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第九話
「いくらあまり人がいないからといって、本を読んでいる人の邪魔はしないでください」
灰電が息を潜めて言った。
その隣にローズ・グレイが眉を顰めて本を読んでいるのが見えた。
あたしを助けてくれたとかとんでもない勘違いだったようね。
どう考えてもローズのためだ。
少し恥ずかしいわね。
「分かりました。静かにします」
「あたしも静かにすることにする」
「そうしてください」
ありすは紙に文字を書いてきた。
『私が説得いたしましょうか』
『あんたに出来るとは思えない。なんで?』
『なんか出来そうな気がするんですよ』
はあ?あのお父様はそんな簡単には説得されないわよ。
『この人は出来るぞ。俺が保証する』
え、誰?と思ったら、ある意味完璧な作り笑いが見えた。




