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能力確認

 やがて増援が姿を現さなくなった頃になって、みんなで会議をする事になった。

 数時間経過していて、夜になりかかっている。

 谷泉達や他の動けそうな奴等は森に行って薪を拾い集め、広場の真ん中で焚き火を焚いた。

 化け物……魔物避けって事か?


「とりあえず状況を確認だ!」


 興奮が醒めきらないとばかりに楽しげな谷泉が率先して見渡して言い放つ。


「何がどうしてこうなったか知らねえが俺達はどうやら異世界に来て、不思議な力に目覚めたようだ! それは誰の目にも明らかだと思うぜ!」

「まあ……」

「そうだな」


 男子のゲームに慣れ親しんだ連中が同意する様に頷く。

 俺も同感だ。茂信だってそうだ。

 女子の方も一部は理解しているっぽい。


「だけど本当にそんな状況……ありえるのか?」

「実際にこうして事が起こってんだからしょうがねえだろ! 現実逃避してねえで受け入れろって!」

「受け入れられる訳ないじゃない! 早く家に帰してよ!」


 女子の……代表がヒステリックに叫んでいる。

 谷泉はその反応を見て、凄くつまらないものを見る目になった。

 とはいえ谷泉達よりも女子の反応の方が普通だ。

 気持ちはわからなくもない。

 俺もこっちよりだと思う。


「帰り方なんて知らねえよ。まずは現状を受け入れろって。受け居られないなら黙って現実逃避でもしてろよ!」

「なんですって! 貴方、この状況を楽しんで――」


 という所で女子は仲間の女子や男子に遮られて抑えられる。


「で? 谷泉くん。君はどうやって火の玉を出しているんだい?」


 学級委員と教師が揃って谷泉に尋ねる。


「そんなの簡単だぜ」

「銀行で金を降ろすみたいに能力の所を視界で意識してクリック、ターゲットを設定して発動……でしょ?」


 俺の返答にズバリ! とばかりに谷泉が拍手する。

 いや、なんだよその反応。

 不良だけあって喧嘩は出来ても空気は読めないらしい。

 周りを見ろ。

 お前に不快感を持っている奴の方が多いぞ。


「正解! どうやらクールタイムがあるみてえだけど、力の応用の幅は大きいみたいだぜ」


 拳に炎を宿らせて谷泉は見せつける。

 後半、それでホーンラットを殴っていたもんな。


「インスピレーションで強弱や応用が出来る。それで出てきた生き物……魔物を倒せば経験値ゲットだぜ! もうLvも2になったしな」


 ふむ……本当に倒せば経験値が入る仕組みなのか。

 完全にゲームだな。


「後はポイントってわからない物が入ったけど、これは後で確認すりゃあ良いだろ」


 言われるままに教師と学級委員が能力を発動させて目を回している。


「す、凄い……どういう原理で作動しているんだ?」

「数式とか化学式……一体どんな要素なんだ? 超能力、脳が何かに干渉して作動を――」

「あー……そんなのは関係なく、能力、もしくは魔法が使えるようになったと思えば良いと思うぜ!」


 クラスでも出来の悪い不良が一日でトップに君臨したとばかりに谷泉は説明をして行く。

 なにもかも魔法の二文字で片付けるつもりらしい。


「まあ……そうなんだろうな」

「ああ、俺も使えるなら使ってみるか」


 なんて感じに男子は割と順応して能力の確認をしている。

 女子も戸惑いながらもやらねばならない事なのだと理解して調べ始めた。


「ま、この石板に書かれているのがお前等の能力って事なんだろうがな。まずは何が出来るか調べてみようぜ!」


 谷泉の先導の下、上から順に出来る能力に関して確認して行く事になった。

 えーっと……谷泉は炎使いという能力名だ。

 で、他にも何か安直に氷の使い手とかがいる。

 それで出席番号順と言う事で茂信の順番になった。


「茂信、お前の能力は鍛冶って書いてあるぞ。何が出来るんだ?」

「え? うーん……俺の能力は……うん。ポイントが足りないと出ている」

「あ? ポイントか? 受け渡し出来る……みてえだな。ほら、受け取れ!」

「……わかった。やってみる」


 茂信が焚き火の前に立ち、薪を持って火に向ける。

 薪がふわりと浮かびあがり、炎に包まれて何やら形作り始める。

 結構、幻想的な光景だ。

 作成には少しの時間が掛るみたいで五分程、薪と炎が浮かんで輪を描いていた。

 やがて薪に纏わりついていた炎は飛び散って……一本の棒に変化した。

 こん棒か?


