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ハンドルネーム

「ガウー」


 俺の部屋に三人を転移させた。

 クマ子が窓から外を眺めて目をこれでもかと輝かせて遠くを見る。


「おお……! 変わった場所じゃな。ここが日本人の世界かの」


 ルシアもクマ子と一緒に若干興奮気味に呟く。

 で、ラムレスさんなんだけど。

 なんかキョロキョロと俺や部屋を見ている。

 どうしたんだ?


「どう? ラムレスさん」

「あの……私は何故ここに?」

「……は?」

「ハネバシサマ、ここは……ハネバシサマの家でしたね」


 ……えーっと。

 ルシアが事態に気付いて振り返る。


「騎士ラムレスよ。自分の事は覚えている限りで良いから答えて見るのじゃ」

「……?」

「そなたの名前は?」

「ハンドルネームラムレスですよ」


 何その強引な説明。

 ハンドルネームってなんだよ。

 これって……。


「経歴は?」

「なんでそこまで話さないと行けないのです? そもそも……なんで私はこんなコスプレをしているんでしょうか?」


 とブツブツと首を傾げながら呟いている。

 俺達に対して若干疑い気味だ。

 とはいえ、知らない間柄ではないみたいだな。

 カタコトだけど俺の名前を覚えているみたいだし。


「俺達の事、覚えてる?」

「何を言っているんですか? よく遊ぶ友人じゃないですか。今日はオフ会でハネバシサマと一緒に話をするって事だったでしょう」


 オフ会?

 まさかラムレスさんからそんな現代的な言葉を聞く事になろうとは。


「ユキナリよ。どうやら騎士ラムレスに認識改変が掛ってしまっているようじゃ」


 なんか凄いなぁと感心してしまう。

 今更だけど、ここまで露骨に人の心が改変されるって不思議でしょうがないな。


「お持ち帰りと言うんじゃったか。日本人が連れて行ってしまった事があったのじゃが、こんな感じで補正が掛るんじゃな」


 これは戸籍とかもありそうだ。

 さすがに日本人ではないだろうが、日本に帰化した外国人、みたいな扱いになっているかもしれない。


「えーっとラムレスさん、異世界に行ってみたいですか?」

「え? 小説の話ですか? ええ、行ってみたいですね。夢がありますよ」


 そういう願望は持ったままの様だ。

 ……俺は無言でラムレスさんに向かって転移を指定する。


「な、なんですかコレ!?」

「俺は不思議な能力で貴方を異世界に導けます。はいかいいえを選んでください」

「す、すごい! どうやっているのかわかりませんけど、そんな不思議な事があるんでしたら、もちろん、はい! ですよ」


 と、半分冗談交じりにラムレスさんが了承してくれたので俺はラムレスさんを異世界に帰して上げた。

 視覚転移でラムレスさんを確認すると頭をブンブン振った後、首を傾げている。

 後で話をしてあげよう。

 あなた、日本に転移させたら日本人になっちゃいましたよって。


「で? 王を連れて行くのかの?」

「こんな補正が掛って行ったら大変な事になるでしょ。やめておこう」

「ふむ……しょうがないの」


 王様がどんなポジションになるか気になるけど、下手に大会社の社長に補正されちゃったら戻って来れないかもしれない。

 いろんな意味で手が込んでるな。


 ……なんでルシアやクマ子って影響受けないんだろ?

 俺の所為か?

 それともちゃんとした手続きをして元の世界に戻ったクラスメイトとかは異世界の事を覚えているのかな?

