彼女は自己救済者
描写は多分少なめです。
設定もそこまで詳しく書いておりませんので、自分の想像でいろいろと補って下さい。
こんな注意文でごめんなさい…m(_ _;)m
何故こんな事になってしまったのだろうか…。
「くふふふ…ねぇ、見て」
菜月はこの場を示すように両腕を広げた。
「これ、ぜぇーんぶ、私がやったんだよ? すごいでしょ? ねぇお兄ちゃん、私、すごいでしょ!?」
キャハハハハ! 菜月は狂喜の高笑いをした。
彼女の身体は血まみれなのに…床は赤の海だというのに…。
「菜月…警察に行こう」
「? けいさつ? なんで?」
菜月はとぼけた表情ではなく、意味がわからないわ、という顔で俺の顔を凝視した。
「お前はいけない事をしたんだぞ…それくらいわかってるだろ? なぁ菜月!」
「いけない事? 私、いけない事してないよ、むしろ、いい事をしたんだよ…?」
今度は悲しみの感情を露にし出した。表情がクシャクシャになる。
「毎日毎日毎日毎日毎日……何もしてないのに殴られて蹴られて、怒ってばかりだったこいつらが、1番いけない事したんだよ! お兄ちゃんだって、いつもいつもつらい思いしてたじゃん!」
地団駄踏んで、怒りを露にする。納得がいかなそうだ。
「だから私が、お兄ちゃんの為に、私達の為にやったんだよ! ホントだったらこいつらが警察に捕まって死刑になるべきなのよ!!」
菜月は足元にある物体を、怒りに任せて蹴りあげた。
それは俺の顔ギリギリに飛んできて、背後の壁にグチャリとぶつかった。
床にベチョッと落ちる音がし、俺は恐ろしくも振り向いてしまう。
「な……菜月…これ……」
「そんなに私達が嫌だったなら……産まなきゃ良かったじゃない………」
母さんの首。
「私達だってねぇ! あんたらの元に望んで産まれたワケじゃないのよ!!」
手に持っていた斧で、さらにもう1つの物体を叩き割った。真っ二つに割れた、父さんの首。
「お兄ちゃん…お兄ちゃんは、本当はこいつらが好きだったの?」
「っ? 何をいきなり」
「だって!」
俺が言い切る前に、菜月はそれを拒絶するように声をあげた。
「私の事、警察に送り込もうとしてる…」
「父さんと母さんの事は、お前と同じくらい大嫌いさ。でも菜月、お前はやる事を間違えてい」
「間違えてなんかない!!!」
「菜月聞けよ」
「間違えてなんかないんだから! 私はお兄ちゃんを地獄から救ったんだから! 私は救世主なんだからぁ!!」
現実を受け入れないように、わぁわぁと騒ぐ菜月。俺に何も言わせてはくれない。
俺の言葉が、正しいと思っているからだろう。
「お兄ちゃん……私の事、嫌いなの…?」
「嫌いなわけないじゃないか…」
「じゃあ私を見捨てないでよ! 私は英雄なんだよ! お兄ちゃんの英雄なんだよぉ!?」
喜び、泣き、怒り、そして感情を溢れさせる。
自分を正当化させないといけない、という危険信号が、菜月の中で鳴り響いているのだろう。
「…菜月……」
「嫌だぁ…」
「聞けって菜月」
「嫌だぁ」
「なつ」
「来ないでぇ!!」
「!?」
歩み寄ろうとしたら、菜月は斧を俺に向かって投げつけた。母さんの首と同じように、俺の顔の側を通った。
頬に痛みが来る。刃がかすったのだろう。
「お兄ちゃんなんか大嫌い…大嫌い……うわあああああ――――――――――!!!!!」
叫びや悲鳴に近い、菜月の泣き声。
警察が来るまで、菜月はずっと泣き続けた。
菜月は、助けを求めていた。助けてくれる人は誰でも良かったんだ…。
助けが来ない、そう思い込んだ菜月は、自分が自分を助ける人になろうとした。
こんな事になる前に……俺が兄として、菜月を守ってあげれたら………菜月は過ちを犯さなかったのに…。
【Fin.】
詳しい設定は読者様の想像におまかせします。
一応テーマは『虐待に繋がる悲劇』みたいなものを……表現出来てないですね、ごめんなさい……(泣)。
ここまでお読み下さりありがとうございましたm(_ _)m