「使ってみた感覚だと、ハンマーか何かで叩けばいいと思うけど、火と薪じゃこれが限界だった」

「こん棒じゃねえか! お? 持つとステータスに反映される! 便利な能力してるじゃねえか」


 谷泉が楽しげに答える。


「素材とかを持っていけば作れるって奴だな」

「そうみたいだね」

「じゃあ明日にでも作ってもらうとするかぁ!」


 そこでぐう……と言う音が響く。


「お腹空いたなぁ……」

「我慢しろって、明日には森の中で食える物を探しに行く。つーか、料理の能力者がいたよな!」


 谷泉が料理という能力を得た生徒に視線を向ける。

 まさかこのネズミを食べるとか言わないよな?


「最悪、このネズミを能力を使って料理しろ!」


 どうやらそのまさからしい。

 まあ最悪の場合、そうなる可能性もあるんだろうけど。


「うえ……」


 さすがにその反応は谷泉も同意なのか、嫌そうな顔をしてる。

 魔物を食える物にする能力って便利だよなぁ。


「どうせポイントか魔力を使うみてぇだし、今晩は持ち寄った弁当で飢えを凌いでおけって!」


 みんな飢えを凌ぐために多少は節約気味に弁当を各々食べた。

 ここで強さを見せた谷泉が一人占めとか宣言するかと思ったが、さすがにその辺りの節度はあるっぽい。


「さて、次だ」


 とまあ、そんな感じでドンドンクラスメートが各々の能力を説明していた。

 で、俺の番になる。


「羽橋幸成、お前の能力は……転移か。どんな能力なんだ? まさか自由に何処でも行けるとかじゃねえよな」

「確認してる最中だよ。なんで詰問気味なんだよ」


 俺は能力を作動させて転移を指定する。

 カーソルが浮かび上がった。


「転移って、日本に帰れるの!?」


 ヒステリックに叫んでいた女子が身を乗りだして俺に詰め寄る。


「さあ……試さないとわからないよ」


 俺は自身の能力が何なのかを理解していない。

 試しに使用しようとしたら詠唱とばかりにカーソルが砂時計に変わって落ち始めたのだ。

 キャンセルは任意に出来る。


「帰して! 私を日本に帰しなさい!」


 ブンブンと俺の襟首を掴んで締めあげてくるヒステリック女子!

 面倒なのに絡まれたな……。


「落ちついて!」


 周りの連中がどうにかして落ちつく様に指示すると、ヒステリック女子は俺を締め上げるのを止める。

 く……散々な目にあった。


「発動まで結構時間が掛るみたいなんだ」

「ま、やってみろよ」

「うん」


 俺は薪を指名して移動先をイメージする。

 イメージ先の一覧が出る訳じゃないが薄らと何処へ飛ばすのか見える様な気がした。

 想像力で左右されるのかな?

 とりあえず、薪を指定した別の場所に飛ぶように指示。

 ……砂時計が落ち始める。


「……まだかよ」

「まだ始まったばかりでしょ。茂信みたいに時間が掛るんだよ」

「戦闘では使えなさそうだな」


 く……完全に谷泉が俺をバカにする目を向けてくる。

 やがて砂時計が落ち切り、薪が一瞬光を放って指定した場所に瞬間移動した。


「おー地味だな」


 うるさい!

 内心愚痴るがここは我慢だ。


「じゃあその転移の力で日本に帰れるか実験してみろよ。帰りたい奴がいるみたいだし」

「谷泉! そんな人体実験を誰かにしようって言うのか!?」

「あ? 大塚が帰りたいみたいだから良いじゃねえか」


 大塚ってのはヒステリック女の名字だ。

 良くは無いだろ。

 もしも失敗したらどう責任を取るんだよ。


「こんな所に一分一秒でもいるくらいなら何だってやってみるわよ!」


 ええぇ……賛同しちゃうのかよ。

 大塚はどんだけ混乱しているんだ。

 帰る事以外頭に無いって感じだ。


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[一言] 大塚ぁ...
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