第23話 地獄と化した福岡で少女は狼男さんと出会う。
ちょっと改稿しました(2019/12/02)
さらに改稿しました。(2022/ 08/27)
「お母さん!! お父さん!!」
「逃げなさい アリス!! 遠くに速く!!」
「逃げるんだアリス!!」
お母さんとお父さんを助けたかったが、お父さんに連れられて逃げた。
私じゃなんの役にも立たない。
その後お父さんが魔物の前に立ち塞がった。
その手には包丁が握られている。
「さあアリスここはお父さんに任せて逃げるんだ……さあ速く!!」
「はい、お父さん……」
私は生まれつき特殊な力があった。
それをお母さんとお父さんに見せていたが、それは他の人には見せてはいけないと言われた。
アリスは生まれつき殆どの物をどこからか召喚することが出来た。
生物を除けば大抵の物を。
リンゴが食べたいと念じたらリンゴが手元にあった。
美味しいケーキが食べたいと念じたらケーキが現れた。
だから物騒な物でも呼べたが、アリスはそんなものを呼びたくなかった。
だから逃げていた。
オークと呼ばれる豚の魔人から。
アリスは死ぬほど走った。
逃げるためじゃない生きるためだ。
福岡は地獄と化していた。
自衛隊も来てくれない。
来ても直ぐにやられていく。
アリスは生きるための道具として家にある星魔銃を呼び出した。
使い方とかそんなことを言っている場合じゃない。
アリスは今年で12歳になる。
オークに向かって銃を放つ。
初めて使ったが上手くできた。
反動とかそう言うのも何故か大丈夫だった。
【レベルが上がりました。スキル『無反動』を獲得。】
謎の声が聞こえた。
アリスはそれを受け入れた。
アリスは大型ショッピングモールを目指した。
そこに籠城しようと思った。
だが、そこには地獄の光景があるなんてアリスは知らなかった。
●●●●●
アリスは銃を消して、普通の格好のまま大型ショッピングモールに来た。
そこには既に逃げ込んだ人たちがいた。
「お嬢ちゃんも逃げてきたんか。大丈夫だったか?」
「はい、おじちゃん……お母さんとお父さんは……もう」
何かを察したのか40代ぐらいの男性はアリスを悲しそうな顔で見ていた。
だが直ぐに彼女を元気づけようとして笑顔になる。
「とにかくこっちに来て欲しい。みんなここで暮らしているから」
フロアのロビーの所だろうか。
そこに家族連れや男性だけとか女性とか子供だけとかもいた。
アリスは少しだけほっとした。
これだけの数の30人ほどだががみんな助け合って生きているのだ。
それだけ緊張感のある中みんなストレスなくやっているように見える。
だが、そこを一変させる敵が現れる。
「オークだ!! オークの群れが来たぞ!!」
「オークだと!?」「無理だ逃げよう!」「大丈夫だ俺たちがいる!!」
どうやらみんな戦闘経験があるようだ。
鉈や斧に金属バットを持って、男たちがオークに向けて駆けていく。
最初は優勢だったが、オークが男を殴りつけて、ノックアウトした。
オークキング。
オークの王にして絶対的覇者。
普通の若者ではもちろん戦闘のプロでも普通は勝てない。
オークキングが戦斧を振り下ろして男たちを真空刃で切り刻んだ。
アリスは絶望した。
もうこんな奴に勝てる人類はいないだろう。
お願いだから勝てる人が来て欲しい。
アリスは願った。真剣に、願った。
こんな化け物に勝てる最強の人を超える人物を。
お願い来て!! お願いします神様!!
アリスが願った。
すると魔法陣が浮かび上がる。
そして一人の魔族が召喚された。
狼魔族のロウガが召喚された。
ロウガは状況の整理を既に行っていた。
たしか魔王様の御所を退去して家路に着こうとしていたときである。
召喚された。
ロウガは魔王の副官である。
魔王軍の最強の副官とまで呼ばれていた。
実際戦闘力だけなら無敵で、人間の兵士200人に囲まれた時全て蹴散らしたという逸話まである。
だがこの状況は何だ?
後ろには願いを込めるように手を合わして組んでいる少女がいて、前にはオークキングが鎮座している。
この少女が襲われているようだな。
私には関係ないことなのか……いや違う。
俺は魔王軍の副官だ。
だが、昔から困っている奴は見過ごせなかった。
だからこの少女を助けなければいけないと直感した。
ロウガは少女のためにオーガキングを倒すことを決意する。
だがロウガにとってもオークキングはなかなかの強敵だ。
オークキングが戦斧を揮う。
真空刃が飛ぶ。
ロウガはアリスを抱き寄せて回避する。
「狼男さん……? ありがとう」
「なにっ、ちょっとした昔のことを思い出してね」
ロウガは少女を安全な所に避難させて、一人オークキングの所に行く。
ロウガは爪を戦闘用にする。
そしてオークキングに対して爪を揮う。
斬撃は通った。
確かに相手の核を貫いた。
そのままオークキングは塵と化す。
倒れたオークキングを見て、ロウガはただ当たり前のことをしたと思い、アリスを見る。
そしてアリスの元に行き、膝をつく。
「あなた様は我が主に相応しい。姫とお呼びしたい」
「姫なんてそんな……アリスって名前だけどそれで呼んで」
「それならばアリスお嬢様とお呼びしましょう」
それからアリスとロウガは人知れず旅をすることにした。