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第1話 ロリ・スターティング

絶世の美女という言葉がある。


その美しい顔には誰もがふり返り、呆けたまま歩いては路傍で足を滑らせすっころぶ。

一年、二年経っても焼き付いた記憶は薄れることなく残り続け、

思い返すだけで「はふ……」とため息をつく。

世が世なら、その村を、町を、国を傾けてしまうような

そんな比類ない美人。

では、そのような美女が幼いころの事はなんと呼ぶのだろうか?

絶世の美少女というのはあまりにまんま過ぎるのでやめるとして、よく形容されるのは天使だろうか。

その愛らしさは辺りの人々をにっこにこにさせ、その子が笑うだけで幸せになり、その子が泣けば

庇護欲の権化となる。

何をしてもキュートなのでこれはもう人ではなく神の使いなのでは?と勘違いしてしまって

お菓子やらお駄賃やらをじゃんじゃか貢いじゃって人々のお財布を傾けてしまいそうな

そんな美少女。


「うっそなにこれ可愛すぎなんだけど! この子さっきまでいなかったよねシロ?」

「おそらくさっき起動した装置の影響でしょう。 

なんの装置かと思っていましたが、召喚系統のものだったんですね姉さん。

……それにしても可愛いです」

部屋が薄暗くてはっきりとは分からないが壁はひび割れが目立ち、机だったような物、椅子だったような物が散乱しており、どれくらい前から放置されていたか分からない。

中央には大人が何人も余裕で入るぐらい大きなカプセル状のガラスっぽい容器があって、同じようにボロボロだ。

その容器の中に自分はいて、

絶世とはいかないまでもめちゃくちゃに可愛い二人の女性が

かがみ込むようにこちらを見ている。


しかしおかしい……。

彼女らは明らかに”オレ”に向かって可愛いと言っている。

30代も半ばまでいっている男性に使う表現ではない。

中にはおっさんをかわいいかわいいともてはやしてくれる子もいるだろうけど、そんなレアケースを追う場面じゃない。お店以外では普通ないのだ。

それだけでなく彼女たちの体格もおかしい。170半ばはある自分をかがみ込むように見るなんて

でかい、でかすぎる。

この世界の女性は皆2mを超える大女なのだろうか?

それともこれが俗に言うオーク?

こんなかわいいオークなら大歓迎だし新たな知見を得られそうだけど、

もう少しノーマルの方が…って、

色々と困惑している中、ふと割れたガラスに映ってる自分の顔を見た。



天使がいた。



10歳ほどの見かけで背は130㎝ほど。

大きくくりっとした瞳はエメラルドグリーンで宝石のように綺麗、

肌は白く触れば驚くぐらいすべすべでもちもち。自分のとは大違いな触り心地で思わず笑みがでる。

白銀を思わせ髪はまさしく絹で、膝丈まであっても一本も絡んでる様子はない。

まさに美少女の中の美少女。大人にならずともいろいろ傾けてしまいそうな神の使いが目の前にいる。

いるのだが……少なくともこれは30代のおっさんの姿ではない!!

つまり……


「オレが美少女になってるじゃねーかああああああああああああ!!!!!!!」


とても可愛らしい絶叫があたりに響き渡った

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