 お持ち帰りとやらも、関係が深いと覚えているとか、そういう感じなのかもしれない。


「服装はちゃんと選んでくれよ」

「わかっておる」


 若干ブカブカだけどルシアには俺のTシャツとズボン。

 クマ子には若干ワイルドだけどYシャツにジーパンを着用させる。

 本当にこれで大丈夫か不安だが、まあいいか。


「クマ子、絶対にクマになっちゃダメだぞ」

「ガウー」

「そのガウも出来るだけ避けてくれ」

「ガウ!」

「それじゃあ出発じゃ!」


 という訳で買い出しの為に俺達は出かけたのだった。



「ふんふんふーん。お? ユキナリよ。あれはなんじゃ?」


 ルシアが車を指差して尋ねてくる。

 日本の物に興味深々って感じだ。


「もしかしてアレは日本人達が教えてくれた車かのう? 再現される事もあったが本物は始めてみたのじゃ」

「教える前に知ってるなら大半はルシアにとって知っている物なんじゃないか?」

「そうでもないぞ? 聞いてはいるし再現された物もあるが、本物を知らんからのう。それだけで十分面白いのじゃ」


 そういうものか。

 というか、車は再現された事があるのな。


「ガウ」


 クマ子もキョロキョロと辺りをずっと見渡して好奇心を爆発させている。

 とは言え、あんまり派手に動きまわると迷子になる事を理解しているのか、何かあると俺に目を向けているけどさ。

 途中で寄った公園に興味を抱くかと思ったが、二人ともあんまり面白くなさそうだ。

 まあ異世界側にも似た様な物があるからなぁ。


「しかし随分と舗装されておるな。聞いていたが実際に見ると驚きじゃな」

「まあな」

「とは言っても異世界側も似た様な部分も多いしのう。コンクリートじゃったか、アレは再現されて遺跡にも使われておるし」

「そうなるとさっきも言ったが真新しい物はないんじゃ?」

「いや、電化製品とやらは異世界の品と随分と違うから楽しめる。植物も色々と違うし、空気が随分と異なる……真に面白いのう」


 そんなもんかねぇ。

 なんて思いながら、おっと調度良いな。


「ルシア、クマ子。調度良いから服を買って行こう」


 クマ子はワイルド感が出ていて地味に似合うけどルシアの服装はブカブカで、ちょっと気になる。

 なので服の量販店に通りかかったので立ち寄る。

 合うサイズは絶対にあるだろう。

 ルシアは外見子供だから子供用の服を買えば良いかな?

 金はポイント相転移で変化させてっと。


「わかったのじゃ。なんか色々と違いがあって面白いのう」


 なんて言いながらルシアとクマ子と一緒に店内に入り、似合いそうな服を見繕う。

 クマ子、お前はどっちかと言うと体系は良い方なんだからアニマルのパーカーを選ぶな。

 なんで変なキャラプリントのTシャツを持ってくる。


「ガウー」


 虎柄とか……クマ子はセンスがあんまり良くないみたいだ。

 実さんがいたら楽しい服選びで、まともな服を買ってきそう。

 というか、裁縫のクラスメイトが日本風の服を作っていたじゃないか。


「こんな感じでどうかの?」


 と、ルシアがワンピースを選んで試着して見せる。

 うん、普通に似合っている。

 外国の女の子って感じだ。

 こっちはそれなりにセンスがあるな。


「良いんじゃないか? じゃあカウンターに行って買うか。買ったら店員さんに頼んで、その場で着替えさせてもらおう」

「わかったのじゃ。しかし着替え直すのが面倒じゃのう」


 それはしょうがない。

 クマ子は猫耳のカチューシャを頭に付けている。

 クマなのに猫とはこれいかに……。

 それは萩沢に見せてやるサービスだろ。

 そんなものどこから見つけてきた。


「ガウー」


 挙句クマ子が豹柄の下着という際どい物を持ってくる。

 他にボクサーパンツ。

 うん、確かにお前はボクサーであるが、今着るものじゃないだろ?

 もう少し考えてくれ。

 それ以前にこの店、売っている物が少し変じゃないか?


「クマ子は……チョッキ辺りでも買うか」


 ルシアにだけ買ってやるのは不公平だしな。

 今の格好がそれなりに似合っているから合わせて羽織るチョッキで良いだろう。


「ガウ!」


 そんな訳で服をカウンターに持っていて購入。

 店員に頼んで着替えを許可してもらい、ルシアとクマ子は着替えた。

 これで外を歩いても変に思われる事は無いだろう。


「じゃあまずはスーパーだ」


 そんな訳で近場のスーパーに移動した。

 俺がスパイスボーイと噂されている、いつものスーパーだけどさ。


「食料量販店じゃな。知っておるぞ」

「市場みたいな物だし……似た物を再現はされているか」

「まあの……じゃが随分と陳列が丁寧じゃな。いろんな種類の品が一堂に揃っておる。あっちではもっと漠然としておるじゃろ?」

「確かにな」


 大規模市場って感じだから八百屋は八百屋のコーナーで店主がいる感じだ。

 どっちかと言うと農協の市場みたいなのがただ大きくなっただけみたいな感じだけど、こっちのスーパーは品ぞろえがかなり豊富だな。

 というか……普段は一人で買い出しに出ているから新鮮な感覚を覚える。

 クマ子とルシアと一緒に買い物か。


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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公が日本に帰った時に異世界人は主人公を忘れる改変が起きる。では、なぜ日本人が異世界に転移した時に異世界人は日本の記憶が残るのだろうか?。認識の改変は異世界人と日本人で同じだが、記憶は違う…
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