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能力転移

「ええ、もちろんです。ハネバシ様は我が国に様々な恩恵を授けて下さっています。とても危険な能力に目覚めたとしても、寛大に容認して頂く様に、私達騎士を初め、国の者達は揃って力になると思います。今やハネバシ様は国に無くてはならない存在なのです」

「そもそも危険な能力に目覚めた事を白状してるんだし、ある程度は寛大に見てくれるだろ。言ってみたら良いんじゃないか?」


 依藤の言葉に頷く。

 茂信には、後でで良いか。

 最悪、俺の事は依藤の口で伝えてもらおう。

 俺は依藤達の前で頷き、深呼吸をしてからラムレスさんの方に視線を向けて答える。


「……新しく拡張された能力名は能力転移。国が最も禁忌として恐れている強奪に類ずる能力じゃないか? と思った」


 みんな、そこで言葉を失う。

 そう、森を抜けた後の村でみんなが歓迎された時に警戒されていた危険な能力。

 それに該当する能力では無いのだろうか?


「それは……」


 ラムレスさんも言葉を失っている。

 そう、もしもこの能力が俺の予想通りの物だと、相手の能力を転移して奪う事が出来る能力と言う事になってしまう。


「恐れてないで試せば良いんじゃないか?」

「しかし……」

「羽橋」


 依藤がそこで俺をまっすぐに見て答える。


「俺を実験に使って見てくれ」

「依藤?」


 とても真面目な表情で依藤は言い放つ。


「羽橋、俺はお前が良い奴だって知ってるし、お前になら能力を奪われて逃げられたって後悔は無い。お前になら裏切られたって、本望だ。元々めぐるさんが助けてくれた命……仲が良かったお前に託せるなら怖くない」


 依藤……。


「裏切る気は無い。仮に奪えたとしても、絶対に返す」


 俺は依藤の目を見返して答える。


「ああ、だからやってみろ」

「……わかった」


 俺は能力を確認して、能力転移の項目をチェックする。

 かなり多く魔力を消費するようだ。

 予測範囲が大きいな。

 で、依藤を指定する。

 すると、もう一つアイコンが出現する。

 試しに自分に施そうとしたが無理だった。


「なんかもう一つ項目が出た。誰か……もう一人、やれる相手を」


 するとラムレスさんが一歩踏み出す。


「私もハネバシ様を信じております。ハネバシ様と出会って、異世界の文化、ゲームを教えて頂き、とても楽しい時を過ごさせて頂いております。どうか実験に使ってください。これが私の信頼の証として」


 ……うん。

 俺は大きく頷き、ラムレスさんを指定する。


「お? 承認アイコンが出たぞ?」


 という所でラムレスさんはホッと胸をなで下ろしていた。


「おそらく、問題ないかと思います。むしろこれは……ハネバシ様の評価が更に上がる可能性が出て参りましたよ」


 そう言ってからラムレスさんと依藤が承認したようだ。


「これって……まさか!?」


 依藤が驚く様に目を見開き、俺の両手を掴んで何度も持ちあげる。


「凄いぞ! まさに能力転移! 強奪とか盗み系じゃねえ!」

「ええ! まさしくそうです!」

「ど、どういう事?」

「今、俺の視界にはメインの剣術の能力と、拡張能力が出てる。転移させられない物は消灯してるけどな。で、明るい拡張能力を指定したら、相手……ラムレスさんが指定した拡張能力と転移させるかって項目が出てるんだよ」

「交換が可能な様ですが、どちらにしても相手に何を送るか、本人の了承が必要なので、問題は無いと思います。もっと調べるべきでしょうが、これは国でも抱え込まねばならない、希少な能力付与系の能力だと思われます!」


 ラムレスさんが物凄く興奮してるのがわかる。


「それって凄いの?」

「ええ、この世界の者でも、この能力が目覚めたら貴族……いえ、王族にだって縁談が組める希少能力ですよ!」

「そんなに凄いのか!?」


 依藤達が揃って声を上げる。


「ガウ!?」


 クマ子もだ。

 そんなにも凄い能力に俺が……?


「もちろん、どれほどの事が出来るのか調べないといけませんが、間違いありません。承認が必要で、能力の交換が可能ならば間違いないと思います。どうか一度国に戻って報告させていただけないでしょうか?」

「え? 良いけど……大丈夫だよね?」


 美味い話に見せかけて殺すとかしないよね?

