第13話 主人公は梅田に急行する、そして苦戦していた少女を助ける
俺達はテレビを頑なに見ているつもりはなかった。
「アグニス!! 今すぐ梅田に急行しよう!!」
「まさかモンスターを退治しに行くのか?」
「そうだよ!! それに黒い穴に跳びこんじゃった人たちも中で死んじゃうかもしれないから」
「うむ……そうだな、でも足はあるのか? ここ刈宮市から大阪の梅田まで確かに近い……が20分から30分はかかるだろ? 電車の場合だとだが」
「親父の車がある。それでかっ飛ばせばいけるはず」
「そうだな車という物に乗ってみたかったと言うのもあるけどそんなことを言っている場合ではないな」
「じゃあ行くぞ!! アグニス!!」
「ああっ拓朗!!」
そうして俺達は車に乗り込む。
爺ちゃんと婆ちゃんに止められたが、俺は制止を振り切って行ってしまった。
爺ちゃん、婆ちゃんごめんでも行かないと……
そうして時速100キロほど出してかっ飛ばす。
幸いにもあまり車は走っていなかった。
みんな怖くて家から出られないのかな。
そうして20分とかからず、俺達は梅田に到着した。
そこは地獄と化していた。
先ほどまではゴブリン系のモンスターしかいなかったが、今ではオークのような強敵が出現している。
他にもグリーンリザードや意外とやっかいなスライム系もうじゃうじゃいる。
とにかく光爆剣を装備した。
70階層でゲットしたドラゴンローブを羽織る。
アグニスも自身の分身である自らの剣を出現させた。
どうやらアグニス自体最強の剣士として実力があるようだ。
そしてゴブリン系のモンスターやオークとかを殲滅していく。
ゴブリンはもはや雑魚だった。
全て一撃で葬ることができた。
オークは多少守りが高いが、それでもこいつも雑魚だった。
グリーンリザードも一撃で切り裂く。
スライムたちは炎魔法で焼き払う。
とりあえず辺り一帯にいるモンスターは殲滅が完了した。
だが発生源の黒い穴があるはずだ。
たぶん黒い穴のダンジョンを攻略しないとモンスターは溢れ出ることをやめないだろう。
そしてアンテナを張り巡らせていたらついに黒い穴を見つけた。
かなり大きくなっていたから早く見つけることができた。
だがアグニスから念話が入る。
『こっちにもあるぞ!! 拓朗!!』
『なんだと!?』
なんと黒い穴は2つあった。
広場の方とビルの路地裏の方の2つだ。
さてどうしようどっちに潜ればいい。
手分けして潜るのもいいが、万が一と言うこともある。
アグニスと別行動は避けるべきだと思った。
なので俺達は考えて考えたという暇はないので、感で路地裏のほうにした。
なんとなく広場の方は大丈夫だとふんだ。
それよりもこんな路地裏のほうが間違って入った人がいるかもしれないと思うと……
だが、可笑しい。
間違って入った場合でもすぐに引き返せばと思ったが、もしかしたら引き返せないのか?
とりあえず俺達は入ることにした。
後車は無限収納空間に入れておいた。
生き残りのモンスターがいないとも言えないからね。
そうして俺達は黒い穴に突入した。
●●●●●●●
某時刻その黒い穴のダンジョンにいる水野蒼威は27階層まで来ていた。
左肩を痛そうに抑えながら、右足を引きずりながら、這うように来た道を引き返していた。
駄目だ……ここまで来たんだけどな、無理だあいつは倒せない……無理だよぉ……
俺の金属バットが効かないなんて……これじゃあ逃げるしかないじゃないか……
蒼威は27階層のブラックトロールに深手の怪我を負った。
ブラックトロールはトロールの上位種だ。
通常のトロールでもやっかいなのに、ブラックトロールはもはや次元が違う。
鈍器しか持ち合わせていない蒼威ではブラックトロール相手では分が悪かった。
そんなブラックトロールからとにかく逃げるしかなかった。
だがブラックトロールはそんな蒼威を逃がそうとしなかった。
トロール種はオーク種と同じく若い女を苗床にする種族だ。
異種間交配が可能なモンスターの一つだ。
よってブラックトロールは蒼威を犯すため、凌辱するため、孕ますため追いかけていた。
蒼威は痛い足を引きずりながら、必死に苦虫を潰したような顔で必死に逃げる。
とにかく逃げるんだと逃げるしかないんだと。
このままだと殺されるよりも屈辱的な目にあうと本能的に察していた。
蒼威はこれでも女の子だ。
辱めを受けるなど死んでも嫌だがもちろん死ぬもの嫌だ。
だが、それでも迫るブラックトロール。
距離にしてもはやすぐそこにいる。
そして失態をした蒼威。
間違えて袋小路に入ってしまった。
だが、もう遅い。
ずるずると壁際に追い詰められる蒼威。
もう駄目だお終いだと絶望する蒼威。
最後に怪物に強姦されて殺されて死ぬなんて……そんな最悪な結末を考えてしまった。
もう助けなんて来るはずない。
蒼威の眼の色は暗い闇色に染まろうとした。
「グフフフフフッ」
ブラックトロールが勝ち誇った顔で蒼威に襲い掛かろうとした。
その時である。
背後から一閃。
ブラックトロールは一撃で斬り殺された。
「へっ?」
「危ないところだったな御嬢さん、俺が来たからには無事にここを脱出させてやるからな」
この作品が面白い! 続きが読みたい! と思う方は
ブックマークや☆☆☆☆☆を★★★★★にして貰えると励みになるのでお願いします。