてるからなぁ」


 拓郎は涙が出る。なんだこれなんだこれ!? なんで涙が出るんだ!! いつも俺がみんなのためにご飯を作っているのに立場が逆だぞ!?


 そうである拓郎はみんなのために家族のために毎日ご飯を作っている。しんどいときは出来合いのものを買ってくるがたまにお婆ちゃんが作ってくれるがお婆ちゃんはもう年だ。


 だから俺が作っている。


 お爺ちゃんは寝ていてばかりで、いつも将棋を打ってくれるが、殆ど寝ている。


 俺がいないと家族が死んじゃう。


 そしてアグニスやマリンは料理がへたくそだ。


 アルマゲルは結構うまいが、変な料理を作りそうになるから止めている。


 スランもたまに手伝ってくれるがまだまだだな。


 マイカは外食ばかりしているあいつ人間に化けれるからってまあ自分で稼いでるから良いけど。


 デュランは一応手伝ってくれるがへたくそではないが普通だ。


 サクラは料理がとんでもない。ドヘタを超えて不可思議な料理をするので俺が禁止令を出している。


 クロンやトラネは猫の料理は得意。


 イルミナは狩でたまに魚を取ってくるから好きだ。


 ヒカリは剣なので眠っている。


 リーフルも手伝いたいがというが俺が断っている。


 フレイムは炎を使わせたら天下一品だがまああれだ。

 

 リスティは今里に帰りたいからその方法を模索中で別の場所で生活している。


 竜人のリュートはメイドなので掃除担当炊事担当だ。


 ダクセル…コヤミちゃんは何もしない。


 そんなこともあり、なおアオイちゃんは親元に帰ってて分かれて暮らしている。


 それだけ俺は大変なのだ。


 そして今がある。


 カグヤが俺のために料理をしてくれた。


「まあこの空間ではうちの料理が堪能できる唯一の空間といったとこでしょうね」


 そんな不思議な空間でカグヤと一緒にご飯が食べられて俺は世界で一番幸せ者だぜ!!


 そして食べ終わり準備万端。


 鬼の霊ジュバクはその後成仏した。


 俺の勝ちのようだ。


 そして帰宅したらみんなが待っていた。


「ただいまみんな!!」

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