 国に戻った俺を含めて、クラスメイトが殺されてはたまったもんじゃない。

 警戒している俺にラムレスさんが何度も首を振る。


「信頼して頂くのが難しい案件かと思います。ですが……どうか信頼して頂きたい」


 既に言葉にしてしまっている。

 ここでラムレスさんを口封じしてもいずれ何処からか漏れる可能性は大いにあるだろうし……出来れば穏便に済ませたい。


「もしも罠だったら……依藤や茂信、クラスのみんなに被害が行かない様にしてください。それだけが望みです」

「ですから信じてください!」


 あ、ラムレスさんが激しく困った表情で地団駄を踏みそうになった。


「じゃあ、このままじゃ始まらない……最悪、羽橋は日本に逃げろ。そうすればみんな一時は忘れる。街や村には入れなくなるかもしれないが音声転移で呼んでくれ。その時はみんなで国を出よう。クマ子は覚えてるからちゃんと伝えてくれよ」

「ガウ!」


 という事で俺達はそのままの足で城下町へ戻った。

 幸い、結界は俺を弾く事はなく、城下町に入る事が出来た。

 そうして俺はそのまま城へと案内された。

 入念なチェックの後、何度も能力転移の実験をさせられた。

 で、玉座の間に案内される。


「幸成!」


 茂信も話を聞いて先回りしていたのか、俺を出迎えた。


「大丈夫なのか!? なんか凄い能力に目覚めたそうだが」

「大丈夫らしいんだが……罠に掛けられないか怖い所だ」

「そうか……」


 俺は茂信にどんな能力が出たのかを説明する。

 しばらくして何か興奮気味に王様がゲーム機を持ちながらやって来る。

 まだやってたんですか!


「能力交換の能力が目覚めただと!?」

「は、はい! ですが俺は悪さをしません! 罰すると言うのなら俺だけで、どうかみんなの命ばかりは――」


 と、みんなの命を穏便にと懇願しようとしたら王様も首を振る。


「ハネバシ殿に死なれたら新しいゲームが手に入らないではないか!」


 王様もかよ!

 まるで俺がゲームを持って来る娯楽商人みたいな扱いだ。


「それで? ハネバシ殿の拡張された能力はどのような物なのだ?」


 王様が大臣に尋ねる。


「えー……調査の結果、現在判明しているのは、異世界人同士の場合メインの能力の交換、贈与は不可能でした。ですが一部の拡張能力は交換が可能との事」


 これは茂信と依藤で説明すると簡単かもしれない。

 茂信の能力は鍛冶、依藤の能力は剣術。

 このメインの能力を交換、贈与は不可能。

 だけど拡張能力の一部は交換可能らしい。


 ただし、絶対条件として交換である、という事だ。

 どちらか一方だけに能力を渡す事は出来ない。

 能力Aと能力Bを交換する事しか出来ないみたいだ。


 他にも拡張能力でメインの能力に大きく関わらない物、覚えても良い能力だな。

 例えば茂信の場合、強化や付与など、鍛冶に関わる能力は依藤に渡せない。

 固有能力を渡す事が出来ない感じだ。

 調査が必要だけど、同系列の能力者なら渡せるかもしれないって話だ。


 というのは置いておいて、例えば採掘補正の拡張能力は依藤に渡す事が可能になるそうだ。

 この場合、依藤は採掘補正の能力の影響で岩石が動きまわっている様な魔物に対して戦いやすくなるらしい。

 元々茂信が得意な魔物だけどな。

 岩だから採掘補正が効くという副次効果がある。

 ただ、容量的な要素があって受け取れない事もあるっぽい。


 もしかすると能力にはコスト的な要素があるのかもしれない。

 そう考えると小野が使っていた強奪がどれだけ凄い能力なのかわかる。

 アイツはあの場にいたほとんどの能力を自由に使っていたからな。


 で、俺の場合は覚える能力の殆どが転移と付いている。

 つまり、転移の中に組み込まれた拡張能力故に能力転移が出来なかったという事らしい。

 容量も無いそうで……使用は出来るけどあくまで周りの人達に掛けるしか出来ない。


「そしてこの世界の者同士の場合、なんとメインの能力を交換する事が出来ると判明いたしました!」


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