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タイムホール

「萩沢、浮川、飛山、姫野……羽橋を回収するとして八人乗りだと残り三枠!」

「私達もご一緒させてください!」


 今までずーっと黙って付いて来た騎士達がここぞとばかりに立候補する。

 本当に黙り込んでいたわね。


「待て待て、時間旅行ってかなり危険な行為だろ。みんな遠足気分で参加したがっているけどわかってるのか?」

「そりゃあ……」

「何が起こるのかわからない所があるわよね」

「羽橋の親友である坂枝はどう思ってんだよ?」

「行きたいのは山々だが……俺はいざって時に役に立てる能力じゃないし、もっと適正な人がいると思う」

「……能力だけが全てじゃねえよな」

「そうだな……となるとさ」


 クラスメイトのみんながそれぞれ見合わせながら向かう視線の先、そこには茂信くん、依藤くんと黒本さんだった。


「飛山さんの話を聞いて、最初から信じて付いて行った奴にその資格があるんじゃねえか?」

「……だな。異議は無い。ある奴はワガママだろ」

「みんな……それで良いのか?」


 茂信くんの言葉に、その場にいたクラスメイト達は揃って頷く。


「わたし達の分までがんばって欲しいわ」


 クラスメイトの女子達も茂信くん達を送りだそうとしていたわ。


「つーか、あの研究所に入った時みたいに、浮川ちゃんがいざって時に招集すれば俺達もどうにか行けるかもしれねえぜ」

「さすがに時間の壁まで越えられるのか?」

「わかんね。けど、そう思った方が見送れるってもんだろ?」

「そうだな」


 良い雰囲気な様子でみんなして結束して行く。

 すごく……良いと思う。

 森の中でクラスメイト同士で疑い合い、憎み合っていた時よりも遥かに、私達はわかりあっている……そんな気がした。


「決定だな。後は武器化出来るユニークウェポンモンスターを預ける。頼んだぞ」


 ミケさんを代表に、みんなのユニークウェポンモンスター達が敬礼をする。

 危険な任務だって分かっているみたい。


「じゃあ座席の改良も済んだし、さっそく出発しようぜ!」

「ああ!」

「よーし! 後少しで羽橋を迎えに行ける!」

「みんなで帰れる様にがんばろう!」

「「「おー!」」」

「ニャー」

「ガウー!」


 私達……私、聡美さん、実、萩沢くん、茂信くん、依藤くん、黒本さん。

 更に武器化したミケさんやボスさん等のユニークウェポンモンスターを持ってタイムマシンに乗り込む。


「聡美ちゃんが能力を発動させないと時間移動はできねーみたいだ。頼むぜ」

「はい!」


 聡美さんが共鳴を私達に施す。

 するとタイムマシンが反応してふわりと浮かびあがった。


「がんばってくれたまえ! 君達が羽橋君を連れ帰る事を切に願っている!」


 学級委員が敬礼するとクラスメイト、国の騎士達が揃って続く。

 私達は手を振った。


「行ってきます」

「タイムマシン、発進だ!」


 レバーを萩沢くんが上げると、バチバチと次元の壁が揺らぎ、タイムマシンが前進し……壁を突き破って私達は……移動を始める。


「おー……あの漫画みたいなタイムホールだ」


 依藤くんが若干興奮しながら辺りを見渡していた。

 これも萩沢くんの演出だったら恐ろしい技術ね。

 なんて思いながら時間移動で私達は過去へと向かった。

 この空間の先に、恐るべき物が潜んでいる事を考えもせずに……。





 タイムホール内を移動して行くタイムマシン。

 私は運転席のタイムカウンターに目を向ける。

 高速で数字が移動して行くのが見えた。

 ふと、タイムホールの壁の方に視線を向けると、異世界の景色が映し出されている事に気付く。

 逆再生して行くかのように人々が後ろ向きに歩き、壊れた物が元の形に戻る光景。

 私達は過去へ向かっているのね。


「俺達はドンドン非日常に進み、受け入れてしまっているな」


 流れているタイムホールの景色を眺めながら、ポツリと茂信くんが呟いた。


「そうね。それこそ漫画の世界に入り込んでしまった様な気分ね」


 日本での日常がとても遠い。

 こんな事が現実だなんてと何度も思う。

 思えば森に召喚された時からが始まりだった。


 あの時から私達のサバイバルは続いている。

 生活は楽になったし、異世界の人達とも仲良くなったり、みんな……様々な問題に取り組んで来た。

 後少し……後少しで私達は失った物を全て取り戻せる。


「長い様で短い日々に感じるぜ」

「確かに……凄く濃密な一年……いや、改変された日本での日常も合わせるとそれ以上か」

「後少しで幸成君とクマ子ちゃん、ルシアちゃんと会えるね」

「はい。やっと、今の私は幸成君に会えます」

「ええ……」


 そして、幸成くんと再会してからが私達の本当の始まりなのかもしれない。

 このタイムマシンは先取りした約束みたいな物なんだもの。

 しっかりとその未来を守らないといけない。

 そんな気がするわ。


 時空耐性を持っている幸成くんを連れ戻せば、後は守らなくても良いのかもしれない。

 だけど、守らなきゃいけないと私は思う。

 萩沢くんやその子孫が作ってくれた想い、期待に応えないといけない。


 何より、幸成くんさえくれば日本と異世界の国交だって出来るかもしれない。

 認識改変の謎だって解けることだって、ありえるわ。

 まあ余計な騒ぎになるからと、やらない可能性の方が高いと思うけど。

 ともかく、やっと私達は幸成くんの元へ行ける。


 ――そう思っていた直後!

 タイムホール内の空間が黒く染まっていく。


「え? 何?」

「な、なんだ!?」

「キャ!?」


 ガタガタとタイムマシンが揺れ、私達は咄嗟に周囲の物を掴んでバランスを取った。

 バチバチと空間が歪んでいるし、スパークしているのが見て取れる。


「は、萩沢、大丈夫なのか!?」

「装置を見る限り問題はねぇはずだけどよ……ん? なんだアレ?」


 私達の進むべき道の先に……まるで行く手を遮るかのように何かがそびえ立っている物体が見えた。

 アレは……。


 見覚えのある四角形の建築物、異世界に召喚される前にはほぼ毎日見ていた場所であり、クラスメイトのみんなが顔を合わせていた場所。

 いろんな噂が絶えない音楽室や理科室、思い思いに部活に励む生徒達が居たグラウンドや体育館。

 机の立ち並ぶ教室だって遠くから少しくらい見える。


「学校……?」


 そう、私達の前には浮島の上にそびえ立つ学校が立ちはだかっていたのだ。


「なんでこんな所に学校が俺達の邪魔をするみたいに建ってんだ?」


 その通りね。

 どうして学校がタイムホールの中に?


「萩沢、迂回出来ないのか?」

「無理だ。アレが邪魔してタイムホールを通過出来ない」

「……」


 黒本さんが学校の校舎を見つめる。


「幸成くんの元までまだ先があるのよね?」

「ああ、まだまだ先は長いぜ」

「じゃあこの学校を突っ切らないとダメって事か」


 そうなんでしょうね。

 でも……あの建物、凄く嫌な感じがする。

 一見普通の学校にしか見えないのに、どうしてかしら……。


「というか……凄く不吉な気配がするな」

「ゲーム風で言うならここを突破しなきゃいけないって感じだろうな」

「反吐が出る話だぜ。ぶっちゃけ俺はもう学校で勉強なんてしたくねーし」

「萩沢くん、後でミケさんやみんなと一緒に勉強会をしましょうね」

「うげ!?」


 なんて悪態を吐きつつ私達は浮島に近付いて乗り込んだ。

 ここを通過しないといけないのよね。

 なんとも嫌な話だわ。

 幸成くんも過去を変える時にこんな建物を突破して行ったのかしら?


「おかしいわね。浮川さんが能力で作り出した学校は既に無いはずよね」

「は、はい。そのはずなんですけど……」

「そもそもこんなタイムホール内に存在するという事が変なのよ。もしかしたらあの研究所内で見つかった手記に書かれていたのがコレの事かも知れないわね」


 ゲート内に何かがいた、だったわね。

 それがこの学校の事だったのかもしれない。

 異世界の人達からすればこの建物は変な物に見えるでしょうし。

 ……でもその場合、何かがいたではなくて、何ががあった、じゃないかしら?


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